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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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14.転売屋は店員を確保する

「来たわよ。」


「よくわかったな、俺がここにいるって。」


「リンカちゃんに聞いたらここだろうってね。人を呼び出しておいて不在だなんていい度胸じゃない。」


「仕方ないだろ、準備で忙しいんだから。」


エリザが自分を買い戻した翌日、その本人が不満そうな顔で露天までやって来た。


どうやらまだ信じてもらえていないようだ。


それとも笑った事をまだ根に持っているんだろうか。


「それで、私に何をさせるつもりなのかしら。」


「昨日言ったとおりだ、仕事を手伝ってほしいんだよ。」


「仕事ってそれを売るの?」


「それ以外に何がある?」


俺の前に広げられているのは大量の道具たち。


この間仕入れたものを含めて大小20程の商品が茣蓙の上に並べられている。


今回用意したのは主に冒険者用の道具や装備達、これならエリザでも販売する事が出来る・・・はずだ。


「私商売なんてしたことないんだけど。」


「別に誰でもできるさ、値札に書いてある代金を貰って商品を渡すだけだ。」


「さすがに商品説明ぐらいいるでしょ。」


「それは今から覚えればいい、簡単だろ?」


「簡単って・・・。」


並べられた品々を見てエリザの頬が引きつっていく。


おやおや、これはまさか?


「どうした?」


「そもそも私、計算できないわよ。」


マジか。


まさかそこから?


いや、確かに誰もが読み書き計算できるって方がおかしいのかもしれないけど、それでも冒険者なんだったらそれぐらいできるものなんじゃないのか?


むしろそれが出来なくて今までどうやってここまで来た?


「冒険に出るにしても準備がいるだろ、そう言った時はどうしていたんだ?」


「それは仲間がやってくれていたから。」


「つまり戦うしか能がないわけだな。」


「そうだけど、もうちょっと言い方ってものがあるじゃない?」


むしろそれしか言い方はないと思うんだが、他に言い方があるのなら誰か教えてくれ。


「店員として使えると思ったが、まぁいいか。お金位はわかるだろ?」


「当たり前じゃない、子供じゃないんだから!」


「それなら十分だ。計算については見て覚えろ、別に難しい事をするわけじゃない数えて渡す、それだけだ。」


「・・・これから一人でやって行かないといけないわけだし必要な事なのよね。」


「そういう事だ。お前は一人でやっていく術を覚え、俺は人材不足が解決できる。」


一石二鳥という奴だ。


正確に言えばもう一つあるから一石三鳥いや四鳥なんだけどな。


「でも、それと装備とどう関係があるの?」


「お前が商品を一つ売る度に代金の5%を手間賃として支払おう。それとは別に日当として銀貨を1枚支払ってやる。」


「え!そんなに!?」


「ここにある品はそれなりに単価が高い、しっかり売れよ、売れば売るだけ冒険に戻るのが早くなるぞ。」


因みに日当は三日月亭の宿代と同じだ。


俺が出すと言えば断られるのは分かっているからな、日当という形を取ればエリザの事だから疑いなく貰うだろう。


俺の計画から考えれば手間賃の5%は正直痛い。


だが、仕入れと販売を同時にこなせるようになれば販売金額は倍になるので結果としてプラスに転じる。


計算できないのは計算外だが・・・って誰が上手いこと言えと。


ともかく計算できないのなら教えればいい。


幸い単体販売なので四則演算全てを教える必要はないからすぐに出来るようになるだろう。


「ねぇ、なんでそこまでしてくれるの?」


とりあえずこちら側に座らせ商品の説明をしているとふとエリザが呟いた。


「そうだな、良い女だったからだ。」


「それだけでここまでする?」


「男ってのは案外単純なんだよ。」


「ねぇ、私に惚れたの?」


「馬鹿言え、出会って二日だぞ?」


「それはそれで傷つくんだけど・・・。」


身体はごついのにメンタルは随分と弱いんだな。


でもナヨナヨするような性格ではなさそうだからそう言う点では好ましいと言えるだろう。


それに抱き心地が良かったのは本当だ。


処女の割にという言い方をすると怒られるが、経験を積めばよりよくなる。


これも俺の勘だが、こっちの勘は結構当たるんだ。


「あくまでも貸しを返してもらうためだよ。お前が冒険者に戻れば金が戻って来る。それに加えて今後お前が何か珍しい物を手に入れて戻って来れば俺が買い叩いても文句を言えない。悪い男に捕まったな、俺はホルトよりもがめついぞ。」


「別にいいわよ、アンタだったら。」


「なんだ惚れたのか?」


「そうじゃない男に体を預けたりしないわよ。」


「やめとけ、碌な男じゃない。」


「それは私が決める事よ。」


なにが楽しくて俺みたいな男に惚れるんだか。


どうせ一時の気の迷いだ、命を助けられてそう感じてるだけだろう。


「さぁ、無駄話は終わりだ。商品は完璧に覚えろよ、使い慣れた道具なんだからそれぐらいはできるだろ。」


「まあね。でもこれだけの品、どうやって集めたのよ。」


「企業秘密さ。」


少しずつだが目の前を通る人が増えてきた。


最近よく利用するのは大通りから入ってすぐの市場のメインストリート・・・の端の方。


この前のように買い取りをすることはないので一面だけあれば十分だ。


お隣は日用品のお店、反対側は保存食の店。


両隣とも固定でこの場所を確保しているようで、何度か店を出しているうちに顔なじみになった。


保存食は冒険者にも縁のあるものだし、日用品は一般の主婦が買いに来る。


今日は冒険者よりの道具がメインだが日用品側には主婦が喜びそうな品を置いていくと一緒になって売れるかもしれない。


「それじゃあ次だ。」


「あら、いい剣ね。銅製だけど切れ味よさそう。」


「よくわかるな。」


「これもまたすごい奴なんでしょ?」


並べてある商品を一つずつ確認しながらエリザに教え込んでいく。


今手に取ったのは一見ただの銅の剣。


だが、付与されている効果が中々だ。


『銅の剣。一般的な銅の剣、初心者冒険者や一般市民が使用するありふれた物。切れ味増強の効果が付与されている。最近の平均取引価格は銀貨1枚、最安値が銅貨50枚、最高値は銀貨20枚、最終取引日は昨日と記録されています。』


「切れ味増強の効果が付与されている。使用していないからわからないが、それなりに切れるらしいな。」


「隕鉄とかに付与されていたらかなりの上物になったんでしょうけど、それでもこれなら駆け出しには十分使える装備ね。」


「そんなに良い効果なのか?」


「ただ鉄を叩いたような鈍らでもこの効果がついていたら常に切れ味を維持できるわ。整備不要と考えれば最高ね。」


「そうか、ならもう少し値上げしても問題ないかもな。」


「銀貨10枚でしょ?駆け出しからしてみれば十分高価だわ。」


「だがそれで命が助かるのなら安いものだろ。」


戦いの最中に切れ味が悪くなり、戦いが長引けばそれだけ命の危険が上がる。


いつでもどこでも整備できるわけでもないだろうから、そういった不安を解消できると思えば安いと思うんだけどなぁ。


「それなら安い剣を何本か持っていくわ。壊れたら捨てればいいんだし。」


「だがそうすれば荷物が重くなるぞ。」


「初心者なんだからそこまで深く潜らないわよ。」


「そうか、そういう考えもあるのか。」


冒険者自身の声というのは非常に参考になるな。


俺は大丈夫と思ってもそれはあくまでも素人の考えだ。


餅は餅屋、その道のプロに聞くのが一番だな。


そういう意味ではエリザに来てもらったのはやはり正解だったと言えるだろう。


せっかくなので本職のアドバイスを受けながら値段の改定をすることにした。


主に値下がりの方に変更が多かったが、時々それを上回るほどの値上げをする品もあった。


相場的には価値の低いものでも、冒険者からしてみれば喉から手が欲しいものもあるようだ。


例えば、


『渇きの革袋。見た目はただの革袋だが気づけば中が水で満たされているので注意が必要。最近の平均取引価格は銀貨10枚、最安値が銀貨5枚、最高値は銀貨80枚、最終取引日は七日前と記録されています。』


これなんかは相場に倣って銀貨20枚ほどの値段していたが、エリザによると銀貨40枚でも買えと言われているらしい。


なるほどなぁ勉強になるわ。


なので今回は思い切って銀貨50枚で設定している。


多少高いのは値下げの幅を持たせているからだ。


「ねぇ、これは?」


「それは力の指輪だ。」


「え!そんなのがあるの!?」


「使ったことあるのか?」


「使った事も何も前に私が使っていたやつよ。」


「お前のやつじゃないと思うぞ?」


だって壺の中から出てきたやつだし。


「わかってるわよ。でも、売りに出した装備の中にあったの。金貨1枚かぁ、やっぱり高いなぁ。」


「売ってやりたいのは山々だが、それは自分で買えよ。」


「わかってるわよ。」


「それに、別にほしい奴がいたらそいつにも売れ。そうすればお前には銀貨5枚入ってくる。」


「銀貨5枚・・・でも、欲しいしなぁ・・・。」


どうやら自分の欲と戦っているそうだ。


全部そろえるのに金貨4枚ぐらいかかると言っていたけれど、話の通りそれなりに良い装備を身に着けていたようだな。


ダンジョンに潜ってもそういうのはなかなか手に入らないと聞く。


よっぽど深い所に潜れる冒険者だったんだろう。


と、商品説明をしていた時だった。


「おい、それはなんだ?」


顔を上げるといかにも冒険者といった感じのいかついオッサンが俺達を見下ろしていた。


よし、早速の客だ。


まずはどういう風にやるかレクチャーしていくかな。

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