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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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273.転売屋は隠し倉庫を発見する

「ん?」


即席の人をダメにするクッション(巨大)に寝そべりながら日光浴を楽しんでいると、ふと床に筋が入っているのが見えた。


これは何かを引きずった跡か?


体を起こしハイハイをするようにその後を追っていく。


手が真っ黒になるが、まぁ気にするほどじゃない。


「なに?お昼寝しすぎて幼児退行しちゃった?」


「そんなんじゃねぇよ。」


「それは残念、もっと甘えてくれると思ったのに。」


「そう言うのがお好みか?」


「ううん、違う。」


だろうな。


エリザはどっちかっていうと脳筋らしく激しいのがお好みだ。


でも時々甘々にしてやると人が変わったように感じるから・・・って今はこれを追う所からだ。


「で、何してるの?」


「これを見てくれ。」


「これは・・・何かを引きずった跡もしくはこすった後ね。」


「やっぱりそう見えるよな。」


「でもここ屋上でしょ?資材を引きずったならともかく、この頑丈な建物に傷を入れるとかよっぽどよ?」


「何度も往復したって感じだな。」


怪しい。


何もないだだっ広い屋上にこんな筋をつける理由はない。


でもあるんだから何かがあるんだろう。


それこそ、ここに来るまでに見つけた窓のように・・・。


「ミラ、アネット片づけを頼む。エリザ調べに行くぞ。」


「まっかせといて!」


「シロウ様このクッションはどうしますか?」


「・・・とりあえず解体して必要ならまた作ればいいだろう。欲しいんだろ?」


「えへへ、はい。」


「では後日小型の物を作っておきます。こちらはお任せください。」


それじゃ、俺達は宝探し?といこうじゃないか。


エリザと共に引きずり跡追いかけていくと、倉庫の奥で切れていた。


「ここまでか。」


「そうみたいね。」


「何か怪しい物はっと・・・あるな。」


「普通はもっと隠したりしない?」


「こんな所に来るのは倉庫の持ち主ぐらいだろ?それに魔導鍵がなければ入れないんだからこんなもんでいいんだよ。」


「それもそうね。」


深く考えるのはやめておこう。


さて、何が出るかなっと。


床に開いた鍵穴に魔導鍵を差して廻してみる。


すると微かな振動と共に床が二つに割れた。


違うな、開いた感じだ。


「階段があるぞ。」


「まるで遺跡ね。」


「遺跡と言えば?」


「宝物よ!」


「って事で中を確認しようじゃないか。中からは発見できなかったってことは、隠し倉庫か何かなんだろう。」


「隠されてるってのが良いわよね。」


普通に置かれていると何も感じなくても、隠されているとドキドキする物だ。


しかもここは元金持ちの倉庫。


わざわざこんな手の込んだ場所に隠すんだ、お宝があって当たり前だよな?


階段は10段ほどで下についた。


頭は天井すれすれ。


倉庫には魔灯が仕込んであったのに、ここには何もないようだ。


「エリザ、ランタンか何か持ってきてるか?」


「もちろんあるわよ。」


「聞いといてなんだが、何であるんだ?」


「冒険者の必需品だもの。小さいけどそれなりに明るいからこれぐらいならみえるはず・・・っと、はい点いたわ。」


ほのかな明かりに照らされて倉庫の奥が見えて来る。


まるで屋根裏部屋と見紛うばかりの乱雑ぶり。


普通もうちょっと整頓しとかない?


「うわ、すごい埃ね。」


「口を覆っておけよ、咳が止まらなくなるぞ。」


「とりあえずここから外に持ち出しましょ、確認は外でやればいいじゃない。」


「ミラにも手伝ってもらうか。」


埃まみれの品々をエリザと一緒に外へと搬出する。


持つたびに鑑定スキルが発動するが、あえて無視して搬出作業に没頭した。


外がオレンジ色に染まる頃、最後の品と一緒に外に出た。


「結構あったな。」


「なかなかの量です。」


「でも、どれもガラクタみたいね。」


「壊れてる物が多いな。もしかするとゴミ箱代わりに使ってたのかもしれない。」


「えぇ~、わざわざこんな隠し倉庫に?」


「普通はそう考えるけど、随分と変わり者だったらしいしありえない話じゃないさ。」


屋上に並んだのは古ぼけた壺や、欠けた皿など一目で不良品とわかる物ばかりだった。


でも外ればかりではない。


搬出しながらいくつか当たりを見つけている。


「当たりはこの辺ですね。」


そういいながらミラが紫色の小瓶を持ち上げる。


「誘惑の香水だそうですよ。これを使うと、相手が自分を好きな人と勘違いするそうです。」


「・・・それってどうなんだ?」


「効果は1日ですが、既成事実を作るには十分かと。」


「使われた男が不憫だな。」


「ご心配なく、シロウには使わないわよ。」


「そうしてくれ。」


ミラから小瓶を貰い、オレンジ色の空に透かして見る。


まだ中身は半分ほどあるようだ。


『誘惑の香水。これをかけられた相手は目の前の異性を自分の愛する人として認識してしまう。ただし効果は1日。最近の平均取引価格は銀貨35枚、最安値銀貨20枚、最高値銀貨52枚。最終取引日は439日前と記録されています』


「次はこれだな。」


「また古そうなマントねぇ。」


「かなり破れてますよ?」


「そう見えるだろ?だが中身は中々の品だぞ。」


『みすぼらしの外套。見た目はボロボロだが魔力の力で保護されているので魔法をほぼ無効化する。ただし、物理攻撃には効果が無い。ほつれている。最近の平均取引期価格は金貨2枚、最安値銅貨5枚、最高値金貨4枚。最終取引日は1年と147日前と記録されています。』


「魔法をほぼ無効化ですか、すごいですね。」


「うそ!こんなにボロボロなのに?」


「わざとそう作られているらしいが、さすがにほつれがひどい。今度修繕に出すか。」


「リーアが見たら喜んで直してくれそうね。」


「変わった品物が好きだからなぁ。」


リーアはうちの隣で冒険者用の装備を直している修理屋の店主だ。


変わった物が好きで、普通の装備品なんかは一切受け付けない変わり者。


今回の様に珍しい品には飛びついてくれること間違いなしだ。


「じゃあこの壺は?」


「それはゴミ。」


「こちらの剣はどうでしょうか。」


「ただの鉄の剣だ。しかも欠けてる。」


「じゃあじゃあ、この高そうな絨毯は?」


「ただの襤褸切れだな。」


「ゴミばっかりじゃない!」


だからそう言ってるじゃないか。


確かに当たりはあるけれど、ほとんどはゴミだ。


当たりがあるだけましとおもわないと。


・・・ん?


エリザが持ち上げた高級そうな襤褸切れの隙間にきらりと光るものを見つけた。


それはオレンジ色の光に照らされてより一層その輝きを増している。


「ちょっとそれ持っとけ。」


「え?」


隙間に手を入れて引っ張り出す。


日の下に晒されたソレはきらきらと光り輝き、俺達四人の目を虜にした。


『サンオブザサン。オレンジ色の太陽をぎゅっと濃縮したような鮮やかな色をしたその宝石は、見る者を元気づけることが出来る。鼓舞の効果が付与されている。最近の平均取引価格は金貨120枚、最安値金貨100枚、最高値金貨200枚。最終取引日は10年と653日前と記録されています。』


太陽の息子か。


確かにその名前に相応しい琥珀色とも違う鮮やかなオレンジ色だ。


長方形でさらにいくつものカットが施されたウズラの卵程の大きさのソレが指輪の上にドンと乗っかっているのは中々に見事だ。


ん?


よく見ると指輪に何か刻印されている。


これは名前だろうか。


掠れてしまってもう読めないな。


「綺麗な指輪ですね。」


「こんなに大きな宝石がついてるんだから、高いでしょ。」


「そうだなぁ、金貨100枚かそれ以上か・・・。」


「すごい!」


「誰かへの贈り物だったんでしょうか。」


「名前みたいなのが書いてあるが掠れて読めない。可能性はゼロじゃないな。」


「でもどうしてこんな襤褸切れにくるまれてたんでしょう。」


「形見とか?」


「それならもっときれいな箱に入れない?」


何故ここにあったかはわからないが、少なくとも元の世界で言う20年は眠っていたことになる。


形見なら自分が死ぬときにどうにかすると思うのだが・・・。


本当に忘れていたのかもしれないな。


「仮にそうだとしても持ち主はもういないんだ、いいように使わせてもらうとしよう。」


「オークション?」


「そうだな、これだけの品ならその方が高く売れそうだ。」


「何か特殊な効果がついているのですね。」


「鼓舞の効果らしい。詳しくは分からないが、周りを元気づけるそうだ。」


「それならば軍や騎士団等上に立つ人がつけると良さそうです。」


「なるほど、そういう考え方もあるか。」


となるとまた王家か?


あんまり関わりすぎると周りに何言われるかわからないしなぁ。


穏便に行くためにも対応は慎重に。


ちょっと考えながら売るとしよう。


「ともかく大当たりが見つかっただけいいじゃないか。後はこのゴミを処理するだけだな。」


「え~、明日じゃダメ?」


「明日になったらもっとやりたくなくなるだろ?とりあえず重たい奴は上から落として、それ以外のは持って降りよう。みんな、最後の一仕事だぞ。」


「「「は~い。」」」


のんびり昼寝もして元気いっぱい、のはずだ。


周りを鼓舞するべくその指輪をポケットにしまって後片付けを続けるのだった。

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