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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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319.転売屋は花火を楽しむ

「やっとみつけたぁぁぁ!」


「おかえり、何があったんだ?」


「ファイヤーフラワーよ、まったく面倒な場所に咲くんだから。」


「ファイヤーフラワーと言えば植物の魔物ですね、たしか燃える実を投げて来るとか。」


「燃えるだけならいいわよ、燃えた後はじけるんだから。どかーんって!」


「それは爆弾じゃないのか?」


「実の中にたくさんの種があるから、それが爆発するの。」


なんとまぁ物騒な魔物がいるもんだ。


よく見るとエリザの防具が所々焦げている。


頬も煤のようなもので黒く汚れていた。


「とりあえずシャワー浴びて来い、すごい汚れだぞ。」


「ありがと。」


頬をぬぐってやると嬉しそうにウインクをして二階に上がっていった。


残されたのは茶色い麻袋。


「おーい、袋忘れてるぞ。」


「あ!その中には種が入ってるから気をつけて!」


「いや、気をつけてって。」


今の話の流れだと中に入っているのはさっきの魔物の種。


爆発するやつだ。


ってかそんな危険物を店に持ち込むなよ。


そろっと袋を持ち上げてとりあえず裏庭へ。


これでよしっと。


「シロウ様、種だけでは爆発しませんから大丈夫ですよ。」


「そうなのか?」


「それと、種一つ一つの火力は小さいので火をつけても軽くはじける程度です。」


「ふむ、強くはじけるのか?」


「いえ、弱く長くはじけます。」


「パチパチパチって感じです。」


思っていたのと随分違うな。


集まると火力が上がるのか?


それなら余計にまとめておくのは危険だと思うんだが。


そんなことを考えていると、エリザが上から戻ってきた。


「はぁ、さっぱりした。」


「おかえり、さっきのは庭に置いてるぞ。」


「ありがとう。あ~疲れた。」


「誰かの依頼なのか?」


「まぁね。夜にファイヤーフラワーの種に火をつけるとパチパチはじけて綺麗なのよ。何かのお祝いに使うんじゃないかしら。」


「大きな街では実を直接打ち上げて大きな音を楽しむそうです。薬品に漬け込むと爆発する時の色が違うんですよ。」


なるほど、花火か。


で、種の方は線香花火。


生きてる花火ってのは中々に面白いなぁ。


取りに行く方は戦いながら花火を避ける大変さはあるけどな。


「面白いじゃないか、余ってないのか?」


「全部渡すわけじゃないから残ったらギルドにわたすけど・・・。え、いるの?」


「実はいらないが種が欲しい。そうだなとりあえず1000個ぐらいあればいいか。」


「え、1000個!?」


「実一つにどのぐらい入ってるんだ?」


「えっと・・・50ぐらい?」


「じゃあ20個だな。」


「一体何をされるんですか?」


「それは見てのお楽しみってね。ミラ、とりあえず取引所に依頼を出してくれ。集まった量を見ながら冒険者ギルドに依頼する。」


「わかりました、行ってまいります。」


すぐさま立ち上がり財布を見ってミラが店を出る。


これが流行れば夏の仕込みが楽しくなるな。


でもなぁ、火気厳禁だから扱いが難しいか。


長期保管で湿気っても嫌だし時期が重要だな。


「またシロウが悪い顔してる。」


「お金の匂いがするんですね。」


「そうね、シロウがこんな顔する時はそれしかないわ。」


何やら後ろで二人が言っているが気にしないでおこう。


俺は裏庭に行き、先ほどの革袋に手を突っ込んだ。


『ファイヤーフラワーの種子。生きる爆弾ともよばれる魔物の種子。種子とは言うが、ここから生えてくることは無く分化して増える。種子は小さく燃え、実は爆発するように燃える。最近の平均取引価格は銅貨5枚、最安値銅貨3枚、最高値銅貨7枚。最終取引日は9日前と記録されています。』


ふむ、一本単価は安いが数が集まると高い。


なるほど、良い金儲けが出来そうだ。


しばらくしてミラが取引所から戻って来た。


暑い中出てもらったので氷の入った水を用意してやる。


せめてもの御礼だ。


「ご苦労さん。」


「ただいま戻りました。とりあえず500程は手配できそうですが、残りはギルドに頼む必要がありますね。とりあえず明日には集まると思います。」


「なら今日はエリザのやつを使うか。」


「え、私の?」


「残ったやつは俺が買い取る。」


「別に構わないけど・・・。」


どのぐらい残るかはわからないがちょっとでもあればお試しぐらいはできるだろう。


「今日の夕食当番は誰だった?」


「あ、私です!」


「アネットか、悪いが今日は外食にさせてもらうぞ。もちろん俺のおごりだ。」


「え、やった!」


「エリザ、ギルドに行った帰りにイライザさんの店を予約しといてくれ。早く戻って来いよ。」


「は~い、じゃあ次は私が行ってくるね。」


ミラと交代するようにエリザが店を出る。


さて、成功するかは分からないが俺の予想では大丈夫・・・なはずだ。


「何をなさるんですか?」


「イライザさんの店もそろそろテコ入れが必要だと思ってな。」


「テコ入れ、ですか。」


「まぁその辺は本人に聞いてみるが、上手くいけば俺がより儲かる。」


「それは良い事です。専売の許可は取りますか?」


「いや、そこまではしないつもりだ。遊びだからな。」


誰でも気軽に遊べるから楽しいんだ。


別にそこから金をとるつもりはない。


あくまでも俺の販売対象は冒険者、だからな。


夜になりイライザさんの店へと向かう。


手には残った種が50個ほど。


まぁこれだけあれば十分だろう。


「イラッシャイ、シロウさん待ってたよ。」


「悪いな急な予約で。」


「最近はお客も少なめだし大丈夫さ。」


「客が減ってるのか?」


「他にも美味しい店はあるからね、それにうちはほら冬に儲けさせてもらったから。」


確かに冬の鍋は定番商品になった。


その分、夏用の商品が無いので客が減ってしまう。


エールはどこでも飲めるし、発泡水をつかった水割りも広まってしまったからなぁ。


「やっていけるのか?」


「心配してくれるのかい?大丈夫、去年に比べれば十分に儲かってるよ、でもありがとう。」


「この店が無くなるのは困るからな。」


「さぁさぁ、今日はいっぱい食べて飲んでおくれ!」


「お邪魔します。」


「とりあえずエール6人分で!」


「お前は遠慮ってもんをしろ。」


なんで一人で3人分飲むんだよ。


まったく困ったやつだ。


しばらくはイライザさんの料理に舌鼓を打ちながら周りの様子をうかがう。


確かに一時に比べれば客は減ったようだ。


とはいえ、泣きついて来たときに比べれば客は多い。


「なぁ、イライザさん。」


「なんだい?」


「皿投げする客減ったな。」


「まぁねぇ、飽きちゃったんだろうねぇ。かわりに今はジャストの的を置いてるんだよ。」


「似たようなやつがあるって言ったらやるか?」


「どういうことだい?」


「とりあえず物を見てくれ。」


満を持して登場したのが、そう持って来たファイヤーフラワーの種だ。


「この種がどうしたんだい?」


種と言っても長い枝のような物がついており、その先端に種子がついている。


まるであつらえたような持ち手。


俺は一本手に取って女達に配っていった。


もちろんイライザさんにもだ。


「今からこの蝋燭を使って同時に火をつける。種はゆっくりと燃えるから、最後まで残った奴の勝ち。負けたやつが今日の支払いだ。」


「えぇぇぇそんなの聞いてないよ!」


「ちなみにイライザさんに勝ったら一杯無料、どうだ?」


「面白いじゃない。」


「なるほど、これが先程仰っていたテコ入れなのですね。」


「あぁ、冒険者はこういう勝負事が好きだからな。支払いがかかったら燃えるだろ?」


「うぅ、調子に乗ってたくさん飲んじゃった。」


「大丈夫だって、一番最初に落とさなかったらいいんだから。さ、用意は良いか?せーの!」


全員同時に種子に火をつける。


するとパチパチと小さな火花を散らせながら種がゆっくりと燃えだした。


やはり線香花火だな。


その火はとても小さく、でもパチパチと元気よく燃える。


皆無言でそれぞれの火をみていた。


「あ!」


まぁ予想通りだな。


最初に落ちたのはエリザ。


「あぁ、落ちてしまいました。」


次にミラの順で落ちた。


俺とアネット、そしてイライザさんは弱いながらもまだ燃え続けている。


「俺が勝ったら一杯奢りな。」


「じゃああたしが勝ったら何してくれるんだい?」


「あ、そこまで考えてなかった。」


「そうだねぇ・・・じゃあキスしてもらおうか。」


「えぇ!ってあぁ・・・。」


イライザさんの提案に動揺して何故かアネットが火を落とす。


こんな事で動揺するような俺ではない。


「いいだろう。」


「言ったね、負けないよ。」


「シロウ頑張って!」


「イライザ様頑張ってください。」


「頑張ってくださいイライザ様!」


「そこは俺じゃないのか?」


「イライザ様が勝った方が色々と都合がいいので。」


「いつも酔い止めの薬を買ってもらっていますから。」


おのれ裏切りおったな。


そんな事を思っているうちに俺の火が最後の火花を飛ばした。


それが偶然イライザさんの方に飛ぶ。


「あ。」


「あ。」


そして落ちる火。


皆が見守る中で火が地面に向かって落下していく。


果たして勝敗はどちらに転ぶのか。


全員の視線がその小さな花火に向けられるのだった。

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