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【祝!2200万アクセス突破!】転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す  作者: エルリア


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133.転売屋は行商から戻る

「ただいま。」


「おかえりなさいみなさん。」


「あーつかれたー。」


「お前は何もしてないだろ?」


「したわよ!ずっと馬車を操ってたじゃない!」


「そう言えばそうだな。」


「エリザ様お疲れ様でした。後の事は我々でやりますのでゆっくり休んで下さい。今日はイライザさんのお店に行きますから。」


「やった!シロウのおごり!」


なぜそういう流れになったのかはわからないがまぁいいだろう。


終わり方はともかく今回の行商は大成功だったと言える。


聖布と糸は金貨2枚、アラクネの糸とスケルトンの骨は金貨4枚、甲羅が銀貨85枚、核が金貨3枚で売れ、キノコは何と金貨3枚で売れたそうだ。


しめて金貨12枚と銀貨が85枚か。


ここから馬車の代金を銀貨75枚を引くとざっくり金貨12枚で売れたことになる。


原価が金貨4枚なので三倍で売れたわけだ。


ここから税金が引かれるので最終的な儲けは金貨10枚って所だな。


ちなみにダマスカス鋼金貨1.2枚分は計算に入れていない。


間違いなく利益はでるが実際いくらになるかは持って行かないとわからないから別枠だ。


初めての行商としては成功したと言っていいだろう。


まぁ、最後のあれは正直予想外だったが・・・。


「食事の前にダマスカス鋼の搬入と馬車の返却を済ませてくる。」


「そうですね、お約束は今日まででしたから。」


「エリザ、まだ飲むなよ?」


「飲まないわよ!」


口ではこう言ってるが、戻って来たら飲んでそうだからな。


家の酒代は自分持ちなので飲み過ぎることは無いと思うが念の為だ。


店を出て鍛冶屋へと向かう。


アポはとってないが搬入だし問題ないだろう。


だが、店の前まで行くも明かりはついていなかった。


マジか。


強めにドアをドンドンドンと三回たたくも返事はない。


「マートンさんならもう家に戻ったよ。」


「そうか、なら仕方ないな。」


隣の工房主が親切にも教えてくれた。


仕方ない戻るか。


「ダマスカス鋼の搬入かい?」



「あぁ、知ってるのか?」


「アンタ表通りの買取屋だろ?後日取りに行くから倉庫にでも置いといてくれって言われてるんだ。」


「そりゃ助かる、二度手間にならなくて済んだ。」


「今度はうちの素材も仕入れて来てくれよな。」


改めて礼を言って店まで戻る。


さて、後は馬車を戻すだけなんだが・・・。


荷台の鉱石を全部降ろさなきゃならないんだよなぁ。


「エリザ、荷下ろし手伝ってくれ。」


「えー、もう働かなくていいって言ったのにー。」


「鍛冶屋が閉まってたんだよ。倉庫に入れといてくれって話だからよろしく頼むな。」


「なんでよ~!」


「空腹は最高のスパイスっていうからな、酒も飯も美味くなるぞ。もちろん俺のおごりじゃなくていいなら別だが。」


「うぅ、シロウが厳しい・・・。」


「頑張りましょうね、エリザ様。」


「私も手伝いますから。」


ミラとアネットに慰めてもらっているようだ。


うらやましくなんてないぞ?


本当だからな!


ってことで、搬入はエリザに任せて店の前に鉱石を降ろし続ける。


上下の移動だけなのに腕がプルプルしてくるのは、昼間にも同じことをして乳酸が溜まっているせいだ。


明日は間違いなく筋肉痛だろう。


流石に二日も店を閉めているのでこれ以上はまずい。


折角の儲けが無駄になってしまう。


荷下ろしを済ませて先に馬車を返しに三日月亭へと向かう。


三人には先にイライザさんの店に行くように言っておいた。


「よぉ、戻ったか。」


「シロウさんお帰りなさい!」


中に入るとちょうど二人が歓談している所だった。


食事の後なんだろう、お酒を飲んだのか少し顔が赤くなっている。


「馬車有難うございました、裏に止めてありますから確認して下さい。」


「じゃあちょっと見てきます。」


ウィーさんがフラフラと店の外へと出ていく。


それを見送るとニヤリと笑いながらマスターが顔を近づけてきた。


「で、実際の所はどうだったんだ?」


「儲けとしてはそこそこ、だが面倒な事になった。」


「隣町といえばあの女が牛耳ってるって話だったな、見事にひっかかったか?」


「いや、寸での所でかわしたが次回以降は十分準備してからにするよ。知り合いなのか?」


「知り合いってわけじゃない。ここに来る客が良く噂してただけさ。」


とか何とか言いながら知り合いだったってパターンじゃないだろうか。


むしろそうだったらいいんだけど、そう上手くいかないだろうなぁ。


「何はともあれいい勉強になったよ。」


「そろそろオークションも近いし、現金欲しさの客が良く来るだろう。」


「だな、当分はこっちでのんびりやらせてもらうよ。」


その後馬車の確認をしたウィーさんが戻ってきたので、改めてお礼を言ってから三日月亭を後にした。


その足で急ぎイライザさんの店へと向かう。


待てとは言っていないのでもう盛り上がっている頃だろう。


「待たせた・・・な。」


「お帰りなさいシロウさん、随分大変だったそうですね。」


「どうしてお前がここにいるんだ?」


三人の他に羊男とその妻も一緒だった。


いや、そんなに広い街じゃないし二人がここに来ても別におかしくは無いんだが。


どうしても勘ぐってしまうよなぁ、あんなことがあった後だし。


「やだなぁ、偶然ですよ偶然。妻と一緒に食事に来ただけですって。」


「本当に偶然なんです。」


「私達が来た時にはもう二人はお店にいたのよ。」


「申し訳ありません、先に食事を始めてしまいました。」


「別にそれは構わないんだが・・・。本当に何もないのか?」


「ありませんよ。隣町でシロウさんが大暴れしてきたことなんて全然知りません。」


知ってんじゃねぇかよ!


一体どういうカラクリで俺達よりも先に情報を仕入れたんだろうか。


携帯電話的なものは無かったと思うんだが。


「文句を言いに来たのか?」


「いえ、よくやったと褒めに来ました。これ、お礼のお酒です、ググっと行ってください。」


そう言って羊男がジョッキになみなみと注がれたエールを差し出してくる。


何だこの笑顔は。


「褒めに来たって、まぁいいとりあえず食べてからだ。」


「今日はシープさんのおごりなんだって、よかったねシロウ。」


「おごり?」


「えぇ、こんなに気持ちのいい気分は久々です。あの女豹にシロウさんが一泡吹かせたと聞いた時は思わずガッツポーズしちゃいましたよ。」


「普通問題を起こすなと怒る所じゃないのか?」


「怒る?とんでもありません、次は何時ぎゃふんと言わせてくれるのか楽しみで仕方ありませんよ。」


うーむ、俺が思っていたのと随分ベクトルが違うな。


てっきり問題を起こすなとお小言を言ってくると思ったんだが。


よっぽど仲が悪いんだろうか。


「お待たせしました、お任せセット大盛りです!」


「待ってました!イライザさんおかわり!」


「はい、ありがとうございます。」


大量の料理をイライザさんが運んでくる。


ここのメニューは網羅しているのでこれという物を食べたい日でなければいつもこれだ。


今日は巨大なステーキにサラダ、それとジャガイモだろうか大量のポテトサラダ的な何かが乗せられている。


ジョッキを回収してイライザさんは厨房に戻って行った。


「じゃあ行商の成功を祝して~。」


「「「かんぱーい!」」」


グラスがぶつかる良い音が響く。


それはもう嬉しそうな顔をしてエリザが酒を流し込み、それに負けないぐらいの不気味な笑顔を羊男が浮かべている。


「なぁ、お宅の旦那大丈夫なのか?」


「なんていうか、よっぽど嬉しかったみたいでして。」


「普通に考えると隣町で問題起こしてきたんだよな?」


「そうですね。」


「それでいいのか?」


「表向きは隣町との関係は良好ですが、ギルド協会間では色々とあるみたいで・・・。特にナミルって方が来てからは随分としてやられていたそうです。」


よくわからんがその相手に一泡吹かせてきたのがよっぽど嬉しかったんだろう。


この男がここまで大はしゃぎするのは非常に珍しい。


明日は雨でも降るんじゃないだろうか。


「それでもさ、行って帰るだけで金貨6枚も儲けるなんてシロウってやっぱりおかしいよね。」


「人を捕まえて変呼ばわりとはいい度胸だ。」


「だって三日だよ?たった三日で金貨6枚なんて、冒険者やってるのがばからしくなるわよ。」


「でも、シロウさんは一日で金貨20枚を稼ぐのはザラですから、少ないんじゃありませんか?」


「いや、普段からそんなに稼がないから。」


「そうですか?ギルドの記録ではそこそこの回数叩きだしてますけど。」


「なぁ、前から聞きたいんだがどうしてうちの売上を知ってるんだ?税金は支払ってるが帳簿は差し出してないよな?」


「そこはほら、色々とやりようがあります。」


つまりはこの街で悪事は出来ないぞって事だ。


いやだねぇ、何でもかんでも知られるってのは。


別に悪いことしてないからいいんだけど、気持ちが悪いのは間違いない。


「まさか隣町でいくら稼いできたとかまで知ってるのか?」


「納税額は教えられませんのでそこまでは。」


「というかどうやって俺達よりも早く今回の件を知ったんだ?」


「念話装置というのが有りまして、それを使うと離れたところとでも文字で連絡を取ることが出来るんです。今回はアラクネの糸の専売通告とシロウさんへの警告でした。」


「警告?」


「次に無断で販売すると牢に入れるぞ、との事です。それってつまりシロウさんを捕まえられなかったって事ですよね?いやぁあのナミルの目をかいくぐって物を売りつけてくるなんて、流石だなぁ!」


ようはFAX通信みたいなもんだろう。


理解した。


だが理解できないのは警告された本人によくやったっていうギルド職員の素行だよな。


ホント大丈夫かよ。


「とはいえ、シロウさんには捕まってほしくないので次回はくれぐれも気を付けてください。あと、売りに行く品も、事前に連絡してくださいね。」


「次回からはそうするよ。」


「さぁ今日は奢りです!じゃんじゃん食べてくださいねシロウさん!」


何はともあれ行商は無事に終了した。


俺の知らないところで色々とあったようだが、俺に迷惑が掛からないのなら問題なしだ。


羊男の言うように次気を付ければいい。


祝杯を上げようじゃないか。


「乾杯。」


「「「「かんぱーい!」」」」


次の日も仕事だというのに、その日は夜遅くまで何度も乾杯させられるのだった。

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