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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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204/1767

204.転売屋はナンパされる

自由を勝ち取って二日。


シモーヌはちゃんと約束を守ってくれているようだ。


何者かの視線は感じるものの、その視線に殺意はないし感じる回数も少なくなった。


好きな時に出歩けるというのは素晴らしい。


朝の日課にはエリザが同行するものの、その後は皆自由に過ごしている。


還年祭りが近いからか、買取の依頼も多い。


買い取ったら買い取った分だけ売らないといけないので、露店の方も大忙しだ。


「毎度あり。」


本日四人目のお客が帰っていく。


まだ昼前だというのになかなかの集客だな。


「儲かってるなぁ。」


「久々だからじゃないか?ほら、この間まで引きこもっていたから。」


「この前はびっくりしたぞ。まさか嫁さんの顔で来るとは思わなかった。」


「嫁、嫌いなんだな。」


「嫌いっていうか、怖いんだよ。」


「心中お察しするよ。」


「嫁の顔ならいいじゃないか、私なんて死んだ旦那だよ?」


「嫌いだったのか?」


「私とミラを置いて若い女の所に走った旦那を嫌いにならない理由があるかい?」


そりゃ仕方ない。


お世話になったお礼をしに行ったはずなのに、イヤな思いさせてしまったなぁ。


「まぁ、おかげで夢の中でボコボコに出来たからそれでいいよ。」


「ボコボコって・・・。」


「それにしてもこの前のお歳暮とやらはなかなか良かったね。」


「そりゃよかった。」


「お世話になった人に感謝の気持ちを表すんだろ?また流行るんじゃないかい?」


「本来はその年の最後だから、流行るとしても次の冬だな。」


「まさに感謝祭ってか?」


「誰が上手い事言えと。」


そんな感じでおっちゃんおばちゃんと話していると、正面から向かってくる人影が一つ。


あっという間に俺の前に立つと、露骨に頭の先からつま先まで目線を動かした。


なんだろう、最近こういう気の強い系の女に縁があるなぁ。


こっちの世界では珍しい真っ黒い髪。


ショートカット?


いやそれ以上短い気がする、だって完全に耳露出してるし。


「アンタが店主?」


「そうだが、何の用だ?」


「お客に決まってるやんか。」


「そりゃ失礼した、それなら俺じゃなくて商品を見て行ってくれ。」


「面白いなぁ、露骨に見られたのに怒らないんや。」


「怒る理由がないからな。男を探してるんなら俺なんかじゃなくてもう少し顔のいいやつを探したほうがいいんじゃないか?。」


「あはは。それはつまり自分も多少は顔がいいって思ってるって事?」


「別にそういうわけじゃないさ。だが女に嫌われない程度の清潔さはあると思ってる、そうじゃないと客商売なんてできないだろ。」


不潔にしていて物が売れるはずがない。


最低限の身なりを整えて人の前に立つ、これが基本だと思うんだが・・・。


「安心しろ、兄ちゃんはほどほどに顔はいいぞ。」


「顔()ってなんだよ、顔()って。」


「中身はねぇ、ちょっとひねくれてるから。」


「余計なお世話だよ。」


「普通の男なんておもろないやん?アンタぐらい変な方が張り合いがあっていいわ。」


「そりゃどうも。で、いったい何の用なんだ?」


「私と付き合わへん?」


「断る。」


「えぇ!こんな美人で可愛いのに?」


さっき聞かれたことをそのまま返してやろうか。


そんな事を思ってしまう。


まったく、何なんだこの女は。


バリバリの関西弁だが、こっちの人間なんだろう。


親近感は確かにあるが・・・やぱりこの手のタイプは好みじゃない。


「自分で言うな自分で。」


「でも可愛いやろ?」


「否定はしないな。」


「も~、思ってるんやったらはっきり言えばいいのに。恥ずかしがり屋なんやから。」


「そういうんじゃないんだが・・・。ともかく俺には仕事がある、ナンパなら他所に行ってくれ。」


「本気で言ってるん?」


「本気に決まってるだろ。ほら、他の客の迷惑だ、さっさと帰れ。」


迷惑女を追い払って後ろで様子を窺っていた冒険者を呼び寄せる。


まったく、仕事の邪魔だなぁ。


「いらっしゃい、何が欲しいんだ?」


そんな感じで次の客を捌き、これまたすぐにやって来た客を捌く。


あっという間に昼が過ぎ、気づけばおやつ時だ。


飯を食う間もなく仕事を続けて、ぶっちゃけしんどい。


関西弁で言うとやってられんって感じだろうか。


「兄ちゃん、大盛況だな。」


「もうしんどい、帰りたい。」


「売れてるだけ良いじゃないか、ほらこれでもお飲み。」


「助かる。」


「干し肉ならあるぞ、食うか?」


「今なら何でも食える、貰うよ。」


二人からおやつ?を分けてもらい一息つく。


あぁ忙しかった。


「還年祭前とはいえ、購買意欲が凄いな。」


「みんな楽しみにしてるからなぁ、お貴族様はオークションなんだろうけど。」


「アンタも出品するんだろ?」


「あぁ、8月に出さなかったから今回は出すつもりだ。」


「いいねぇ、羽振りが良くて。」


「おっちゃんだって儲かってるらしいじゃないか。行商から色々と聞いてるぞ。」


ハーシェさんの管理している行商は隣町だけじゃなく近隣の村にも手を伸ばし始めた。


その中におっちゃんの村があったんだが、人気の為一見さんでは買い付けは出来なかったらしい。


「兄ちゃんの知り合いなら売ったんだが、流石に量が多いとちょっとな。」


「儲かってるようで何よりだ。まぁ、俺はおっちゃんから買えるし別に気にしてないよ。」


「すまんな。」


「いいねぇ、儲かってる所は。」


「おばちゃんだって、この間仕入れた調理器具が大当たりしたってミラが言ってたぞ。」


「一発当たっただけじゃ儲けになんないよ。ま、私の実力さね。」


冷静なフリしてどや顔をするっていうね。


三人で笑い合っていると、またあの女がまっすぐこちらに向かってくるのが見えた。


「いらっしゃい、今度は買い物してくれるんだよな?」


「冒険者相手の商売でやろ?私が買う物なんてないやんか、用があるのはアンタだけ。」


「残念ながら俺は売り物じゃないんだ。」


「えぇ、こんな美人とお茶もしてくれへんの?」


「生憎女には困ってなくてね。」


「おぉ、言うなぁ。」


「うちのミラがいるんだ、そりゃそうだろう。」


おばちゃんの言葉を聞いた途端、その女の顔が険しくなった。


「なによ、私より可愛いっていうの?」


「顔はアンタの方が上だが、中身は間違いなくミラの方がいいな。」


「当然さ。」


「胸も?」


「胸も尻もだ。」


「触ってないのに何でわかるのよ。」


「いや、触ってないのにって。」


「触って確かめてからそういうこと言ってくれへん?」


そう言ったかと思うと俺の手を取り無理やり自分の胸にもっていく。


強引に押し付けられた感触は・・・。


「どう?」


「大きすぎるってのも考え物だな。」


「ちょっと、どういうことよ!」


「柔らかいのは確かだが、柔らかすぎてなんていうか・・・。」


「わかるぞ、張りだろ?」


「それそれ!流石おっちゃんわかってるなぁ。」


「はぁ、これだから男ってやつは。」


横のおばちゃんが何とも言えない反応をしているが、気にしないでおこう。


それが例え奴隷の母親でもだ。


「むきーーー!」


「お、怒ったか?」


「当たり前やん!わたしを誰やと思ってるん?」


「知らん。」


「え?」


「名前も知らないのに誰かと言われても返答に困る。」


「嘘やん、本気で言うてる?」


「あぁ。」


「アンタ、この街の人間やんな?」


「そうだ。店も持ってるぞ。」


「何で私のこと知らんねん!」


だから知らないもんは知らないと何度言えばわかってもらえるんだろうか。


そもそもナンパってもんはもっとスマートにやるもので、それが逆ナンパでも相手を不快にさせるのはよろしくない。


自分がされて嫌なことを相手にしてはいけないって習わなかっただろうか。


「さぁなぁ・・・。」


「ちょっと貴方!」


また声を荒げたかと思ったら、今度は横で俺達のやり取りを見ていた見知らぬ男の方を向き声をかける。


「は、はい!」


「私のこと知ってる?」


「し、知ってます。」


「ほら~!」


「いや、ほらって言われても。おっちゃん知ってるか?」


「俺はこの街の人間じゃないからなぁ。」


駄目だ、使い物にならねぇ。


「貴方は?」


「知ってます!」


「そこ!」


「もちろん知ってます。」


「ほら!周りの人みんな知ってるのになのに何で知らんねん!」


「興味ないからじゃないか?」


っと、本音が出てしまった。


いかんいかん。


「・・・女に興味ない?」


「いいや?女は好きだ、抱くのもな。」


「じゃあ!」


「ぶっちゃけ、自分の女で満足してるからなぁ。」


そこが一番のポイントだろう。


抱きたかったら何時でも抱ける、そんな夢のような状況にあると他の女に興味が無くなってしまう。


もちろん好みの女は別だが、さっきも言ったようにそうじゃないんだよな。


「で、ちなみに誰なんだ?」


だが、このままではらちが明かないのでさっき応えていた男に俺が聞いてみる。


「レ、レイラさんです!」


「知らんなぁ。」


「嘘やん?年間ナンバーワンなんやで!?」


「何のナンバーワンなんだ?」


「娼館にきまってるやんか。私に声を掛けられて喜ばん男がいるなんて・・・私は信じへん。」


信じないって言われてもなぁ。


俺は頭の中で何人か思い浮かべてみる。


うん、全員興味ないって言いそうだ。


っていうか言うね。


「思い浮かぶだけで三人、喜ばない男を知ってるぞ。」


「そんなに!?」


「俺を入れて四人か。残念だったなぁ。」


「そんな・・・そんなこと・・・。」


お?


急に静かになったぞ。


やっと納得してくれ・・・。


「アンタ名前は!」


「シロウだ。」


「覚えたでな!次に会った時は覚悟するんやで!」


そう言うとナンパ女は去って行った。


全く人騒がせな。


その時はそう思っていたのだが・・・。

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