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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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167.転売屋は闘技大会の準備をする

闘技大会が近づいてきた。


近づいてきたどころではない。


あと五日後に迫っている。


迫っているにもかかわらず、何故俺はこんなことをしているんだろうか。


「はい、次は参加者のリストをアナスタシア様の所にもっていって!」


「わかりました!」


「会場設営どうなってる?」


「概ね順調です。」


「概ねじゃ困るの、正確に伝えて。」


「申し訳ありません、現在半日の遅れを持って進行しています。」


目の前でいつもよりも気性の激しい羊男の嫁が指示を出している。


まるで羊男が乗り移ったかのような指示の的確さ。


あの旦那有りてこの妻有りって感じだ。


いやーすごい。


ギルドの屈強な男どもが顎で使われている。


ちなみにここは冒険者ギルド、その奥にある巨大会議室内だ。


「原因は?」


「資材不足です。主に石材が不足しています。」


「それはここじゃどうにもならないのよねぇ・・・。他は?」


「他は特に問題ありません。」


「分かったわ、とりあえず出来る限り作業を進めて。」


「かしこまりました!」


ニアの指示を受けてまた一人、屈強な男が会議室を出ていく。


で、なんで俺がここにいるんだろうか。


「ごめんなさいバタバタしてて。」


「それは構わないんだが・・・。」


「あ、エリザお帰り。ちょうどいい所に戻ってきてくれたわ。」


事情を聴こうと思ったらエリザが会議室に入ってきた。


心なしか疲れの色が濃い。


「も、もう何もしないわよ。」


「別にまだ何も言ってないじゃない。」


「だって、戻ってきた傍からあれが無いこれが無いって言うんだもん。」


「その分依頼料は弾んでるでしょ?」


「私、お金よりも休みが欲しい。」


「だそうだけど、シロウさんどうする?」


「俺が決めるのか?」


「シロウ助けてよぉ、何でもするから~。」


()()エリザが悲鳴を上げるなんてよっぽどだろう。


最近家に戻ってこないと思ったらこんなことになっていたのか。


「次終わったらな。」


「シロウの意地悪!」


「うふふ、じゃあ次は中層でブラッドベリーの採取お願いね。」


「戻って来たらヒーヒー言わせてやるんだから。」


「おぅ、かかってこい。」


文句を言いながら再び会議室を出ていくエリザ。


次が終われば休める、そう思えばいいのに。


「で、なんで俺はここにいるんだ?」


「そりゃその時が来た時の為よ。」


「その時?」


「今はまだみたいだけど、絶対にその時は来るの。」


「よくわからんが用が無いのなら店に戻りたいんだが?」


「だ~め。」


駄目って言われてもなぁ。


仕入れた武器をさっさと売っぱらってしまいたいんだが。


「ならせめてここで仕事(商売)をさせてくれ。」


「ん~、それならいいかな。」


「それじゃあ一度店に戻る、すぐ戻るからそれぐらいは許してくれ。」


「三十分以内に戻って来てね~。」


一先ずは解放してくれるようだ。


まったく、朝一番で呼び出されたかと思ったらなぜか会議室に缶詰めにされてしまった。


その時の為にとは言うが、いったい何が起きるというんだろうか。


「ただいま。」


「おかえりなさいませ、シロウ様。」


「変わりないか?」


「はい。買い取りが立て込みましたが、全て完了しております。引換券の残りは後6枚です。」


「今日は随分とペースが早いな。」


「残り五日ですから、皆さん気合が入っているんだと思います。」


「いい感じの品は?」


「残念ながら。」


あの日から連日買取を続けているが当りはわずか3件しかない。


この短期間でむしろ多い方なのかもしれないが、ごみを買い取っても売るんが面倒なだけなんだけどなぁ。


「呼び出しの理由は何だったんですか?」


「わからん。その時が来るまで待機してほしいんだとさ。」


「その時、ですか。」


「よくわからんがまた向こうに行かなきゃならない。せっかくだから向こうで商売してくる。」


「それが良いと思います。相手は冒険者ばかりですし、ちょうどいい装備も増えています。」


「倉庫の右側だったか?」


「入ってすぐ右の棚二つ分です。」


「わかった、リアカー借りていくぞ。」


「お気をつけて。」


普段は露店で売買しているが、今日はギルド内での販売を許可してもらえたからな。


またとない機会だ、しっかり商売するとしよう。


リアカーに冒険者向けの装備を大量に詰めて冒険者ギルドへと戻る。


えぇっと、どこでやるかな。


「あ、シロウ様お戻りになられました!」


「ただいま・・・ってなんだ?」


「ニアさんがお待ちです、荷物はそのままで会議室へ。」


「いや、そのままって。」


「いいから早く、早くお願いします!」


受付嬢に背中を押され会議室へと戻される。


そこにいたのは険しい顔をするニアとその旦那だった。


「邪魔か?」


「いえ、ちょうどいい時に戻ってきてくださいました。」


てっきり夫婦水入らずを邪魔したかと思ったらそうでもないらしい。


俺は邪魔って言ってもらった方がありがたいんだがなぁ。


「シロウさん、緊急事態です。」


「そりゃ大変だな。」


「このままでは闘技大会の開催すら危ぶまれる状況です。」


「だから言ったじゃないですか、目論見が甘いって。」


「それはアナスタシア様に言ってください。あの女豹のように経費を削減すると言い出したのはあの人なんですから。」


「まったく、毎年同じだけ経費が掛かっているんだから用意すればいいのに。後出しの方が結局高くつくってわかっていないのかしら。」


「今年はシロウさんが居るから何とかなる、そんな風に思っていたのかもしれませんよ。」


なんだかよくわからないが、そこに俺が関係する理由がもっとわからない。


「で、何がどうなってるんだ?」


「実は闘技大会で使う武具が揃っていないんです。」


「いや、揃ってないっておかしいだろ。」


「正確に言えば鋭意製作中ではあるのですが、マートンさんがあと五日休まず働いてもそろうかどうか・・・。」


「どう考えても間に合わないよな、それ。」


「だから緊急事態なんですってば。」


なんで俺が怒られないといけないんだろうか。


「ちゃんと計画通り準備してたんだろ?」


「それがですね、先程の話の通りアナスタシア様が経費削減を急に掲げまして。それによって作業効率が去年より低下してしまい、結果このような事に。」


「何度も進捗を確認したんですけど、サボってた職人が余りにも多くて確認しきれなかったみたいです。」


「どうしましょうか。」


「いや、どうしましょうかじゃないだろ。」


由々しき事態だ。


このままでは何のためにエリザ用の装備を買い集め、ルティエに装備を作らせているかわからない。


中止にでもなったらかなりの損失になってしまう。


ここは何としてでも開催してもらわねば。


俺はエリザに全賭けして大儲けする予定なんだ。


「そこで、シロウさんにお願いがあります!」


「隣町に行って武具を用意するようお願いしてきてもらえませんか?」


「はぁ?」


「私達は大会の準備で手一杯ですし、他の人を行かせるには荷が重すぎます。」


「その点シロウさんでしたら隣町にも顔がききますし・・・。」


「あの女豹が間違いなく噛みついてくるぞ。」


「それを含めてシロウさんにお願いするんです。成功報酬は弾みますから、この通りお願いします!」


その時って、この事だったのか。


っていうかどう考えてもこうなるってわかって放置してたよな。


それこそ間に合えば問題ないがそうでないのなら俺を使って手配すればいい。


そんな気持ちでいたに違いない。


「断る。」


「そこを何とか!」


「初めから依頼されたのならともかく、予防線のように使われるのは癪に障る。だから手配は自分たちでやれ。」


「そんなぁ。」


「恨むんなら見込みの甘かった自分達を恨むんだな。どうせこうなるってわかって放置してたんだろ?」


「そんなことありません!我々は万全の状況で挑むべく手を尽くしました。」


「で、結果がこれと。」


万全を尽くして手が足りないんじゃ見込みが甘かったと自分で言っているのと同じだ。


「そこを何とか、お願い出来ませんか。」


「あの人が関わるとろくなことが無い、加えて隣町に行きたくない理由はお前もわかるだろ?」


「私だって行きたくありませんよ。」


「だが、お前は俺に行かせたい。」


「はい。シロウ様なら必ずや成し遂げて下さると思っています。」


口だけなのは分かっている。


俺じゃなくても出来るやつはいるだろう。


だが、あえて俺を指名してきてくれている。


くわえて成功報酬も出すと言っているわけだしそれを無碍にするのはあれだろうか。


いや、それこそがこいつらの策略だ。


俺の甘さにつけこんで、仕事を押し付けようとしているに違いない。


その策には嵌ってやらないぞ・・・。


「金貨3枚。加えて、闘技大会の一番いい席を三人分ご準備しましょう。」


「他には?」


「そうですね・・・。11月に予定されている星空会に使う材料について、仕入れ先をまだ決めかねております。」


「及第点だがそれで手を打つか。」


「では!」


「エリザの晴れ舞台を一番いい席で見せてくれるってのは悪くない提案だった。仕方ない、働いてやるよ。」


「「ありがとうございます!」」


アイツも頑張っているんだし、俺もやらない理由はない。


仕方ないやるだけやってやろう。

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