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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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278.転売屋は元ナンパ女とデートをする

空き物件が見つかるまでカーラはうちの三階に住むことになった。


とはいえ、他人が家にいると中々したい事が出来ないので明日には三日月亭へ移動してもらう予定だ。


寝泊まりと食事は向こうで、仕事はこっちでって感じだな。


本人は好きな事を研究してお金がもらえれば何でもいいという感じなので、当分はこのやり方で行くことになるだろう。


抽出は成功しても化粧品自体が出来上がったわけではない。


これからどうやって薄めるか、そもそも何で薄めるのが良いかという実験を行わなければならないそうだ。


大変そうだが俺が手伝えることは何もないので、カーラに全部丸投げだ。


それで俺にもお金が入って来るんだから、ありがたい話だよなぁ。


「ってことでトレントの樹液が欲しいの。」


「エルダーか?ヤングか?」


「どっちでもいいんだけど、ヤングの方があっさりしてそうよね。」


「なんとなく言いたいことはわかる。」


「ではギルドに依頼をかけてきます。他にございますか?」


「今の所は大丈夫、レレモンとボンバーオレンジもあるしね。」


「あれも使うのか?」


「成分はしっかりしてるし匂いもいいから。二種類あった方が嬉しいでしょ?」


「まぁ確かに。」


種類があればその分売れる。


カーラもなかなか商売上手だ。


「じゃあミラ、よろしく頼む。カーラ、アネットに無理はするなと伝えてくれ。」


「製薬のお仕事もあるもんね、わかった。」


「俺はいつもの通り店番だ。」


商売繁盛。


原料は引き続き買取しないといけないし、ミノタウロスのいるところまで潜るとそれなりの素材も装備も手に入る。


冒険者からしたら一石二鳥、俺としても一石二鳥、両者win-winの関係ってね。


そんな事を思っているとまたカランカランとベルが鳴り扉が開いた。


「いらっしゃい。」


声をかけるも姿は見えず。


ダスキーが来たのかと思い下を見るも誰もいなかった。


いや、よく見ると扉の影に誰かがいるのが見える。


「おい、用があるなら入って来い。」


声をかけると、想像していなかった人物が姿を現した。


「じゃ、邪魔するで。」


「レイラじゃないか、どうしたんだこんな所に来て。薬の納品はまだだぞ?」


「薬は関係あらへん。きょ、今日は別の用事で来たんや。」


「買取か?」


「ちゃうわ!」


ふむ、レイラが俺の店に用事ねぇ・・・。


金に困っている感じはないし、買取でもないらしい。


「今日はあの神輿で来てないんだな。」


「あれは邪魔になるやろ。」


「今日はちゃんと考えてきたんだな、偉いじゃないか。」


「やめてや子供じゃないで。」


「はは、悪い悪い。」


最初に出会った時とは別人のようだなぁ。


随分と成長したもんだ。


「おい、入るのか入らないのか?」


と、レイラの後ろに屈強そうな冒険者が現れジロリと睨む。


「入るにきまってるやろ。」


「レイラ、ちょっとそこで待ってくれ。」


「わかった。」


「悪いな、先に行かせてもらうぜ。」


「別にかまへん。」


おぉ、レイラが自分優先じゃなくて他人に順番を譲ってる。


明日は雨でも降るのか?


一先ず後に入ってきた冒険者を対応させてもらう。


待っている間不機嫌になるのかと思ったが、大人しく、いや興味深そうに店の商品を眺めていた。


「全部で銀貨85枚だ。」


「中々の値段だな。」


「良い物ばかり持ち込んでくれたからな、こっちも助かる。」


「その代金で結構だ。」


「じゃあ金を持ってくる、ちょっと待ってくれ。」


素材がそれなりにと装備が三つ。


決して高級品というわけじゃないが、初心者から中級者が使えそうなやつだった。


これなら倍で売れるだろう。


代金を支払うと男は満足そうに店を出て・・・。


「そこにいるのは龍宮館のレイラか。」


「私か?」


「昔は自分勝手でいけ好かない感じだったが、いい女になったじゃないか。」


「褒めても何も出えへんで、私を買いたかったら龍宮館まで来るんやな。」


「はは、残念ながら俺の好みじゃねぇよ。じゃあな。」


今までだったら今のセリフでブチ切れそうなものだが、さらっとかわして男を見送っていた。


男が言うように、本当にいい女になったと思う。


「悪いな待たせて。」


「別に。」


「で、どうしたんだ?」


改めて問いかけるもさっきまでの威勢はどこへやら、急にモジモジし始めてしまった。


手の指が股の間で絡んではほどけ絡んではほどけ。


お、深呼吸したぞ。


そしてまっすぐに俺を見る。


「今日は休みやねん。せやからそっちがよかったらこれから・・・で、デートせぇへん?」


「いいぞ。」


「え?」


「だからデートだろ?ただし、ミラが戻って来てからになるが構わないか?」


「本当にいいんか?」


「なんだ、行かないのか?」


「行く、行くに決まってるやろ!」


バンとカウンターを叩いてレイラが身を乗り出してくる。


そんなに主張しなくてもいいのに・・・。


「準備するからそこで待っといてくれ。今香茶を淹れてやるから。」


貴方(あんた)が淹れるんか?」


「俺以外に誰がいるんだよ。エリザはダンジョンミラは外出、アネットとカーラは上で作業中だ。」


「カーラ?」


「あぁ、言ってなかったか。ちょいと共同で研究をしていてな、アネットの部屋で寝泊まりしてるんだ。まぁ、明日には三日月亭に移動してもらうけどな。」


「そ、そうなんや。」


若干動揺を見せているものの、何とか自分の中で納められたようだ。


とりあえず台所に行き香茶を淹れてから片づけを進める。


レイラは香茶を飲みながら静かに店内を見回していた。


よし、これで作業は終わりだ。


「ただいま戻りました。」


「お、ミラちょうど良い所に戻った。」


「レイラ様もいらっしゃいませ、買取ですか?」


「いや、デートのお誘いだとさ。」


「・・・そうでしたか。」


ピクっと一瞬動きを止めたミラだったが、またすぐに動き出した。


そのままカウンターをくぐり店の奥に入る。


「依頼はどんな感じだ?」


「ニア様によるとヤングトレントが少し時間がかかりそうとのことです。」


「あぁ、また放置されているのか。」


「面倒な魔物ですから致し方ありません。一週間もあれば必要数は揃うそうですが、先に揃った方から持ってきてもらえるようにお願いしてあります。」


「それでいい、ありがとな。」


「いえ、どうぞ楽しんできてください。」


「ってことで行くぞレイラ。」


「い、いってくる。」


いまだぎこちない感じの残るレイラと共に店を出る。


出たのは良いが一向に進む気配がないんだが・・・。


「で、どこに行くんだ?」


「とりあえず市場を回ってみーひん?」


「わかった、市場だな。」


俺が声をかけるとハッとしたように顔を上げ先を歩きだすレイラ。


「・・・まさかオッケー貰えると思ってへんかったわ。こんな事やったらちゃんと考えておけばよかった。」


おいおい聞こえているぞ。


ってな感じでツッコミを入れるのは流石に可愛そうなので黙ってその後ろをついていく。


あっという間に市場に到着してしまった。


「どこからいく?」


「任せる、普段どうやって買い物をするか折角だから見せてーな。」


「デートなんだろ?」


「あかんか?」


「いや、面白いかはわからないがお前がそれでいいなら俺は構わない。」


レイラなりに知恵を絞ったんだろう。


今日の所はこれで良しとしてやるか。


あの自分の事しか考えられなかったナンパ女が、ちゃんと色々考えるようになったんだ。


そのご褒美だしな。


レイラと共にいつものように市場を見て回る。


面白そうなものがあれば声をかけ、鑑定をして利益が出そうなら買う。


その様子を何も言わずにただ興味深そうにレイラはみていた。


「楽しいか?」


「世の中にはこんなに新しい物が溢れてんねんなぁ。」


「あそこにいるとどうしてもな。ふと思ったんだが、休みだからって勝手に外出していいものなのか?」


「自分の借金は完済してるから、どこに行こうが私の自由やで。」


「という事は今は望んであそこにいるんだな。」


「そうなるな。」


「てっきり借金まみれなのかと思ったんだが・・・。」


「もちろんそういう子もおる。必要に迫られて、売られてきて、色々な人がいる場所やからなぁ。そっちこそ、私のような娼婦とデ、デートしてよかったん?」


急に不安になったんだろう、真剣な顔をして俺を見て来る。


これは真面目に答えてやるべきだろう。


「娼婦だから何かダメな事があるのか?」


「だって、色々な男性と関係を持ってるやん。」


「それが仕事だろ?それともあれか?後ろめたさを持ったまま仕事してるのか?」


「そんなことあらへん!私はこの仕事に自信と誇りを持ってるんや!」


「そんな大声を出すな、周りの人が驚いているぞ。」


「あ・・・。」


突然大声を出すものだから何事かと周りの人が好奇の目を向けて来る。


それが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。


前までなら逆ギレの一つでもしそうなものだが・・・。


「ならいいじゃないか。俺はお前がどんな仕事をしていようが気にしない。いや、興味が無い。」


「興味が、ない?」


「つまり職業なんてのはどうでもいいって事だ。前までのお前ならデートに誘われても断っただろうが、今のお前、今のレイラはそれをしてもいいと思う女になった。レイラという一人の女だからこそ受けたってわけだ。言っている意味わかるか?」


「・・・わかる。」


「こんな往来でこんなこと言わせるなよな、まったく。デートに誘ったんだ、飲み物はお前のおごりだぞ。」


「まかせとき!」


よし、元気になったな。


その後夕刻までデート?は続きレイラは龍宮館へと戻っていった。


正確には俺が送っていったわけだが、帰りしなにタトルさんが深々と頭を下げてきたが、何も言わずに手を上げるだけでそれに応えた。


別に俺が何かをしたわけじゃない、自分で自分を変えたのはレイラだ。


いい女になって来たじゃないか。


それでもまだ、俺の女達には敵わないけどな。

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