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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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205/1767

205.転売屋は娼館におよばれする

「ちょっとシロウ何したの!?」


「なんだよ藪から棒に。」


「だって、店の外に・・・。」


「外だぁ?」


ナンパされてから二日。


久方ぶりの外を満喫した後はいつものように仕事をこなしていた。


今日も露店でがっつり稼ぎ、今日も一日頑張ったなぁと店に戻って酒に口をつけたまさにその時だ。


エリザが慌てた様子で店の中に駆け込んでくる。


仕方ないのでグラスを置いて店内から外を覗いて見てみるも特に変わった様子はない。


「何もないぞ。」


「そっから見えないのよ!」


「なんなんだよ全く・・・。」


エリザの様子がいつもと違うのは間違いない。


そのままカウンターをくぐり扉を開けて外に出る。


「やっと出てきた。」


「・・・?」


「ちょっと、どこみてるんや、こっちやこっち!」


「こっち?」


声はすれど姿は見えず。


左右を見ても姿は見えず。


じゃあ上か?


と見上げたそこには・・・。


「は?」


気の強そうな女が巨大な神輿の上でふんぞり返っていた。


しかも神輿は宙に浮いている。


少々非常識すぎやしませんかね。


そりゃエリザも驚くわ。


「ちょっと、何覗き込んでんねん!いやらしいなぁ。」


「誰だっけ。」


「レイラやレイラ!この前話したやろ!」


「あぁ、あのナンパ女な。」


「まぁそうなんやけど・・・約束通り迎えに来たで。」


「迎え?」


「そうや!覚悟しろ言うたやろ。」


いや、確かに言ったけどこんな魔法みたいなもの・・・って魔法か、ともかくこんな物で迎えに来るとは思わないだろ。


「すまないが今日は俺が飯を作る当番なんだ、明日以降にしてくれ。」


「いやいや、出迎えさせといてそれはないやろ!」


「出迎えって自分で勝手に来ただけだろ?それを恩着せがましく、いい迷惑だ。」


「め、迷惑・・・。」


「見てみろ、そんな露出狂みたいな格好して周りの人が信じられないって顔で見てるぞ。」


ナンパ女が周りを見渡すと、何事かと人が集まって来ていた。


胸元がパックリ開いた膝上のドレス。


下から見れば中身がほぼ見えている状態だ。


黒か。


「なに見てんねん!」


野次馬・・・主に男の野次馬は鼻の下を伸ばしてナンパ女を見上げている。


「いや、見るだろそんな所に居たら。」


「なんでや!なんで私が迎えに来たのに喜ばへんねん!」


「アポもとらずにしかも夕飯時に来るとか非常識すぎるだろ。」


「もうええわ!」


神輿がフワフワと高度を上げそのままどこかへと飛んで行ってしまった。


まったく、前回同様迷惑な女だ。


「ねぇシロウ、さっきの人ってレイラさんよね。」


「なんだ知ってるのか。」


「知ってるも何も冒険者で知らない人はいないでしょ。」


「女でも知ってるとは有名な娼婦なんだな。」


「気に入った男しか抱かないって有名だからね。」


「ふ~ん。」


女性にも名前が知られているって珍しいな。


変な言い方だが、男の中で有名なAV女優がいたとして、その人を女性が知っている可能性はかなり低い。


女性からしてみれば娼婦ってのはあまりよろしくない存在じゃないのだろうか。


「なんでここに来たんだろ。」


「この前露店でナンパされてな、追い返した仕返しらしい。」


「え!ナンパされたの!?」


「あぁ。だが商売の邪魔だから追い返した。」


「信じられない・・・。」


「いや、どれだけ有名人だろうが邪魔な物は邪魔だろ。今日だってこんな往来のど真ん中にあんな危ない物乗りつけて・・・。墜落したらどうするんだ。」


「あれって遺跡で見つかった移動用の魔道具でしょ。すっごい高いんだから。」


「高いからなんだってんだ。見せびらかしたいなら他所にいけよな。」


まったく、飯を作る時間が無くなるじゃないか。


まだブツブツ言っているエリザを押して家に戻り飯を作る。


うむ、今日も美味しくできたっと。


食後ミラの入れたお茶を飲みながらゆっくりしていると、エリザが思い出したように話し始める。


「それにしても龍宮館のレイラさんがねぇ。」


「綺麗と伺っておりますがいかがでしたか?」


「ちょっとしか見られなかったけどすごい美人だったわ。」


「そうか?」


「胸だって大きかったし。」


「揉み心地はミラの方が上だな。」


「お尻も・・・ってどういう事?」


「ん?」


「なんでシロウが揉み心地を知ってるのよ。」


おや?


女達の目線が随分と鋭いんだが?


「揉まされたんだよ。」


「といいますと?」


「ナンパされた時にな、ミラの方が揉み心地が良いって言ったらじゃあ確認しろと言われて無理やりな。柔らかいだけでミラの方が良いのは間違いない、自信を持っていいぞ。」


「ありがとうございます。」


「ちなみに尻はエリザの方が上だ、安心しろ。」


「それって安心していいのかしら。」


「ともかく迷惑な女であることは間違いない。まったく、面倒な。」


あの調子だとまた来そうな雰囲気だ。


出来れば次回は大人しく来て欲し・・・いやもう来なくてもいいな。


どれだけ有名か知らないが金にならないことに興味はない。


「でも、龍宮館から出ないって有名だったレイラ様がどうして外に出たんでしょう。」


「そうなのか?」


「避妊薬を良く卸しに行くんですが、お部屋から出られるのを見た事ありません。」


「出不精なんだな。」


「必要な物は全て使用人の皆さんがやってくださるそうで、ご本人は気に入ったお客さんの相手をする以外は出てこないのだとか。」


ふーん。


一応俺に金を運んでくれている訳か。


「ちなみに避妊薬って何が原料なんだ?」


「あ、それ私も聞きたい!」


「参考までに私も。」


「えっと・・・持ってきますね。」


アネットが小走りで自室へと上がっていく。


「二人もアネットの薬を飲んでいるんだったな。」


「本当は娼館でしか手に入らないんだけどね、特別に。」


「シロウ様の許可が出ましたら飲むのを止めるつもりです。」


「ん~、まぁ時期が来たらな。」


この世界に来てもうすぐ一年。


まだまだ仕事が楽しいし、稼がないといけない。


何もしなくても金が金を生むまではお預けって感じだ。


どうしても生みたいっていうならば別だがな。


「お待たせしました、これです。」


アネットが持って降りてきたのは何かの種だった。


一粒貰うとすぐにスキルが発動する。


『アプロの種。南方で採れる果物で甘みが多いのが特徴。ただし妊娠中に食べ過ぎると流産する可能性がある。最近の平均取引価格は銅貨10枚、最安値銅貨5枚、最高値銅貨17枚。最終取引日は3日前と記録されています。』


おぉう、食べすぎると流産しやすくなるのか。


そりゃ危ない。


もしかするとその性質を使って妊娠し辛くしているのだろうか。


薬の世界は奥深いなぁ。


「アプロの実・・・。食べたことはありませんが聞いたことはあります。」


「私食べたことある!」


「妊娠中に食べると流産しやすくなるんだとさ。」


「嘘!こわ!」


「そう言った食べ物は他にも多くありますから、気を付けていれば問題ありません。」


「でも食べ物に仕込まれていたら?」


「そもそもそんな相手と子供を作るなって事か、もしくはやむを得ずって事だろう。」


娼婦なんかは望まない妊娠をしてしまった時に食べたりするのかもしれない。


種であの値段って事は、実の方はもう少し高いんだろう。


「なるほどね。」


「まぁ妊娠したら気をつけろ、妊娠したくなかったらお世話になれって事だ。」


「これからもよろしくお願いします。」


「明日新しい薬を納品しに行くんですけど、ご主人様への要件をさりげなく聞いておきましょうか?」


「あぁ、そうしてくれ。」


そもそも何であんなに目をつけられているかがわからん。


そのきっかけでもつかめれば対処のしようがあるってものだ。


俺が娼館に行ったとしても教えてもらえなさそうだしな。


「かしこまりました。」


「さて、今日はもう寝るかな。」


酒も回って来たし、色々と疲れた。


「後片付けはお任せください。」


「お風呂あがったらで行くね。」


「早めに頼む、眠気がヤバい。」


「ちょっと、寝ないでよ!」


今日はエリザの番か。


どうせ尻の件を聞いてくるんだろうなぁ。


あぁ見えて結構嫉妬深い。


どれだけ自分の尻が素晴らしいかしっかりとわからせなければ。



エリザにしっかりと分からせた翌朝。


露店をミラに任せて久しぶりに店で買い取りをしていた。


そろそろお昼。


エリザはダンジョンだし、アネットは昨日言っていた通り竜宮館に納品しに行っている。


そろそろ戻ってくると思うんだが・・・。


「ただいま戻りました。」


「おかえり、どうだった。」


「いいお話と悪いお話があるのですが・・・。」


「あー・・・。」


帰って来たばかりのアネットが申し訳なさそうな顔をしながら申し出てくる。


どんな話かもう想像がついてしまうんだが、聞かざるを得ないだろう。


「じゃあいい話から聞こうか。」


悪い話は想像がつくしな。


「いいお話は、街の娼館組合から注文を頂戴しました。これからは竜宮館だけでなく全ての娼館に避妊薬を卸すことになります。」


「すごいじゃないか。」


「その分材料の手配が大変なので、商店連合に問い合わせてみて難しい場合はハーシェ様に手配してもらうつもりです。」


「わかった、進展があったらおしえてくれ。」


「それで、悪い方なんですけど・・・。」


「呼び出しだろ。」


「はい。レイラ様がご主人様に来るようにと・・・。」


これは一応アポイントになるんだろうか。


ここに来てほしい。


もちろんそれは分かるが、やっぱり世間知らずだな。


「話は分かった。だが呼ぶなら自分で来いと伝えて来てくれ、いや、俺から言う方がいいか。」


「わざわざ出向いてお会いにならないんですか?」


「その方が面白いだろ。」


いくら有名人だからって何とでもなると思うな。


世の中には俺みたいにへその曲がったひねくれものがいるんだ。


それを理解してもらわないと。


俺の答えを聞いて苦笑いを浮かべるアネットをよそに、どうやって文句を言ってやろうかと考えるのだった。


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