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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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299.転売屋は衣替えをする

もうすぐ夏だ。


ロバート王子への荷物は準備できたので後はマートンさんの仕上げ待ちになっている。


エリザがなかなかいい感じの石を取って来てくれたので良い物が出来上がるだろう。


楽しみだ。


で、夏が来るって話だ。


「シロウ様、これはどうしましょうか。」


「良い天気だし裏庭で干してから仕舞うか。」


「そうですね、それが良いと思います。」


「エリザ、もう一枚追加だ。」


「また~?」


「落とすぞー。」


階段から一階に向けて毛布を蹴落とす。


暖かくなり使わなくなってきた寝具なんかをまとめて掃除中だ。


最高の洗濯日和、ついでに着なくなった冬服も洗って干せば一石二鳥だ。


「これで終わり?」


「寝具はな。まだ服が結構ある。どっちかっていうとお前のやつがな。」


「あ!それは置いといて!」


「触らねぇよ。ったく、下着ぐらい毎日洗えよ。」


「だって寝汗かいたりするから・・・。」


「エリザ様、シロウ様はそんな事で幻滅したりしませんよ。ですがこまめな洗濯をお勧めします。出してくだされば我々で洗いますので。」


「は~い、気をつけま~す。」


女性下着が放置されていたるからといって、ドキドキもワクワクもしないわけで。


昔、それこそ学生の時はそれでも良かったはずなんだが・・・。


ま、見たいと思えばすぐに見られる状況だけにそういうのに拘らなくなったって事か。


「洗濯物はまぁいいとして、服の在庫が大分増えたな。」


「そうですね、冬服はどうしても増えてしまいます。」


「もう着ない服もあるしなぁ・・・せっかくだし衣替えしてしまうか。」


「夏服は倉庫に入れてありますので持ってきましょう。」


「それは俺がやる。とはいえ、夏服の倍はありそうだ、入るか?」


「・・・減らせば何とか。」


夏服の生地は薄いが、冬服はどうしても分厚くなる。


同じ枚数でも嵩は二倍、いや三倍になる可能性もある。


さすがに四人分の服を全部しまうとなると、かなりの量になるなぁ。


家の倉庫は常に飽和気味、とはいえ向こうの倉庫に持っていくのはめんどくさいって言うね。


はてさてどうしたもんか。


ミラの言うとおり減らすのが一番だろうけど・・・。


「捨てるか?」


「いえ、捨てるのであれば寄付しましょう。」


「寄付なぁ・・・。」


寄付って言うぐらいだ、もって行く先は教会なんだろうけど。


三人の服をモニカが着れるとは思えない。


いろいろな部分でサイズが合わないだろう。


ガキ共が着るには何年かかるのやら。


「教会に寄付しておけば、街で困っている人に支給してくださいますよ。仕分けするのも立派なお仕事になります。」


「なるほど、そういうことか。」


「せっかく寄付するなら他のものも一緒にしませんか?」


「他のもの?」


「食べ物とか、薬とか、必要としている人に一緒に配ってもらえますし。」


まぁ服を買うのに困っているぐらいだ、そういったものにも困っているだろう。


「でもなぁ、冬服だぞ?」


「夏服も一緒に寄付すればいいんです。着ないもの、ありますよね?」


「そこまで行くともう断捨離だな。」


「ダンシャリ?」


「ようは思い切って捨ててきれいにしようって考えだ。まだ着られるはもう着ないって言葉もある。」


「なるほど、それはあるかもしれません。」


「エリザ、寝具が終わったら服の整理するぞ!」


「は~い、すぐ行く~!」


さり気に衣装持ちなんだよな、あいつ。


その点俺はそんなに服を持っていない。


着る服なんて三種類ぐらいあればどうとでもなるしな。


やるとなったら即行動がうちのモットーだ。


各自自分のタンスをひっくり返し、着る服・着ない服を仕分けしていく。


冬服が終われば今度は夏服だ。


よく見ると着過ぎてよれてしまっているものもちらほらある。


また仕立てて貰わないと。


もちろん俺が仕立てると言うことは、三人も一緒に仕立てると言うわけで。


うん、多めに捨てて貰うか。


いや、寄付だったな。


「っと、こんなもんかな。」


「シロウ様はもう終わりですか?」


「あぁ、もともと持ってる服が少ないからな。これでも半分は減らしたぞ。」


「私ももう少し減らしましょうか。」


「いやいや、着れる服を無理に捨てる必要はないだろ。その青いスカートは結構好きだぞ。」


「じゃあ残しておきます。」


うれしそうな顔をして捨てようとしていたスカートをタンスに戻すミラ。


そういう仕草がまた可愛らしいんだよなぁ。


普段あまりそういう表情を見せないだけにグッと来るものがある。


「ちなみにこれはどうでしょう。」


「・・・下着だよな?」


「はい。あまり身に着けないものですから、お好きですか?」


「好きか嫌いかで聞かれると好きだ。」


「じゃあ残します。」


「そんな際どいの持ってたんだな。」


「前にエルロースに渡されたんです。お揃いなんだそうですよ。」


う~む、着ている姿が思い出せない。


だって、下着なんてすぐ脱いで襲い掛かってくるんだ見ている暇なんてない。


発情期だから仕方がないが、ウサギに食われるってのも結構恐ろしいものだ。


「あ~~終わらないよぉぉぉ!」


そんな話をしていると、部屋の奥からエリザの悲鳴が聞こえてくる。


二人で中を覗き込むと、布の山に埋もれたエリザが頭を抱えていた。


「・・・それ、全部捨てるんだよな?」


「捨てないわよ!」


「じゃあ残すのか?」


「そのつもりだけど・・・。」


「ぜんぜん減ってないじゃないか。っていうか、そのよれた服は捨てられるだろ。」


「駄目よ!前にシロウが似合ってるって言ってくれたんだもん!」


はい?


そんな理由で?


「じゃあそのズボンは?」


「これは色がいいって。」


「そのスカートは。」


「意外に似合ってるなってほめてくれた。」


「・・・その穴の開いた下着は?」


「これはシロウと初めてした日の・・・。」


「捨てろ!」


「えぇぇぇぇぇ!!」


なんだよ、初めて抱いた日の下着って。


っていうか穴が開いたのなら捨てろよ。


残したい気持ちは百歩譲ってわかるとして、残すのはまた別の話だ。


「ミラ、ちょいと監督してやってくれ。穴あき、ほつれ、よれよれの奴は理由を問わず廃棄。鑑定スキルで痛みは把握できるだろ?」


「思い入れのある品もですか?」


「基準はミラに任せるが厳し目で頼む。エリザ、服ならまた買ってやる。だから覚悟を決めろ。」


「どうしても駄目?」


「お前に似合う下着もまた選んでやるから。・・・ミラも選んでやるからそんな顔するな。」


「わ、私は!」


「アネットも選んでやる。ったく、困った奴らだ。」


アネットが階段上からあわてた様子で顔を出してくる。


髪の毛が垂れ下がり夜に見たら叫んでしまうやつだ。


よかった、昼間で。


確かに俺は下着好きだが、ボロボロの奴はちょっとなぁ。


エリザも覚悟を決めたようだし後はミラに任せれば大丈夫だろう。


「俺は寄付する服を片付けてくるから、仕分けの終わった奴は上から落としてくれ。・・・洗濯してあるよな?」


「たぶん。」


「ミラ、汚い奴も捨てろ。最優先だ。」


「かしこまりました。」


洗濯してない奴をタンスにしまうな!


ったくなんて奴だ。


これからは溜め込まないように常に気をつけないと。


朝から始めたはずがあっという間に昼を過ぎてしまった。


ミラ教官のおかげでエリザの仕分けも何とか終了。


本人は大分へこんでいるようなので、早めに新しいのを買ってやろう。


「よし、搬出完了!」


「後は教会に持っていくだけですね。」


「服に薬に食料に、なんだか凄い量になっちゃったわね。」


「半分はガキ共とモニカ用だからなぁ。寄付のはずなのに新品を持っていく、これいかに。」


「いいじゃないですか、喜んでくれますよ。」


「そりゃ新しいのをプレゼントされたら喜ぶだろ。」


子供服って結構高いんだよなぁ。


生地は少なくても、丈夫さを出す為に縫製をしっかりしなければならないからだそうだ。


服の好み?


知らん、どうせ汚すんだし無難なのでいいんだよ。


モニカはまぁその辺気にするだろうから、当たり障りのない奴にしておいた。


下着?


いや、さすがにそんなのは贈らないって。


「これを持って行ったら今度は夏服の仕立てだからな。ただし、一人3着までだぞ。」


「十分です。」


「奴隷なのにむしろいいんでしょうか。」


「いいんだよ。」


「もちろん私もよね?」


「今回だけな。」


「やった~!」


子供のようにはしゃぐエリザ。


ちなみに下着も一着だと言うとすごい目をされてしまった。


「っしかし暑いな。」


「もうすぐ夏ですから。」


「お酒の美味しい時期が来るわね。」


「そりゃいつもだろ?」


「夏のお酒はまた違うわよ。」


「あの屋上で飲むと美味しいでしょうね。」


「あ、美味しそう!」


「夏になったらな。」


明日にも飲みに行こうと言いそうなので先手を打っておく。


夜になると風がよく抜けることだろう。


確かにいいかもしれないな。


「まぁ、とりあえず夏になったらな。」


寄付品とは別にプレゼントした子供服は大喜びされた。


モニカに至っては大事そうに胸に抱えてフラフラと自室に戻ってしまったぐらいだ。


寄付の品を放置して。


そんなに喜ぶのならまたプレゼントしてもいいかもしれない。


そこまで喜んで貰えたらプレゼントした甲斐があったってもんだ。


「私もアレぐらい喜ぶわよ?」


「知ってるよ。」


「あっそ、ならいいわ。」


「今日のそのシャツもよく似合ってる。」


「えへへ。」


「でも洗えよ。」


「わかってるわよ!」


エリザの大声が空に響く。


夏だ。


ここに来てもうすぐ一年。


次の夏は何が起きるんだろうか。


楽しみだ。


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