12、罠
地下二階へ続く階段を降りて黒い霧の中に入ると、一瞬視界が暗闇に包まれ、次の瞬間にはまた石造りの部屋にいた。
どうやら地下二階も一階と同じ見た目のようだ。石造りの四角い部屋がいくつも連なっているのだろう。
それならば、どうせ出てくるモンスターもスケルトン程度だろう。なら何も問題ない。
すっかり大胆になった俺は、堂々と次の部屋に続くドアを開け放つ。
「……げっ」
すると、その部屋の奥にはスケルトン三体が居た。
おいおい……地下二階はスケルトンが複数出てくるのかよ……。
出鼻をくじかれた思いだが、しかしスケルトン達は俺に背を向けていた。
なんだあいつら……? 俺に気づいてないのか?
だったら不意打ちができる。おそらくだが、反撃される間に二体は仕留められるだろう。
そうすれば残るは一体。なら簡単に勝てる。
もたついていたら、スケルトン達が俺に気づいてしまう。ここは走って一気に距離を詰め、攻撃を仕掛けるんだ。
「うおぉぉおっ!」
どうせ走りだしたら音で気づかれる。なので俺は気合を入れるために雄叫びをあげ全力でダッシュした。
そしてスケルトンが振り向くより先に、その背中を捉える。
貰った――!
と思った瞬間、背中に激痛が走る。
「え――?」
突然の痛みのせいで、俺はよろけてしまった。
何が起きた……?
背後を見てみると、俺が入って来た入口近くの壁際で、弓を持ったスケルトンが二体も居た。
スケルトンアーチャー。剣で攻撃してくるスケルトンと違い、距離をとって弓を放ってくる、ザコではあるが遠距離攻撃が厄介なモンスターだ。
ま、待ち伏せかよ……。
ようやく俺は気づく。スケルトン三体が背中を向けていたのは罠だ。それにつられて不意打ちしようと入ってきたところを、後ろからスケルトンアーチャーが狙い打つ。
まさか、そんな罠が仕掛けられているなんて……。
完全に舐めていた。スケルトン程度もう楽勝だと思っていた俺が間違いだった。
数の差に近距離と遠距離攻撃の構成、そして待ち伏せという罠。何て用意周到なんだ。
そして今俺は、目の前にスケルトン三体、背後にスケルトンアーチャー二体と囲まれてしまっている。
ど、どうしようもないな、これ……。
そのまま俺はスケルトンに斬られ、背後から弓を射られ、目の前が真っ暗になった。
もう慣れつつある死の瞬間だ。
死ぬ間際に、俺はどうしても思ってしまう。
……初見殺しは卑怯だろ。




