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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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223/1767

223.転売屋は賭けをする

長かった還年祭もいよいよ大詰め。


今日は12月30日、昔で言う大晦日だ。この世界には31日が存在しないからな。


何処の世界も次の暦になる時は夜通し盛り上がるらしく、朝からエリザたちがソワソワしている。


違うな、ソワソワしているのは別の理由からだろう。


そう、この一ヶ月俺達を悩ませた存在、ビアンカの借金返済期限を迎えたのだ。


「で、結局何処まで溜まったんだ?」


「何とか金貨15枚かき集めたみたいよ。」


「そうか、有限実行したわけか。」


「でも金貨15枚足りません。」


「どれだけ頑張ったとしても見込みが甘かったということだ、諦めろ。」


還年祭最終日だというのに女達、主にエリザとアネットの顔は浮かないままだ。


ミラに関してはいつもと変わらない。


元々ビアンカに金を貸すのは消極的、いや否定的だったからな。


どちらかというと俺サイドの考えをしている。


金にならないのであれば貸す理由は無い。


それに尽きる。


「今日はお休みするんですよね。」


「あぁ、行く場所がある。まずはギルド協会に顔を出してその後レイブさんの所だ。」


「なんでまたレイブさんのところに?」


「賭けをしてるんだよ。」


「賭け事ですか。」


「あぁ、内容はその時のお楽しみってな。ちなみに三人にも同行してもらうぞ。」


「えぇ!」


「暇だろ?終わったら一日好き放題させてやるから付いて来い。」


エリザは文句を良い、アネットはビアンカが心配で暗いままだ。


ま、どうなるかは本人次第ってな。


閉店の札をかけてから一週間で一番盛り上がっている大通りを歩く。


道行く誰もが笑顔を浮かべ、祭りを楽しんでいる感じだ。


いいねぇ、こういうお祭り騒ぎ。


クライマックスはさぞ盛り上がることだろう。


それに乗っかれるかは、本人次第って所だがまずは用事を済ませておかないと。


人ごみを掻き分けながら休業の札のかかったギルド協会の戸を開ける。


「今日はお休みですよ。」


「知ってるよ。」


「まったく、休みの日も働かせるなんて困った人ですねぇ。」


「いいじゃないか、この半年色々と働いてやったんだから。貸しは返してもらえそうか?」


「確認は取れました。特に怪しい動きも無さそうですし、向こうも向こうで後任は決まっていないとのことです。」


「よしよし、良い感じだ。」


「もう戻っても良いですか?妻が待っているんですが・・・。」


「ニアさんにもよろしく伝えてくれ、良い還年祭をってな。」


私じゃないんですか?っていう羊男は無視してギルド協会を出る。


用事はコレだけだから長居は無用だ。


「この後はレイブ様のところでしたね。」


「その前に色々と買って行くぞ。エリザ酒を頼む、アネットとミラは昼飯とお菓子の確保だ。買ったらレイブさんの店に集合で。」


「え、お菓子もですか?」


「長丁場になるかもしれないからな、念のためだ。」


「かしこまりました。」


「酒は銀貨10枚まで、飯は上限無しだ。なんならデリバリーしてもらえ、場所はレイブさんの店な。」


エリザに金を握らせると途端に笑顔になった。


まったく、現金な奴だ。


女達に買い物を任せて俺だけ別行動をする。


向かうは今日の主役、シモーヌの所。


裏通りをくねくねと進むと、突然後ろに人の気配を感じた。


「あら、お祭りへのお誘い?」


「そんなところだ。」


「それは嬉しいけど、生憎まだ商売が終わってないのよ。」


「って事はビアンカは返済に来てないのか。」


「期限は今日の夕方まで、でもお金は金貨15枚しか貯まっていない。この分だと間違いなく彼女は私のものになる。もっとも、貴方が変な事をしなければだけど?」


裏路地から出てきたのはシモーヌ、それと御付の強面さんだ。


前も一緒だった気がする。


「俺は何もしないさ。この街に錬金術師は三人いるし、四人は多すぎる。」


「そうね、オークションで大儲けしたからてっきり身体目的に買うのかな何て思ってたんだけど、貴方もう枯れてるの?」


「バカ言えまだまだ現役だ。今は三人で十分だよ。」


「それを枯れてるって言うのよ。若いんだから好き放題食べれば良いのに、候補がいくらでもいるでしょ?」


「そこまで調べてるのかよ。」


「そりゃあそれが仕事だから。」


「邪魔はしないって約束だからな。安心してくれ、俺は何もしない。」


期限は夕刻まで。


それまでにビアンカがどういう判断をするかだ。


「私も貴方には死んで欲しくないのよね。」


「それはどうも、邪魔したな。」


「えぇ良い還年祭を。」


良いお年を的な感じで挨拶をして裏路地を後にする。


女達はもう買い物を終えて向っているだろうからそのままレイブさんの店へと足を向ける。


路地を抜ければ・・・ほら、真正面だ。


「シロウ様ようこそお越し下さいました、皆さんお待ちかねですよ。」


「すみませんね、昼間から。」


「いえ、主も楽しみにしておりましたから。」


それは何よりだ。


中に入り、係の人に案内されて大きな扉の前に到着した。


「失礼します、シロウ様が到着されました。」


「どうぞお入り下さい。」


レイブさんの声にあわせて扉が開かれる。


この間国王陛下と王子を接待していた貴賓室的な所だ。


今日はそこにうちの女達がお邪魔している。


「遅くなりました。」


「情報収集はいかがでしたか?」


「予想通りですね、賭けは成立ですから後はどの時間に来るかです。」


「昼の鐘までに来たら私の勝ち、二回目の鐘が響く前ならシロウ様の勝ちでしたね。」


「どちらも外れたらこの話はなかったということで。」


「えぇ、分かっています。」


「じゃあ時間まで楽しみましょうか。」


目の前には女達が買い集めてきた食事と酒、のほかにレイブさんが用意した高そうなお酒やつまみが沢山並んでいる。


「ねぇ、何の賭けをしていたの?」


「そんなの決まってるだろ、ビアンカがここに来るかどうかだよ。」


「「「え!?」」」


「金は足りない、でも頼りにしていた俺は金を貸さない。残された道は借金を返済できず売られるか、自分で自分を売って返済するかだ。」


「つまり私やアネット様のようになると思っておられるんですね。」


「そういうこと。何処の誰だか分からないような相手に買われるぐらいなら、せめてまともな人に買われたい。そう思うのが普通だろう。だから俺とレイブさんはここに来ると予想した。だがそれじゃ賭けにならないから時間を決めたんだ。」


「それがお昼までと開始までなんですね。」


「え、でもそれを過ぎたら?」


「時間オーバーだから賭けは不成立。だから買わない。」


レイブさんが勝った場合はレイブさんの言い値でビアンカを買うことになっている。


ちなみに俺が勝った場合は買取価格に金貨10枚上乗せする約束だ。


この間ロバート王子が支払ってくれた分の半分上乗せする。


レイブさん的には利益が少なくなるので正直付き合ってくれるかは半々だったが、相談すると快く引き受けてくれた。


どっちに転んでもレイブさんは儲かるわけだし断る理由は無いそうだ。


このやり方であれば俺達は何も手助けをしていないからシモーヌも手を出せない。


あくまでも "自分の意思で自分を売って借金を返した" んだから、その後誰に買われるかなんて関係ないもんな。


もちろんビアンカがそれを知ったら喜んで自分を売りに来るだろうから教えていない。


あくまでも自分の意思で自分を売れるのか。


それをレイブさんと賭けているわけだ。


俺はギリギリまで悩むと踏み、レイブさんは早々に売りに来ると予想した。


さぁ、結果はどうなることやら・・・。


信じられないという顔をする女達を気にせず、レイブさんの酒を二人で乾杯する。


う~ん、美味い。


さすが良いお酒を知ってるなぁ。


今度教えてもらおう。


しばらくすると女達も諦めたのか食事を始めた。


何を言ったって無駄って事が分かったんだろう。


後はビアンカが決めることだ、俺達は何もしないし何もさせない。


そうじゃないとシモーヌに目をつけられるからだ。


ここにカンヅメにしているのも話を聞いてそれを助言させない為なのと、現場に立ち合わせる為だな。


時間は緩やかに過ぎ、レイブさんはこの間仕入れの際に見聞きした面白い話を。


俺は自分の客の話をして時間を潰した。


そして・・・。


カラ~ンコロ~ンと教会の鐘が高らかに鳴った。


「残念、私の負けのようです。」


「まだ分かりませんよ、次の鐘までに来なければ私も負けですから。」


残り時間はあと三時間ほど。


アネットは食事も喉を通らないという感じで黙って外を見つめていた。


エリザは・・・。


うん、自棄酒だな、これは。


ひたすら自分の用意した酒を呑んでいる。


レイブさんの酒に手を着けないのは少ない自制心がそうさせているんだろう。


「来るでしょうか。」


「来るんじゃないか?」


更に時間は進む。


全員無言でただ時間が流れるのに身を任せていた。


良い感じに酔っているってのもあるけどな。


そろそろ二回目の鐘が鳴る。


俺も負けかなぁと諦めかけた、その時だった。


「レイブ様、ビアンカと名乗る者が参りました。」


店の人がそう告げたと同時に二回目の鐘が鳴る。


「分かりました、ここまで案内してください。」


「ビアンカ!あぁ、神様有難う御座います!」


アネットが神様とやらに感謝をして涙を流している。


ここに呼んだって事は賭けは成立、俺の勝ちだ。


「ふぅ、ギリギリか。」


「さすがシロウ様、賭けは私の負けです。」


「では手筈どおりの金額で。」


「でも宜しいのですか?どちらにせよ私だけが儲かってしまいますが。」


「この半年のお礼と思ってください、次の半年も宜しくお願いします。」


「こちらこそ、宜しくお願い致します。」


お互いに深々と頭を下げる。


はぁ、マジでドキドキした。


賭け事なんてやっぱりするもんじゃないな。


やっぱり自分の金で好き放題するのが一番だ。


そんな事を考えながら泣きじゃくるアネットの背中を優しく撫でるのだった。

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