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24、メルトからスキルを授かる

 かなり強制的だったが、無事メルトとキスをかわしてスキルを授かる為の前提である絆が生まれた。

 そこで早速メルトからスキルを授かろうとするのだが……。


「……ふんっ」


 メルトはぶすっとした顔でふて腐れていた。強制的にキスをさせられた彼女の気持ちを考えれば当たり前かもしれない。


「何よ、スキルが欲しいわけ? だったらひざまずきなさい」


 ちょっと怒り気味な声に、俺は黙って従う。見た目は少女とはいえ、ただの村人からしたら不機嫌な女神はさすがに怖い。


「……意外と素直ね。まあいいけど」


 そんな俺の殊勝な態度が功をそうしたのか、メルトの声音は若干明るくなった。


「で? 何のスキルが欲しいのよ」

「とりあえず中級の鑑定スキルかな。それでさっき手に入れたレジェンダリー武器が一応鑑定できるらしいし……」

「ふーん、中級の鑑定スキルね~……あっ? あんた初級のも持ってないじゃない」

「そうだけど……問題あるのか?」

「問題って言うか、中級の鑑定スキルを習得するには初級鑑定スキルが必要なのよ。いわゆる前提スキルってやつね」


 言われてみれば、初級の鑑定すらできない奴がそれより高位の鑑定ができるはずもないか。


「ならそれも合わせて取得しようかな」

「わかったわ。それだと合計1100マナは必要ね」

「そんなに!?」


 俺は慌てて目をつぶり、確認してみる。暗い視界に紫色の文字が現れ、初級鑑定スキルと中級鑑定スキルの習得マナが表示された。

 初級鑑定スキルの方は100。中級の方は1000だ。文字通り桁が違っていた。

 そして今自分が持っているマナを確認。クロウラーを倒した時点では5000あったが、メルトを助けるのに2000使っていたらしい。残りは3000だ。

 二つの鑑定スキルを覚えられる範囲ではあるが、他のスキルも習得していくとあっという間に枯渇しそうだ。変に他のスキルを取って習得できなくなる前に、さっさと覚えてしまおう。


「じゃあとりあえず鑑定スキル二つをくれ」

「はいはい。ではリックよ、女神アルティナの名に置いてスキルを授けるわ。汝に祝福あれー」


 なんだかアルティナの時と違って気が抜けた言い方だったが、ちゃんと俺の体が温かい光に包まれてスキルを覚えることができた。


 これで残りマナは1900。これでもっと他のスキルを覚えてみよう。

 しかし何を覚えたものか……ここは素直に聞いてみよう。


「残りのマナで習得できる役に立つスキルとかあったりするか?」

「ん~? あたしのおすすめで良いわけ? それなら断然魔法スキルよ。なんたってあたしは魔を司る女神! 魔法ならお手のものよ」


 魔法か。クロウラー戦や他の雑魚戦でもファイアーボルトの魔法がかなり役に立った。覚えておいて損は無いだろう。


「あんたには強くなってもらわないと困るし、ここはいっちょモンスターの大軍勢でも吹っ飛ばせるような強力な魔法でも……んん?」


 自分の得意分野だからか生き生きとしていたメルトが、突然不穏な声を響かせる。


「どうかしたのか?」

「いや……なんかあんたさ、複数の魔法を同時に使える状態じゃないっぽい」

「え? どういうこと?」

「うーん、なんていうのかな、人間って魔法を無尽蔵に覚えられる訳じゃないのよね。こう、いわゆる魔法の記憶領域っていうの? そういうのが才能によって決められているわけよ。いわゆる賢者なら百個も魔法を覚えられるとかね」

「……お、俺は?」

「覚えられるの一個だけ。才能全くないわね」


 ……マジか。ただの村人だからしょうがないが、ちょっと落ち込む。


「あー、でも大丈夫よ。あたしの力なら魔法の才能を伸ばせるもの。魔法才能スキルを習得したら覚えられる魔法記憶領域が増えるわ。あと、あんたの場合はあたしがついてるから特例で、魔法スキルを覚えるだけは覚えておけるわ。あくまで実戦で使うには記憶領域に魔法のセットをしないといけないってだけ。これもあたしが自在にできるから、そんなに気にしなくて良いわよ」

「……」


 思わず黙り込む俺に、メルトは首を傾げた。


「なに? どうしたの? 自分の才能の無さに絶望した?」

「いや、メルトってすごいんだなって」

「……ふふん。なによ、あたしは女神よ? すごくないとでも思ってたわけ?」


 メルトは得意気に胸を張る。


「正直ただの小娘にしか思ってなかったけど、腐っても女神なんだな」

「おい! 口悪い! 誰が腐ってんのよ!」


 とにかく、今の俺はどれだけ魔法を覚えようと、実戦で扱える魔法はそのうちどれか一つだけに制限されるらしい。

 まずはこれを伸ばす魔法才能スキルとやらを習得したい。


「魔法才能スキルってどれくらい必要か目安ってあるのか?」

「基本的にあればあるほど困らないわよ。魔法が複数同時に扱えるなら、それだけ戦闘での選択肢が増えるし、中には組み合わせる事で更に効果を高める魔法の組み合わせがあるのよね」

「そんなのがあるのか」

「この辺は後でもっと詳しく教えるわ。とにかく、それを意識するなら記憶領域が最低二つ必要かもね。魔法才能スキルのレベルを一つ上げる事で記憶領域が一個増えるわよ。ちなみにあんたは魔法才能スキルを覚えるところからね。一応覚えるだけで記憶領域が一つ増えるけど」

「なら……魔法才能スキルを習得したうえでそのスキルレベルを2にすれば、使える魔法は三つになるってことか」

「そういうこと。どうする? 覚える? 必要マナ量は1500よ」

「……結構するな」

「習得に1000、スキルレベルを2にするのに500必要ね。ちなみに魔法才能のスキルレベルを上げる為に必要なマナ量はどんどん増えていくわ。レベル3にするには1000必要」

「……それ、俺が賢者並みに使えるようになるには、どれだけマナが必要なんだ?」

「さあ? まあ……100万くらい?」

「無理だろそんなの……」

「地下深くまでいけるようになったら、これくらい簡単に溜まるんじゃない? それに別に百個も魔法覚える必要ないわよ。さっきも言ったけど、あたしが自由自在にあんたの記憶領域に魔法セットできるもの」


 それもそうか。あくまで実戦で必要になる分の魔法記憶領域を確保できればいいのだ。


「よし、ならとりあえず魔法才能スキルの習得とレベルを2にしてくれ」

「おっけ~。最低でも三つは魔法使えないと不便だものね。ではではリックよ、女神メルトがスキル授けるわ~」


 なんだか投げやりな感じだったが、それでも問題なくスキルを習得できた。もしかして女神の名に置いて、とかのセリフって雰囲気作りなのか?


 とにもかくにもこれで魔法を新たに二つ使えるようになった。残りマナは400。これで役立つ魔法を覚えてみよう。

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