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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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316.転売屋はダーツを投げる

「ん?今日は何かあったか?」


「今日は商店街のお祭りですね。」


「え、そうだったのか?」


「この前回覧板に書いてありましたよ。」


「マジか、何か用意したか?」


「当たり前じゃない、といってもいつものやつだけど。」


何時のまに用意したのか大量のクッキーが準備されていた。


店ではそんな匂いしなかったので、倉庫の調理場を利用したんだろう。


この前オーブン用の魔道具が追加されていた気がする。


おかしい、あそこはただ倉庫でしかないんだが。


まぁいいか。


金ならあるし。


「ってことは今日は客も来そうにないな。」


「そうですね、主に子供が集まりますから怖がらせないように冒険者の皆さんも配慮されると思います。」


「ギルドにお達しも出ていたしたぶんね。」


「子供が怖がるから近づくなってか?」


「意外に子供好きな冒険者って多いのよ。休みの日は一緒に遊んでいる人もいるし。」


身体の大きい生き物には優しい者が多いというけれど、それと一緒だろうか。


ま、そういう事なら今日は店じまいだ。


客が来ないのに待つ理由はない。


「店番は交代でいいか?」


「うん。シロウは?」


「先に挨拶だけしてくる。」


「では私も一緒に参ります。」


近所付き合いも大切な仕事だ。


普段色々と迷惑かけているからちゃんとフォローしておかないと。


用意したクッキーをいくつか持って近隣の住居に配って回る。


これでよしっと。


「ちょっと見て回るか。」


「よろしいのですか?」


「たまにはな。」


そう言った途端にミラがするりと腕を絡ませてきた。


小さなお祭りだがデートに変わりはない。


子供が来るだけあって小さな縁日のようだ。


輪投げや射的なんかもある。


値段も一回銅貨1~3枚と格安。


普段扱っている金額が金額だから安く見えるが、子供にとってはそうじゃない。


見てみろ自分の財布の中身と相談しながら何を買うか悩んでるぞ。


まぁ大人はそんなことしないけどな。


「次はあれにするか。」


「またですか?」


「いいだろ、こういう祭り結構好きなんだよ。」


一件一件回ったのでお互いの手はお菓子やら玩具やらでいっぱいになっている。


俺達に使い道はないが、モニカの所に持って行けば万事解決だ。


次に目に留まったのは射的・・・ではなく自分で投げるタイプの的当てだった。


大小二つあり、子供は下の簡単な奴をやっている。


という事は上は大人向けか?


これはあれだ、ダーツだ。


中心に小さな的があり、そこから放射状に線が伸びて細かく得点が設定されている。


得点の割り振りは違うが、おおよそダーツと呼んでいいだろう。


投げる場所もそこそこ遠い。


「いらっしゃい。」


「上は大人向けか?」


「そうだよ、一回銅貨5枚。三回投げて100点を越えたら景品を上げる。ルールはわかる?」


「真ん中が50点で周辺が点数の二倍ってかんじか?」


「そそ!よく知ってるねぇ。」


「昔ちょっとな。」


これでも元の世界ではダーツでよく遊んだものだ。


一人で出来るし最近はオンラインで対戦も出来るんだから便利になったよなぁ。


レーティングはギリギリ二桁。


無茶苦茶上手いというわけではないが、それなりの腕だとは持っている。


「じゃあ銅貨5枚ね。」


「はいよ。ミラ、荷物を頼む。」


「それじゃあここの線に立って、これを投げてね。」


用意されたやつはずっしりと重かった。


ハードダーツだから当たり前か。


先端は鋭く尖りバレルの部分はずっしり重い。


が、中々に俺好みだ。


フライトは鳥の羽。


いいねぇ、こういうの。


懐かしいな。


線の前に立ち前傾姿勢になってダーツを構える。


紙飛行機を投げるイメージで手首を使ってまっすぐ・・・。


一本目は真ん中から大きく外れて右下の4点の的へ。


周りで見ていた子供達がはやし立てて来るが気にしない。


なるほど、こんな感じか。


「後二回だよ。」


「まぁ見てろって。」


さっきのイメージと結果をしっかりと考えてから、続けざまに二本目と三本目を投げる。


トスンといい音を響かせて二本とも中心の的に納まった。


うん、ブルがデカイ。


「すげぇぇ!」


「お兄ちゃん二本とも決めた!」


「かっこいい!」


さっきまで囃し立てていた子供たちから歓声の声が聞こえてきた。


どや顔してもいいのだが、ここはクールに決めるのが大人ってものだ。


「なかなかやるじゃないか。」


「まぁな。」


「ほら、これが景品だよ。あと、これも。」


手渡されたのはワインと封筒。


中を開けてみると時間と場所が書かれている。


「これは?」


「ショットの大会だよ。お兄ちゃんの腕前なら楽しめるんじゃないかと思ってね、その紙があれば中に入れてくれるよ。」


「大会なんかがあるのか。」


「お酒を飲みながら片手で楽しめるからね、意外にやっている人が多いんだよ。ここはほら、冒険者が多いから。」


「なるほど手軽に競い合えるわけか。」


ついでに賭け事もな。


その割にはあまり見かけなかったんだが・・・。


場所は三日月亭、時間は今日の夜。


うぅむ、知らなかった。


「まぁ、気が向いたら行ってみるよ。」


「がんばって。あい、次の人、銅貨5枚だよ。」


次の人が来たので場所を譲り後ろで見ていたミラのところへ戻る。


「ただいま。」


「シロウ様は本当にいろいろなことができるのですね。」


「偶然だよ。」


「そうは見えませんでしたが。」


「土産ももらったしいいじゃないか。そろそろ戻らないとエリザが怒りそうだぞ。」


「参加されるんですか?」


「まぁ気が向けば。」


「ぜひ参加しましょう。」


「どうした、急に。」


「もう一度かっこいい姿が見たいんです。」


ミラにそこまで言われたら出ないわけにいかないじゃないか。


惚れ直したみたいな顔しちゃって。


まったく、可愛いなぁ。


「あ、シロウおかえり。」


「どんな感じだ?」


「まぁボチボチね。今日は子供相手だし儲けはないわよ。あ、お酒買ってる。」


「買ったんじゃないもらったんだ。」


「どういうこと?」


「シロウ様がショットの景品で当てたんです。とてもお上手でした。」


「え、シロウもするの?」


お、エリザが食いついたぞ。


「するというか、昔似たようなもので遊んでいたんだよ。」


「あ~、それっぽい。」


「ぽいってなんだよ。」


「あれでしょ、一人で黙々と練習するタイプでしょ。」


「まぁそんなところだ。」


「実は私もするんだ、大会にも出ちゃうんだから。」


「今日の夜三日月亭だな?」


「え、何で知ってるの?」


「招待券をもらった。」


ぴらっとさっきの紙を見せるとエリザがふんだくるようにしてそれを掴んだ。


「・・・ほんとだ。」


「と、いうことはお前も出るのか?」


「シロウの実力、見せてもらうわ。」


なぜかエリザが対抗心に燃えている。


祭りのほうは昼過ぎには終了し、そして迎えた夜。


場所は三日月亭。


「お、シロウも参加するのか。」


「まぁな。こんなことやってるなんて全然知らなかったぞ。」


「場所が毎回変わるんだよ。今回は、うちの店ってだけだ。」


「あぁ、だからか。」


「今日は実力者だけが出られる大会だからな、常連じゃないのはお前だけだ。なかなかやるようだな。」


「ということはマスターも?」


「当たり前だろ。負けたら一番高い酒頼めよな。」


「じゃあ勝ったら一番高い酒飲ませてくれ。」


「いいだろう、乗った。」


やっぱり何か賭けないと盛り上がらないよな。


そんなこんなで始まったショットの大会。


ルールはよくあるカウントアップ。


三本ずつ交代で投げての合計点数を競い合う。


大体は7セットだが今回は5セットで競うようだ。


出場者は様々。


冒険者もいれば、どう見ても普通の主婦って感じの人もいる。


総勢15人のトーナメント方式だ。


エリザとは・・・決勝までいかないと当たりそうもない。


途中で負けるか、それともってやつだな。


初戦はいかつい冒険者との対戦だった。


見た目とは裏腹にかなり繊細な調整をしてくる相手だったが、苦もなく勝利。


観客のミラやアネットが大はしゃぎしている。


って、なんでマリーさんとハーシェさんまでいるんだ?


いつの間に。


その後もとんとん拍子で勝ち続け、あっという間に決勝戦までたどり着いた。


ちなみにマスターは俺と当たる前に別の人に敗北している。


ありがとう名も知らぬ主婦よ。


おかげでいい酒が飲めるぜ。


「ふふん、なかなかの実力じゃない。」


「お前もな。」


「でも私の敵じゃないわ、今回の優勝は私で決まり。」


「いやいや何を言ってる、勝つのは俺だ。」


「前に似たような遊びをしてきたみたいだけど、経験は私の方が上よ。新参者に負けたりなんてしないわ!」


中々言うじゃないか。


じゃあ俺も奥の手を使わせて貰おう。


決勝戦が始まりお互いに接戦を繰り広げる。


が、エリザの言うとおり経験による差がじわじわと広がっていた。


残り2セット。


タイミングは今しかない。


「エリザ。」


「なによ、いまさら負け惜しみ?」


「俺に勝ったら一つだけ言うこと聞いてやるよ。ただし、負けたらわかってるよな。」


「え!?」


「もちろん経験者なんだからかって当然だよな?」


「あ、当たり前じゃない。なんでもいいのよね?」


「もちろんだ。多少高いものでも買ってやるよ。」


突然の誘惑にエリザの集中が途切れる。


その証拠に中心から少しぶれた。


「絶対よ、取り消しはなしだからね。」


「あぁ、だからお前も覚悟しろよ。」


「え?」


「ほら、お前の番だろ。」


卑怯だと笑うなら笑え。


勝負は勝負。


さぁ、本当の戦いはここからだ!


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― 新着の感想 ―
[一言] お祭りは子供の頃の思い出ですと駄菓子、カルメ焼とか飴細工とか眺めてたなぁ。 あと型抜きとか。
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