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16、新しいスキルの取得

 ポータルが設置されている台座前で、アルティナが俺を待っていてくれていた。

 彼女の元に近寄り、絆が深まった事を報告する。


「多分、絆は深まったと思うんだけど……」

「ええ、私自身感じております……リック様と、こう……深く繋がりあえたような感覚が胸の奥にあるんです」


 アルティナは手で胸を押さえた。俺の視線がその動きに釣られ、彼女の大きな胸を直視してしまう。


 精神世界とはいえ、あれに俺は顔を埋めてしまっていたのか。その柔らかな感触を思い出して赤面してしまったので、ごまかすように咳払いをする。


「無事絆が深まったのはいいんだけどさ、あんな感じでよかったのかな。だってした事といえば……」

「い、言わないでください!」


 アルティナがあわあわと両手を振る。


「そ、その……心の中の自分が何をしたのか知るのは、とても恥ずかしいです! ですからリック様の心に秘めておいてください!」


 取り乱すアルティナは、髪を振り乱しながら真っ赤な顔をぶんぶんと左右に振っていた。


 それを見て、精神世界のアルティナの態度を思い出した。大型犬みたいにじゃれついてきた彼女の姿と、羞恥に悶えるその姿がどこか重なる。


 精神世界とはいえ、やはりあれはアルティナに違いないんだろう。俺は精神世界を通して、まだ知らないアルティナの一面を見たんだ。


 それが絆を深めるという事なのだろう。まだ知らないアルティナの側面をより深く知っていくことで、互いの絆が密接に繋がり、強力なスキルが得られるようになるんだ。


 このダンジョンを攻略する間、俺はアルティナのまだ知らない側面をもっと知っていく事になるんだろうな。アルティナが恥ずかしがるのも当然だ。


「と、とにかくですね! 無事絆レベルが上がった事で、更に強力なスキルを授けることができるようになりました。で、では早速スキルを授けますよ」

「……そういえばスキルを授かる時ってどうすればいいんだ? 前の時はキスしただけで……」

「そ、それは最初だけの特別な方法です! そこに座って、私に向かって祈って下さい。そうすればスキルを授ける儀式を開始できます」


 言われるまま、アルティナの前でひざまずき、手を合わせて目をつぶった。教会でお祈りをする時みたいだ。


「こほん。ではリック様……いえ、リックよ。女神アルティナの名において、あなたにスキルを授けます。さあ、あなたが望む力を選びなさい」


 まぶたを閉じて暗くなっていた視界に、突然紫色の文字が浮かび上がる。

 これは……俺が取得できるスキルの羅列だろうか。


 目についた物をざっと確認していく。


 レベルロスト無効化。経験値取得効率化。レベルアップ時の攻撃補正強化。レベルアップ時の防御結界補正強化、レベルアップ時に新たな補正の取得……などなど。

 どうやらアルティナはレベル関係のスキルを授けるのが専門なのかもしれない。


 やはりここはレベルロスト無効化を取得するべきだろうか。しかしこのスキルを取得する事で、本当にレベル1に戻らなくなるのだろうか? 発揮する効果を具体的に確認したいな。


 そう思うと、紫色の文字が一瞬消え、また新たにあらわれた。


 そこにはこう書かれてある。レベルロスト無効化のスキル――死亡時、または呪いの効果によりレベルを失う際、このスキルを取得しているとロストしなくなり、レベルが恒久化される。


 ……多分これで間違いないようだ。これさえ取得すればもうレベル1には戻らない。そうなればアンブロシアの檻の攻略も夢ではないはずだ。


 よし、まずはこのスキルを取得しよう。えーっと、必要なマナは……げっ、100も必要なのか。

 スケルトンを狩りまくったおかげで、今の俺のマナは230もある。しかし100は結構大きいよな。でも取らない選択肢はない。


「欲しいスキルがありましたら、頭の中で念じて下さい」


 アルティナに言われ、俺はレベルロスト無効化を下さい、と念じてみる。


「――承認しました。では女神アルティナの名において、新たなスキルを授けます。汝に光あれ!」


 俺の体がなんだか暖かな物に包まれた感じがした。目を閉じてるから分からないが、多分光に包まれてるのかな。

 これでレベルロスト無効化のスキルを取得できたみたいだ。


「必要なスキルは以上でよろしいですか?」

「いや、ちょっと待ってくれ」


 まだマナには余裕がある。他にダンジョン攻略に有用そうなスキルを今のうちに取得しておこう。


「ちなみにですが、欲しいスキルの方向性を念じれば、自然とそのスキルが選択されますよ。その他にもスキルのカテゴリごとに確認することもできます。基本的に融通は利かせますので、思うようにスキルを探してみて下さい」

「わかった」


 今俺が必要なスキル……それは遠隔攻撃だ。

 やはり、近接攻撃だけではこの先やっていけそうもない。

 そう思うのは、地下二階にいたスケルトン集団のせいだった。


 今後もあいつらのように数で責めてきたり、近接攻撃と遠隔攻撃で陣形を組むモンスターがいるはずだ。

 そういう時、俺にも遠隔攻撃が無いと話にならない。


 となると……魔法だ。簡単な魔法でいい。遠距離を攻撃できる魔法が欲しい。俺はアルティナに向かってそう念じてみた。


「魔法ですか……私が授けられる魔法スキルはかなり初級のしかありません。それに残るマナの量だと取得できるのは一つしかありませんが、確認しますか?」


 する! そう念じると、暗い視界にスキル名が浮かび上がってきた。


 炎の魔法【ファイアーボルト】――火の矢を放ち相手を攻撃する。距離20メートル。炎上確立10パーセント。消費マナ1。初級魔法カテゴリ。取得に必要なマナ120。


 20メートル先まで届く炎の矢を放つ魔法【ファイアーボルト】か。悪くない。マナはほとんどなくなるが、絶対に取っておいた方が良いだろう。

 このスキルが欲しい。アルティナにそう念じると、また俺の体が温かい光に包まれた。


「……はい、【ファイアーボルト】の魔法を授けました。スキル取得は以上でよろしいですか?」

「ああ」


 俺はゆっくり目を開ける。ずっと目を閉じていたからか、視界が少しくらっとした。


「ちなみに、魔法はマナを消費して発動されます。【ファイアーボルト】は消費マナ1ですから、気軽に使って慣れてみるといいですね」

「よし、早速地下二階へリベンジしてくる! こんなダンジョンすぐ攻略して他の女神も助けてやるから、待っててくれアルティナ!」

「……はい! リック様に幸あらんことを。無事ご帰還することを願っております」


 アルティナに見送られながら、俺はまた地下への階段を降りていった。


 目指すは地下二階の攻略だ。

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