表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/34

3、マナクリスタル

 目が覚めると、そこは元居た聖堂だった。


「なんでだよ!」


 誰も聞いてないのに、現状に突っ込む。


 おかしい。俺はさっき確実に死んだ。

 でもどうしてまたこの場所で目が覚めるんだ。


 聖堂はやはり薄暗い。松明で明かりをつけよう……と思ったが、死ぬ直前まで持っていた松明も剣もどこにも存在しなかった。

 まさか……今までのは夢だったのか?


 そう思って聖堂の中を歩き出すと、茨に囚われた見覚えある女性を発見した。

 違う。夢じゃない。さっきまでのは現実だ。

 いったい何がどうなっているんだ。その疑問がより深く俺を襲う。


 死んだのに生き返り、またこの場所で目が覚める。こんなの、とびっきりの悪夢じゃないか。

 気が狂いそうだ……。


 何かすがるものが欲しくて、俺は茨の美女に近づいた。


「なあ……何なんだよここは……あんたなんか知ってるんだろ? 目を覚ましてくれよ……」


 茨に包まれる謎の女性に話しかける俺は、狂う一歩手前に来ているのかもしれない。


 ふと、この暗闇の中で淡い光が生まれているのに気付いた。

 光の出どころは俺のポケットだ。なぜかポケットが紫色に光りだしている。

 あっ、と思って俺はポケットを探った。


 そこにあったのは、スケルトンを倒して手に入れた紫色のクリスタルだ。

 松明や剣は無くなってるのに、なぜこれがあるんだろう。

 わからないが、水晶の中の紫色の炎は、明らかにこの茨の美女に反応していた。


 茨の美女が、薄らと目を開ける。


「マナを……マナクリスタルを……」


 マナ……クリスタル?

 もしや……と思って俺は紫色のクリスタルを近づけてみる。

 すると、クリスタルは弾け、中の紫色の炎だけがぼうっと浮かんだ。

 それはゆっくりとふわふわ舞い飛び、女性の体に吸い込まれていった。


 次の瞬間。女性の体を包む茨が燃え出した。

 何が起きているのか、分からない。

 だが、今事態が好転しているのが分かる。


 この茨が燃え尽きれば、きっとこの美女が目を覚ますのだ。

 その瞬間を今か今かと待ちわびていると……やがて、火は勢いを弱めて消えてしまった。


 美女を包み込む茨は三分の一しか焼けてない。美女も、もう一度目を開ける事はなかった。


「ダメなのかよ!」


 叫ぶ俺だが、そこには若干の喜色が含まれている。


 確かに今回はダメだった。しかし、これではっきりした。


 スケルトンを倒して手に入る紫色のクリスタル。これを女性に近づけて反応させると、茨が燃える。

 この茨が燃え尽きた時、きっとこの女性は目を覚ますはずだ。


 それできっと事態は好転する。いや、好転しなくても、俺は孤独ではない。


 わずかに見えた希望。この謎の場所に囚われ、死ぬことすら許されない俺は、この希望にすがるしかない。


 もう一度地下へ行こう。そしてスケルトンを倒してクリスタルを入手する。

 地下へ行けば、きっともう一度死ぬことになる。それは恐ろしかったが、このまま何もわからず孤独でいる事の方が怖かった。


 俺は決意が鈍らないうちに、地下の階段を下るのだった。

早速の評価ありがとうございます! 大変励みになります!

もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、ブクマや評価、感想などで応援をなにとぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ