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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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206/1767

206.転売屋は娼婦に説教する

アネットに店を任せて外に出る。


向かうは街一番の歓楽街だ。


そういえばエリザと出会ったのもそこだったなぁ。


あの時はどこの店に入るか悩みながら二往復ぐらいしたんだっけか。


どう考えても童貞がビビってウロウロしているような構図だっただろう。


でもまぁそのおかげでエリザに出会って抱けたわけだし、結果オーライだ。


って事でここも久々だな。


真昼間だというのに意外に人が歩いている。


主に冒険者だが、そうじゃない人もいるなぁ。


接待か何かだろうか。


あ、あっちはアフター?それとも事後?


まぁ俺にはどうでもいい話だ。


歓楽街を進み、一番大きな娼館へと向かう。


『竜宮館』


竜宮城宜しく平地のそこだけは水で溢れていた。


入り口に噴水。


横にも噴水。


何なら屋根の上にも噴水。


なので上からは常に滝のように水が流れ、周囲一帯の地面を湿らせている。


何という水の無駄遣い。


でも安心してほしい、これは全て魔力によって作られた水だ。


なので地下水を大量に吸い上げて地面に穴が開くなんて言う事はありえない。


まぁ、魔石は大量に消費しているがその辺を突っ込んじゃいけない。


魔石も売り物だ。


俺が毎日回収している魔石もこういう所で使われているんだろう。


ドアの前に立つ、いかついおっちゃんが俺を見て一礼する。


「今は営業時間なのか?」


「もちろんです、シロウ様。」


「なんだ知ってるのか。」


「えぇ、レイラ様のお気に入りですから。」


「そいつはどうも。」


「まずは入ってすぐのお席でお待ちください、すぐに支配人が参ります。」


「入ってすぐね、ありがと。」


見た目いかついのにものすごい丁寧なおっちゃんだった。


開けてもらった大きな扉を抜けると・・・。


そこはまさに目にもとまらぬ美しさ、そう言わんばかりの豪華な装飾で飾られていた。


どこを見てもキラキラしている。


ぶっちゃけ目が痛いぞ。


いつもよりも多めに瞬きをしつつ言われた通りすぐそばのソファーに腰かける。


フカフカで思いっきり尻が沈んだ。


これは俗にいう人を駄目にする何とかってやつだろうか。


起き上がるのが大変だ。


「ようこそお越しくださいました、シロウ様。私、当竜宮館の支配人をしておりますタトルです。」


「どうも。」


「この度はレイラのわがままにお付き合いいただきありがとうございます。すぐにお部屋までご案内いたしますので・・・。」


「あーそれなんだが、ちょっといいか?」


なんでしょう。


と、営業スマイル百パーセントで支配人が俺を見下ろす。


いいねぇ、この笑顔。


嫌いじゃないよ。


接客業の最上級が、ここ娼館だと俺は思っている。


おもてなしの最上級。


だけどな、その最上級の一番上に君臨する女がそれを理解していないってのはどうなんだろう。


教育不足って奴なんじゃないの?


「確かにアネットの伝言を聞いて俺は呼ばれた。だが俺がここに来たのはその為じゃない。」


「ではなぜここに?」


「断りに来たんだよ。わざわざ、自分の足で歩いてな。」


そこまで言っても支配人の笑顔は崩れない。


流石だなぁ。


「それはそれは・・・。ご足労頂き申し訳ありません。」


「ご足労ついでに伝言も頼めるか?『俺に用があるなら伝言を頼まずに自分の足で会いに来い。』以上だ。」


「この間そのようにした・・・と記憶していますが。」


「アポなしで夕飯時に周りの迷惑も考えずに、だろ?たまたま俺が居たから良かったものの、外出していたらどうするつもりだったんだよ。」


「待ちます。」


「あんなデカい奴を店の前に浮かせてか?営業妨害も甚だしい、損害賠償を請求してもいいんだぞ。」


「それがご希望でしたらお支払いさせて頂きます。」


「だが、俺はそういうのが嫌いでな。直接文句を言いに来たわけだ。それとな、ついでにもう一つ伝えておいてくれ。俺を呼び出せば尻尾を振ってホイホイついてくるような男と一緒だと思っているのなら大間違いだってな。」


「・・・かしこまりました一字一句間違えない様お伝えさせて頂きます。」


よーし、言うこと言ったらすっきりしたぞ。


後は帰るだけだ。


「話が長くなって悪かったな、今日は帰るよ。」


「お送りしましょう。」


「そんなでかい街じゃないんだ、ここに来たように自分の足で帰るさ。」


「失礼を申しました。」


「あんな伝言を頼んどいて言うのもあれだが、大変だな。」


その言葉を聞いて初めて、支配人が表情を崩した。


いや、崩したのは一瞬だけでまたすぐ元に戻ったが、あれは間違いなく営業スマイルじゃない。


伝言を伝えて荒れるナンパ女を想像してしまったんだろう。


ま、俺の知ったこっちゃないがな。


「これも仕事ですので。」


「大変な仕事だと思う。あれだ、避妊薬の件はアネットが喜んでいたぞ。」


「こちらこそいい薬を卸して頂き、当館の娘たちも喜んでいます。」


「身籠るとあれだしな。」


「仕事が仕事ですから致し方ありませんが、私としても娘たちが苦しむ姿は見たくありません。」


「材料は今から探すつもりだが、出来るだけ何とかするつもりだ。微力ながら俺も手伝わせてもらう。」


「街一番の買取屋、そして行商主でもありましたね。お願いする身ではありますが、歓楽街すべての支配人が期待しております。」


そう言って深々と頭を下げる支配人。


良い人なんだろうなぁ。


なのになんであんな高飛車な女を・・・。


ま、それも商売なんだろう。


「じゃあ行くわ、伝言宜しく。」


「かしこまりました。」


根性でフカフカのソファーから起き上がり、入り口へと向かう。


その時だった。


「ちょっと!なんで帰んねん!」


上の方からそんな声が聞こえる。


ん~、気のせいだろう。


「何か聞こえるか?」


「いえ、空耳でしょう。」


「そうか、空耳か。」


この支配人、なかなか面白いじゃないか。


気に入った。


「ちょっとタトル!なんで帰すんや!」


そんな声を聴きながら二人で外に出る。


流石に外までは声は聞こえなかった。


「タトルさんだったな。」


「はい。」


「アンタとはいい仕事ができそうだ、アネットの件以外で何かできることがあったら声を掛けてくれ。」


「それはありがたい事です。何かありましたら頼りにさせて頂きます。」


右手を差し出すと営業スマイル・・・ではないスマイルで俺の手を握り返してくれた。


自分が一番と思っているあのナンパ女も、実はこの人の上で転がされているわけだ。


だから好き勝手にさせているんだろう。


手を緩め、何事も無かったかのように竜宮館を後にする。


来た時と違いとてもすがすがしい気分だ。


今日はいい酒が飲めそうだなぁ。


とかその時は思っていた。


思っていたんだ。


「ちょっと待ち!」


「・・・せっかくいい気分だったのになんだよ。」


そんな気分をぶち壊す声が後ろから聞こえる。


振り返るとナンパ女が顔を真っ赤にして仁王立ちしていた。


タトルさんは・・・。


うん、後はお願いしますみたいな顔をしている。


まったく、伝言はどうしたよ。


「それはこっちのセリフや!何でここまで来て帰るんやって聞いてんねん!」


「いや、お前に会いに来たわけじゃないし。」


「はぁ?じゃあ何しに来たんよ。」


「うちの薬師が世話になっているからな、そのお礼を言いに来ただけだ。アンタも飲んでるだろ、避妊薬。」


「あぁ、あの新しいの?」


「新しいかどうかは知らないが、効き目がいいからってわざわざ褒めてくれてな。自分の奴隷が世話になっているのに挨拶しないわけにはいかないだろ。」


「それだけ!?」


「それだけ。」


まったく、これだから自己中は嫌いなんだ。


自分の事しか考えずに相手や周りの都合なんて考えもしない。


「信じられへん、私に会いたくても会えへん男なんて山ほどおるんやで?それを棒に振るいうんか?」


「それがどうした、興味のない女に会う理由なんてないだろ。」


「興味ないて・・・アンタなぁ!」


急に間合いを詰めたと思ったら俺の胸ぐらを掴んできやがった。


そっちがその気ならこっちにも考えがある。


とはいえ、売れっ子ナンバーワンの娼婦だしそれこそ損害賠償請求されても困る。


ちらっとタトルさんの方を見ると何も言わずに頷いてくれた。


よろしい、ならば戦争だ。


「手を放せ。」


「はぁ?」


「もう一度言うぞ、手を放せ。」


「放さなかったらどうするっちゅうねん!」


「こうするんだよ!」


俺は大きく手を振り上げ、勢い良く振り下ろす。


殴られる。


咄嗟にそう思ったナンパ女は胸ぐらを掴んだまま反対の手で自分の頭をかぶった。


殴る?


そんなことするはずないだろ。


顔は止めなボディーボディー!


って事で振り下ろした手は頭と顔を通り過ぎ、男を誘うために開いた胸元に降ろされた。


ビリビリ!


と、乾いた音があたりに響く。


続いて響いたのはナンパ女の叫び声。


そう、殴ったんじゃない、破ったんだ。


来ていたドレスは胸元から綺麗に破れ、自慢の胸が露出している。


あぁ、下着は付けない派なのね。


それどころか、破れたことで肩にかかっていたテンションも緩み、するすると重力に従って落ちていく。


あっという間に全裸女の完成だ。


「ちょっと!なにすんねん!」


慌てて地面に落ちたドレスを掴み、胸元を必死に隠すナンパ女。


前隠して後ろ隠さず。


支配人と入り口のおっちゃんにはばっちり尻が見えているんだろう。


「男はちょっと媚びたら喜んで尻尾を振る、そんな風に思ってるんだろうが世の中舐めてんじゃねぇぞ。」


「舐めてへん!」


「じゃあ考えを改めろ、お前よりもいい女は山ほどいる。外見だけじゃなく中身でもそいつらと勝負できる様になったら御呼ばれしてやるよ、レイラちゃん。」


「この・・・年上に向かって!」


「じゃあタトルさん、後は任せた。」


「お任せください。」


「ちょっとタトル!あいつが行ってまうやろ!離せ、離せってば!」


タトルさんに羽交い絞めされ身動きの取れなくなったナンパ女。


あー、めんどくさ。


帰ってミラの胸とエリザの尻でリフレッシュしよ。


ちなみにアネットは二人ほどじゃないがバランスの取れた体をしている。


三人共最高の女だ。


後ろから聞こえてくる叫び声を聞き流しながら店へと戻るのだった。

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