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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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154.転売屋は断食をする

「やばいわ。」


「実は私もなんです。」


朝、朝食を摂りに下に降りるとエリザとアネットが悲壮な顔をしていた。


ミラはいつもと変わらず俺の気配を察して香茶を入れてくれている。


一体何事だろうか。


「おはよう、どうかしたのか?」


「え、ううん、なんでもない。」


「なんでもありません、心配ありませんから。」


「体調が悪いのなら・・・。」


「そ、そう言うのじゃないの。」


「そうか。」


ようわからんが生理や体調不良でないのなら別に構わない。


無理をされるのは困るがそうでないのなら好きにしてくれ。


「シロウ様、どうぞ。」


「ありがとう。」


「ミルクは必要ですか?」


「そうだな、たまにはもらおうか。」


せっかく昨日おっちゃんが新鮮なミルクをくれたんだし、飲まない理由はない。


今度大量にもらってまたバターを作るんだとエリザが意気込んでいたっけ。


蟻砂糖は・・・あれから随分と研究されたようで今ではある程度収穫量をコントロールできるようになっている。


やり方は簡単だ。


サッカロンの近くに巣を作るまで蟻を倒し続け、予定通りの場所に巣を作ったらそこから様子見。


蟻砂糖に変化したのを確認してから一定数のみ狩る方法にシフトする。


そうすることで枯渇することなく安定した供給を確保できるというわけだ。


今の所有力な巣が二つほどあるので、俺の思惑よりも安く供給されるようになってしまった。


まぁ、それでも当初の二倍以上の値段だし儲けはしっかりと出ている。


まさに蟻様様ってやつだな。


うん、ミルクを入れた香茶もなかなかだ。


「シロウ様はパンはいくつ食べますか?」


「一つ、いや二つ貰おう。」


「エリザ様とアネットはどうしますか?」


「私はもういいわ。」


「私も遠慮します。」


「なんだいつもはその二倍食べる癖に、随分と少食だな。」


エリザはともかくアネットも隠れた大食い選手だ。


食べ始めたら延々と食べ続ける。


動きの少ない仕事と思われがちの薬師だが、実際はかなりの体力と気力を使う。


頭を使っても腹は減るし、案外素材をすりつぶしたり加工したりするのは力仕事なのだ。


結果、今では俺よりも筋力があるっていうね。


脱がせた時の上腕二頭筋は中々見ごたえがある。


その二人が食べないなんて・・・。


やっぱり体調でも悪いんじゃないだろうか。


「お二人は体重を気にしておられるようです。」


「ちょっとミラ!」


「ミラ様!」


「別にいいではありませんか。シロウ様に無用な心配をさせるぐらいなら状況をご説明しておいた方がいいと思います。」


「なるほど、体重か。そりゃ大問題・・・なのか?」


「問題も問題、大問題よ!」


「そうです!2kgも増えちゃったんですよ!」


たったそれぐらいで大袈裟だな・・・とは口が裂けても言えない。


女に体重の話は禁忌とされている。


これはどの世界でも同じ事だ。


「そう言えば最近いつも以上に食べてたもんな。」


「うぅ・・・。だって何を食べても美味しいんだもん。」


「涼しくもなりましたしつい、食事が進んでしまって。」


「芋に肉にキノコ。キノコは別にいいのか?」


「食べ過ぎれば同じことです。」


凹む二人と対照的に涼しい顔をするミラ。


「ミラは大丈夫なのか?」


「おかげ様で現状を維持させていただいております。」


「それは何よりだ。」


「そういえばシロウも増えてないわよね。」


「そうですね、ご主人様も同じだけ食べているはずなんですけど。」


「俺か?」


そういえば最近体重計に乗ってなかったな。


というか測る習慣がない。


若返ったおかげか新陳代謝が盛んになって、食べても食べても太らないんだよなぁ。


昔はラーメン一杯ですぐ腹に肉がついたものだ。


その点今の俺は・・・。


ちょっと心配になり腹の肉をつまんでみる。


こう見えて腹筋は四つに割れている。


日々の鍛錬・・・ではなく畑仕事をするようになってからだろう。


そのはずなんだが。


「おや?」


「どうしました?」


「肉がある。」


「そりゃあるでしょ。」


肌着をめくり腹を触ってみる。


普段なら割れた腹筋を感じれるのだが、何故か柔らかい何かがそれを邪魔していた。


まさか・・・。


これは脂肪?


「ちょっと体重計に乗って来る。」


食事を保留し、二階のふろ場に置いてある体重計にのる。


デジタルではなくアナログのシンプルなあれだ。


いつもは目盛りが65ぐらいの所で止まるはずが、今日はそれを3目盛り程過ぎていた。


という事は・・・。


「どうだった?」


「三キロ増って所か。」


「ほら!シロウだって増えてるじゃない!」


鬼の首を取ったようにエリザが指をさしてくる。


いや、俺は増えたからと言って気にはならないんだけども。


「ミラ、どう思う?」


「あまり細すぎるよりも今ぐらいの方がよろしいかと思います。」


「だよな。」


「だめよ!」


ならいいかと思った俺にエリザが鋭いツッコミを入れる。


いや、何でダメなんだよ。


「今ついた肉は冬まで残るのよ!冬まで残った肉は体になじみ春になっても落とせないの。落とすなら今よ!」


「そうです!今減らさないと取り返しのつかないことになります!」


アネットまでその意見に賛同している。


いや、俺の体なんだし別にいいじゃないか。


また体を動かせば3キロぐらいすぐに減らせるだろう。


40代の俺じゃ無理だっただろうが、今の俺は20代。


問題なく減らせる・・・はずだ。


そう思いながらも、つい自分の腹を掴んでしまう。


折角腹筋がついてきたのに。


そんな気も確かにあるんだ。


「私はこのままでもいいと思いますが、シロウ様が気になるのであればお食事を減らしましょうか?」


「うーむ、減らすのか。」


「それとも別の方法もありますが・・・。」


「というと?」


「断食です。」


断食?


某宗教が定期的にやってたあれか?


確か昼間食べないで朝と夜だけ食べるっていう奴・・・だった気がする。


「正確には日が暮れてからの食事を控える方法です。」


「なるほど。」


「朝昼は活動していますので問題ありませんが、夜は寝るだけですので過度の食事は体重に直接関係します。ですので、夕刻までに食事を終わらせ、それ以降は朝まで何も食べないようにするのです。」


「確かに理に適っているな。」


「え、じゃあお酒は?」


「もちろん禁止です。飲んでいいのは水だけになります、それか砂糖抜きの香茶ですね。」


「そんなぁぁぁぁぁ!」


エリザが嘆きの声を上げる。


「せめて何か口に入れないと口寂しくて・・・。」


「そう言う方には干物がよろしいかと。干し肉は塩が多いので、出来るだけ天日で乾燥させたものを噛み続けると満腹感も得られます。カムカムの実などは飲み込みにくく歯ごたえもいいのでお勧めですよ。」


そんな便利な物があるのか。


つい口寂しくて何かを食べるぐらいならそれを噛めばいいと。


ガムと同じだな。


「良く知ってるな。」


「実は昔試したことがあるのです。恥ずかしながら、子供の時はかなり太っていまして。」


「えぇ!見えない!」


「ミラ様が太って?」


「母の食事が美味しくてつい食べ過ぎてしまったのです。これはマズイと思い、断食をはじめ今の体型に落ち着きました。」


「つまり成功例が目の前にあるわけだな。」


「お願い!私達にも教えて!」


「お願いしますミラ様!」


神に祈る様にふたりが膝をつき手を組んでミラをあがめている。


中々に面白い光景だ。


「わかりました。では早速本日より取り掛かりましょう。朝昼しっかり食べておかないと夜までもちませんからね。」


「わかった!」


「私もいっぱい食べます!」


「いや、食べ過ぎは逆効果だろ。」


「シロウは黙ってて!」


まぁ好きにすればいいさ。


もう一度腹を触り増えた脂肪を確認する。


最近ミラが上に乗りたがるのはそういう事だったのか。


なるほどな。


そんな事を考えているとミラが鋭い視線をこちらに向けて来る。


と同時に、人差し指を口に当てた。


このやり方は二人には秘密なのか。


ま、俺は俺で気持ちが良いので何も文句はないけどな。


たらふく食べて今日はしっかり体を動かすとしよう。


そして夜はミラの言いつけを守り何も食べずに早く寝る。


んで、翌朝また食べると。


つまり健康的な生活をしていれば痩せるというわけだ。


ただ単に暴飲暴食しなければいいだけ。


それに二人は気づいているのかそれとも見ないふりをしているのか。


「そんじゃま俺ももう一枚貰うかな。」


「おかわり!」


「私もおかわりです!」


「いや、だから食い過ぎだって。」


その後二人のダイエットが成功したかどうかはお察しの通りだ。


俺は見事一週間で体重を戻し、いつもの腹筋が戻って来た。


それどころか筋肉も少し増えた気がする。


別に、マッチョになりたいわけではないので現状維持を心掛けるとしよう。


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