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13、厄介な魔王の呪い

 目が覚める。視界には心配そうに俺を覗き込む女神アルティナの顔があった。


「大丈夫ですか?」

「あ……ああ。そうか、俺、また死んだんだ」


 死んで聖堂へと戻ってきたのだと理解して、深く息を吐く。


 もう何度も死んでしまっていて若干慣れつつあるが、こうして目が覚めて生き返っているのを確認すると、どうしても安堵してしまう。


 慣れかけているとはいえ、やはり死ぬのはよくない。何が切っ掛けで二度と復活できなくなるか分からないからな。


 気を取り直して立ち上がると、アルティナが暗い顔をしていた。

 俺は困ったように頭をかく。


「ごめん、俺情けないよな。こんな調子だと呪いを断つどころか他の女神を助けるのもいつになるやら……」

「そ、そんなことはありません! リック様はとても勇敢です!」


 アルティナが、悲痛そうな顔をした。


「死んでも生き返られるとはいえ、それは確かに死なのです。生あれば死を恐れるのが当然なのに、リック様は死んでもなお地下へと赴き、私を助けてくれた……今私は、リック様の気高さを改めて確認し、そして自らの至らなさを恥じるばかりです。私がもっとリック様の助けになっていれば、死地へ追いやることもないというのに……」


 女神アルティナは、もしかして自分が無力だと嘆いているのだろうか。

 だとしたら、そんな事は決してない。


「そのさ……俺はアルティナのおかげで助かってるよ」


 悲痛に俯くアルティナが、顔をあげて俺を見てくれる。


「そもそも俺はそんな立派な人間じゃないんだ。アルティナを助けたのも、こんな訳も分からないところで一人でいる方が死ぬより怖くてさ……すがる気持ちでマナクリスタルを集めて捧げたんだ」

「……」

「だから、アルティナが復活してくれて、こうして会話してくれるだけで、俺はすごく救われてる。だいたい女神様とお喋りできるってだけで凄いことだし、その……キスまでしてるし。正直女神とキスしてる時点で死んでもいいくらい良い目にあってるよ」

「う……」


 アルティナは恥ずかしそうに唇に触れていた。あの時感じた感触を思い出しているのだろうか。


「それにスキルを授けてくれるし、アルティナが至らないところなんて一つもないって。君が復活してくれて、本当に嬉しいんだよ、俺。こんな素敵な女神様がついてるから、死の恐怖を乗り越えられるんだ」

「リック様……」


 なんて、良い事言ってるのだが俺はさっきモンスターにズタボロに負けたわけで。

 結局俺が強くならないとアルティナは責任を感じてしまうのだろう。


 よし……もっと強くなろう。せめて、アルティナが安心できるくらいには。

 その為にはやはりレベルを上げるのが一番の近道だろう。


 そんな風に強さを意識したせいか、俺は死ぬ前までに感じていた力強さみたいなものが無くなっているのに気付いた。


 あれ……これもしかして、レベル1に戻ってない?


「アルティナ……俺、もしかしてレベル戻ってたりしない?」

「え? ……あ、ほ、本当です。レベルが戻ってしまってますね」


 ええー……。


「れ、レベルって戻ったりするものなのか? もしかして俺ってやっぱり才能ない?」

「そ、そんな事はありませんよ。レベルが戻っているのは、アンブロシアの檻に満ちる呪いのせいだと思います」


 こほん、と咳払いしたアルティナの表情が、先ほどまでとは違って凛々しくなる。これ、説明モードに入ったんだろうな。


「リック様も知っての通り、ここアンブロシアの檻は魔王の呪いによって生まれたもの。魔王はレベルの概念を解放した四英雄に倒されたのもあり、レベルに対する呪いもかけられているのでしょう。おそらく、死ぬかこの聖堂に戻るかすると、レベルが元に戻るのだと思います」

「それは……困ったな」


 正直スケルトンを狩りまくってレベルを上げてゴリ押ししようと思ってたのに。それを封じられたのは痛い。


「いえ、そう悲観することはありません。これが魔王の呪いによるものならば、私が授けるスキルで無効化することもできるでしょう。現に、今リック様に経験値ロスト率を軽減するスキルを授けることができます」

「マジか。だったら早速そのスキルを授けてくれ。マナは結構稼いでいるだろ?」

「ええ……そうなのですが……」


 アルティナは少し困ったように俯いた。どこかしら頬が赤くなっている。


「このスキルを授けるには、その……もっと私とリック様の絆を結ぶ必要があるのです」

「それってまたキスをすればいいってことか?」

「……その……」


 あれ? 何この空気。アルティナすごく恥ずかしがってないか?

 俺の戸惑いを察したのか、アルティナはあわあわと手を振った。


「ち、違います! リック様が想像しているような恥ずかしい行為ではございません!」


 いや、俺何も想像してませんけど……。


「その……私とリック様の絆をこれ以上深めるには、少し特別な手順が必要でして……その準備がありますので、今しばらくお待ちいただければ……」

「……心の準備ってやつ?」

「違います!」


 違うんだ。実はちょっと期待していた。


「あ、いえ、ある意味でそうなのかも……」


 え、実はそうなの!? 期待しちゃうんだけど。


「と、とにかく、リック様はその間もう一度地下一階へ行き、スケルトンを狩ってマナを稼いでおいてください! 私の準備ができましたらお呼びしますので、その時は上への階段を登って帰還するんですよ! 二階はまだ危険ですからね」

「は、はい……」


 なんだか追いやられる形で地下一階への階段に向かわされてしまった。


 とにかく、女神さまの言うことを聞くか。俺はスケルトン狩りをしてマナを集めるのだった。

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