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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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331.転売屋は顔料を探す

「すごいよ!ここは宝の山だね!」


興奮気味のフェルさんが魔物の素材を見つめている。


まさかこんなにテンション上がると思わなかったんだが。


「喜んでいいのか?」


「もちろんだよ!ここには王都でも手に入らないような素材が山ほどある!牙竜の牙に洞窟タコの墨、マンドラゴラの葉っぱ。これだけあればどれだけの顔料が作れるだろう。」


「俺達からしたら、ごくありふれたものだけどなぁ。」


「もちろん加工しないと使えないけど、王都に来るまでに随分と値段を吹っ掛けられるからかなりの値段になっちゃうんだよね。」


「輸送コストに中間マージンそして加工料。なるほどなぁ。」


「シロウ今どうやって儲けようか考えたでしょ。」


「そりゃな、金になるなら参入してもいいが・・・。」


チラッとフェルさんを見ると大きく首を横に振る。


だよな、知ってた。


「今から参入しようにも目をつけられて潰されるのがオチだ。こうやって少しずつ直接買ってくれる人を探すしかないだろう。」


「そしてこの僕が第一号だ。」


「まさかこんなに良い色が出るとはな。勧めといてなんだが驚いたよ。」


横を見ると鮮やかな色の中心に、鮮やかな赤色が光り輝いていた。


そう、カニバフラワーの絵だ。


三日月亭で酒を飲んだ後ルティエの工房に向かった俺達は、そこでガーネットの顔料を見せた。


その途端人が変わったように顔料に反応し、少量掴んだと思ったらどこから取り出したのか皿の上に乗せ水で溶き始めた。


そして紙に塗り叫ぶ。


『これこそ僕の探していた赤だ!まさかこんな所にあるなんて!いくらでも出す、これを僕に売ってくれ!』


ってな感じで購入者第一号に名乗り出てくれたわけなんだけど。


まさかこんなことになるとは。


翌朝、開店前の店にやって来たと思ったら倉庫を見せてほしいと言い出した。


なんでもマスターにそそのかされたらしく、あそこなら顔料の素材が山ほどあるぞと言われたらしい。


俺達からしてみればただの素材でも、画家から見れば宝の山。


見る角度を変えるだけで物の価値は変わる。


不思議なものだ。


「フェル様、お探しのものがございました。」


「本当かい!」


「こちらでよろしいですか?」


「間違いない!水龍の涙だ!すごい、本当にあった!」


まるで子供のようにはしゃいでいる。


見た目にはただのガラス玉。


占いでも出来そうな大きさだ。


「そんなに珍しいのか?」


「ダンジョンの奥深く、そのまた奥の地底湖にしか存在しない古代龍の一種からしか取れない素材だそうです。」


「ふ~ん。」


よくわからんが凄い物なんだろう。


で、なんでそんなものがここにあるかというと、前回の大騒ぎの時に龍の巣から出てきた奴から剥ぎ取ったらしい。


らしいというのは乱戦だったのと、お祭り騒ぎだったので冒険者も深く考えずに剥ぎ取っていたからだ。


あの時は龍種のバーゲンセールだったからなぁ。


なにもしないでも向こうからやってきてくれた。


さすがに自分から行こうとは思わない場所だけに、一番の盛り上がりを見せた気がする。


鱗一枚で三日は生活できるんだ、そりゃあ大騒ぎにもなるよな。


おかげで冒険者はウハウハ、俺も買取でウハウハ。


あ、金を持った冒険者が普段手の届かなかった装備を買いに来たので二重でウハウハだったか。


いやー特需とはまさにあのことを言うんだろう。


おかげで在庫がほぼなくなった。


「赤青緑、これで目的のものは手に入った。本当にありがとう、オリンピアに言われた時は行くかどうか不安だったけど、来て良かった。本当に良かった。」


「そんなに喜んで貰えると嬉しくなるな。それに使い道のなかった素材に新しい使い道が出来た。直接売ることはできなくても、業者に売ることは出来るだろう。いい金になりそうだ。」


「それでは全部で金貨1枚と銀貨40枚です。」


「王都の三分の一で買えるって知ったら皆ここに飛んでくるかもね。」


「それはそれでめんどくさそうだから、適当にごまかしておいてくれ。」


「いいのかい?せっかくの商売がなくなってしまうよ?」


「これ以上変人が集まったらロクな事になりそうにない。早く出せだのうるさく言われるのはごめんだ。」


「確かにそれはあるかもね。」


偏屈な画家達に居座られても困る。


素材だけ流すだけでも十分な収入が見込めそうだ、ハーシェさんが喜んで運んでくれるだろう。


「それじゃあ代金を・・・って言いたいんだけど実は持ち合わせがないんだよ。」


「は?」


ちょっとまて、ここまで来て金がないとはどういうことだ?


悪びれもせずニコニコとしながら言うので怒ることもできず、対応に困る。


えぇっと・・・?


「さっきのが支払いとか言わないよな?」


「売ればそれ以上の価値はあると思うけど、さすがにそれは言わないよ。お金を用立ててくるからちょっと待って貰えるかい?」


「知り合いでも居るのか?」


「まぁね。会うのは初めてだけど大丈夫だと思う。」


会うのが初めてって・・・。


さすがに逃げたりはしないと思うが、念のためついていったほうがいいかもなぁ。


うれしそうにスキップをしながらフェルさんが向かったのは、貴族の館ではなく一軒の店。


大通りに面したきれいな店だった。


まぁうちの二号店だけど。


「まさか、マリーさんの知り合いなのか?」


「そうか、今はマリアンナって名前だったね。」


「その言い方、そうか正体を知ってるんだな。」


「まぁね。でも僕が知っているのは男のときだから、今の姿になってからは初めてだよ。前も二・三度絵を描かせて貰ったぐらいだし。」


「さすがにそれでオリンピア様が正体を教えることはないだろう。」


そんなこと話していると、こちらに気づいたマリーさんが驚いた顔をして店から飛び出してきた。


「フェル!」


「やぁロバート、いやマリアンナさんと呼ぶべきだね。」


「どうやら知り合いらしいな。」


「偏屈な君がこんなところに来るなんて、明日は雨が降るのかな。」


「相変わらず失礼な事を言うねぇ君は。でもそうなるかもね、この僕が絵を他人に上げたんだから。」


「え、君個人の絵を?」


「そうさ、そうしただけの事をしてくれたんだ。この、彼がね。」


そういいながらフェルさんが俺のほうを指差す。


ふむ、中々の知り合いであることは間違いないようだ。


マリーさんが半分ロバートに戻っているなんて中々に珍しい。


「シロウ様が?」


「この前のガーネットを利用した顔料をいたく気に入ってくれたんだ。話の流れで他にも顔料になる素材を買ってもらった。」


「なるほど、そういうことでしたか。」


「ここは宝の宝庫だよ。」


「君がそこまで興奮するなんてよっぽどの事だね、でも良かったじゃないか。探し物は見つかったんだろ?」


「あぁ、長年捜し求めてきた水龍の涙。これであの日仕上げることの出来なかった君の絵が完成するよ。」


「墓前にでも飾ってくれればいいよ。今はもう不要なものだから。」


「昔の君は死に、今の君は本当の意味で生きている。願いが叶って良かったね。」


「ありがとうフェル。」


硬い握手を交わす二人。


あ~そろそろ帰っていいだろうか。


いや、金をもらうまで駄目か。


「で、ここにはそれを言いに?」


「いや、実は彼に払うお金がなくてね。ちょっと貸して貰えないかと。」


「まったく、君ときたら。」


「ちゃんとオリンピアを通じて返すからさ、頼むよ。」


「私は今やただの平民、昔のように大きなお金は持っていないんだよ?」


「でもあるだろ?」


「・・・ある。」


「さすがロバ・・・いや、マリー!」


「はぁ、君にたかられた女の子達の気持ちが今になってわかったよ。」


どうやらこの画家は他の場所でもいろいろとたかって生きてきたらしい。


なるほど、だから悪びれもせずにあんな笑顔を見せることが出来たのか。


つまりクズということだな。


よくわかった。


「シロウ様、いくらお支払いすればいいですか?」


「金貨1枚と銀貨40枚。」


「・・・少し待っていただいてもかまいませんか?」


「ないよなぁ普通こんな大金。」


「昔は何とかなりましたけど、さすがに今は。」


「え、そうなのかい?王家の支援が入っているとオリンピアから聞いていたからてっきりあると思っていたんだけど。」


「支援があってもそんなにもらえる訳ないよ。」


つまり金はないと。


さすがにマリーさんからふんだくるわけにも行かないしなぁ。


画材の販売先を聞いているとはいえ、それでも支払いには足りない。


はてさてどうしたもんか。


「よし、それじゃあ一つ頼まれてくれるか?」


「僕に出来ることなら喜んで。」


「マリーさん、今度王都に流す化粧品あったよな。サンプルはもう届いているだろ?」


「はい。ルティエ様からもいただいています。」


「それじゃあ、それの宣伝ポスターを描いてくれ。それと、向こうでの宣伝も任せる。貴族の家にも出入りすることはあるだろうから、それとなく宣伝してくれればいい。」


「しないかもしれないよ?」


「していないかどうかはオリンピア様を通じて調べればわかることだ。」


どうやって売ろうか悩んでいたが、せっかくなので宣伝用のポスターを作って貰おう。


見た目に華やかな化粧品の宣伝ポスター。


それを街の目立つところに飾れば必ず売れる。


「ふむ・・・。」


「出来るよな?」


「そうだね、この画材に報いるためにも喜んでやらせて貰うよ。マリー、手伝ってくれるね。」


「え、私が?」


「せっかく美人に生まれ変わったんだ、その美貌を生かさない手はないよ。さぁ、それを身に着けて、ボトルは・・・そうだな胸元でそうそう、そんな感じ。」


フェルさんに引っ張られるようにして入り口に連れて行かれ、化粧品のボトルを持っていすに座らされるマリーさん。


こりゃ今日は休業だな。


「いいね、最高だよ。この絵を見たら国王陛下もお喜びになる。」


「勝手に売るなよ?」


「見せるぐらいはいいだろ?」


「それぐらいはな。それじゃあ後は任せた、マリーさん後はよろしく。」


「え、シロウ様待って!」


「ほらマリー動かないで、すぐにスケッチしちゃうから。着色は一度画材を取りに行ってそれからでも大丈夫。あぁ、こんなに素敵な絵をこんなに素敵な材料で描けるなんて。本当にきてよかった!」


そりゃなによりだ。


助けを求めるマリーさんの視線を無視して店へと戻る。


さて、教えてもらった素材をどうやって売ろうか考えないとな。

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