【上位3作品への講評】
上位3位に入賞された方の作品には、作家三名から講評or感想の特典がございます!
結果発表後、以下の質問をお送りし、それぞれご回答いただきました。
①講評・感想どちらがいいですか?
②特にコメントが欲しい点を2つまで教えてください!
各作品につきまして、peco先生、井戸正善先生、玄武聡一郎(企画主)の順番でコメントさせていただきました。上位に入賞された方も、そうでない方も、ぜひぜひご覧くださいませ!
婚活魔王を、幼女が勝手にプロデュース ~不幸を望まれた人質王女が、魔王国で溺愛されるまで~
①『講評』でお願いします。
②本作の長所と短所、書籍化(コンテスト受賞)に向けて直せるところはないか(他作に埋もれない作品にしたいです)
・peco先生
まず言っておきますと、私の評価軸は『キャラの関係性』『キャラクターの個性』『会話や心情の良さ』『作品の幸福度or展開の熱さ』『物語構築の完成度』の順で優先順位が高いです。
①この作品はタイトルから勝っていますね。『このお話はハッピーエンドです!』と伝わって来ますし、『どうプロデュースするのか』という点が楽しみどころという点、婚活魔王を幼女が、で主体となるキャラクターが表現されています。
中身も、第一話で幼女がそうである理由、納得感の強さ、そこを主軸とした物語や心情の流れが、タイトルへの回答として完璧です。
そこから続く二話三話も、主軸に沿った物語展開として非常に美しいものでした。それぞれのキャラクターや状況を丁寧に立てながら、それぞれへの好感度が上がっていき笑いもあるので。
②長所は上記の通り、キャラクターの立ち方と物語展開がそのキャラクターに沿って行われている点。
短所は特に見当たらないですね。個人的には後は拾われる運かなと思います。これから先に谷を作るとしても、重くしないことが重要でしょうか。幸福に向かう為の不幸というのは物語を進める上で大切だったり重要だったりすることもありますが、この物語を読みたい人は『この幼女が幸せな様と振り回される魔王とのドタバタ』が見たいと思うので。
感想:お見事です! 幼女可愛い!! この子マジ可愛い!!
性格や素直さで魅力値が振り切ってます! 君は百点満点花丸です!!!
幼女のお母様が好き過ぎて困りますね、個人的に。
そして魔王様と側近さんの性格ですよ。めっちゃ良いです。本当に良い。
コミカルで、おちゃらけていて、それでいてカッコ良い。
ああ、幸せだなぁ……ってなる物語です。
続きが読みたい!!
・井戸正善先生
【初めに】
面白かったです。
主人公であるリコリスの目標がはっきりしていて、物語を追いかける読者として読みやすく、展開を期待する方向性が明確ですね。
また、各キャラクターの特徴がはっきり描写されていてそれぞれの役割や立ち位置が明確なのも物語の理解度を高めていると感じます。
全体的にはこんな感じでしょうか。
いくつか気になる点はありましたので、分解してみていきます。
【キャラクター】
本作の主人公はリコリスであるはずですが、実際のところ彼女の意思はあれど、都度都度差し込まれる母親の薫陶がかなり強いので、ともすれば操り人形のような自我の乏しさを感じてしまいます。
もちろん、成長途上であるうえ、これから先に本格的な彼女らしさが表れてくる部分もあると思うのですが、序盤で母親の陰が強すぎることもあって、彼女ならではのものの考え方というより、母親の考えをなぞっているような雰囲気を感じます。
キャラクターとして「立ち位置」「目標」がはっきりしているのですが、その原因や思考の方向性が、環境によるものばかりなのと、3話までで彼女の能力に対する評価が周囲のキャラクターからなされることがないことが大きいかと。
ルガルゼが評価したのもリコリス本人ではなく母親でしたし。
個性的なキャラクターの中で、リコリスが「最も目立つ」にはどういうキャラクター性、思考や行動の特殊性を持たせて、読者に強力な印象を与えるかが重要になると思います。
【ストーリー】
物語の流れはスムーズで、先述の通りキャラクターの配置や数は過不足ないように感じます。
原因と目的の設定まで順調に来ています。
特に、ルガルゼという人物が説明役として丁度良い場所にいるのが効いています。
そこで、このルガルゼがおよそ物語の価値観の特定に便利だと思うので、彼にリコリスという主人公を「認める」行動をしてもらうと、リコリスというキャラクターの輪郭がくっきりすると思います。
作中の人物から評価されることで主人公の強みがわかると、彼女の目の前にある問題がより明確に見えてくるはずです。
あとは、ネズミメイドという味方ができたところは良かったと思います。
ただ、ここまでアウェーの環境で味方が増えるのは良いですが、頼りないタイプのキャラクターですので、リコリスが「魔王のプロデュースをする」という目的を達成する糸口にはつながっていないように見えます。
個人的に、物語の問題が明確になった時点で、ある程度の「解決への道筋」が見えていると、読者の期待感と物語全体を読み進める後押しになると考えます。
ですので、できればもっと序盤で「魔王の良さ」にリコリスが気づいたところから、それをどう広めるかについてリコリスなりの策を具体的に提示された方が物語の期待値を上げると共に、リコリスのキャラクター性を見せることになります。
こういう表現もどうかと思いますが、物語の表現として効率が良いです。
☆本作の長所と短所、書籍化(コンテスト受賞)に向けて直せるところはないか
ご質問については上記の内容でいかがでしょうか。
書き出しの中で「主人公はリコリスです。こういう人物なので、この先も見て行ってくださいな」という部分がどれだけ魅力的に書けるかがキモだと思います。
世界の見せ方はかなり良い感じでスムーズだったと思うので、あとはリコリスの魅力ががっつり描き出せれば、彼女のファンが増えて、魅力が増すと思います。
・玄武聡一郎
①『講評』
1st setでこの作品を読んだ時、最初に感じたことが「この作品は少なくとも1st setは突破するだろうなぁ」でした。婚活、プロデュース、人質王女、溺愛というキャッチーな要素をうまく絡めてあり、ターゲットの読者層が非常にわかりやすかったというのも勿論ありますが、何より想定読者外であろう玄武が(普段この系統の作品は読まないので)サラッと読んだだけで続きがとても気になったのが、なによりの理由です。
結婚を渇望している魔王の元に送られてきたのが、齢5つの少女だったという出だしがまず面白い。この時点でぐっと心を掴まれました。更には魔王様から溢れる哀愁や、主人公の幼児らしい前向きな姿勢、絶妙な立ち位置の宰相など魅力的なキャラが物語を推進し、1話の最後できっちりタイトルを回収します。実に美しく、非の打ち所がない構成だと思いました。
タイトルから溺愛されることが確定している(=ハッピーエンドが確定している)というのも時代性・流行に沿っており、読者が魅力的に感じた理由の一つかと思います。
今後明らかにされるであろう『愛され十か条』も非常に気になるところで(まずこのネーミングが最高なんですが)、先の展開への期待値も高いです。
総じてIPとしての完成度が突き抜けており、優勝したことに誰もが納得できる素晴らしい作品であると感じました。ぜひこのまま書籍化に向けて突き進んでほしいです。買います。
②本作の長所と短所、書籍化(コンテスト受賞)に向けて直せるところはないか(他作に埋もれない作品にしたいです)
長所については①で述べた部分が挙げられるかと思います。キャラとコンセプトが完璧ですね。特に、全ての要素に暗い雰囲気がない部分がポイントかと思います。主役のキャラに前向きで直向きな5歳の少女を据えたところが素晴らしいと思います。
これといった大きな短所は見当たりませんが、僭越ながら気になる点だけ挙げさせていただきます。
3話まで通してみて、主人公の活躍がほぼ見られない点は少々気になりました。特に、2話目の王城内に置いておかれる流れは完全に成り行きですので、ここで(些細なことでも良いので)主人公の有用性を見せて一目置かせるという手はあったかなと思います(例えば魔王の着ているズボンの裾を引っ張ってシワをなくしたことで、メイドから「今日はなんだかシュッとして見えますね」と言ってもらえるとか……)。
現状、魔王がモテないというか、結婚できていない理由も不明ですので、この辺りで情報開示して、それと同時に上記の展開を進めてもいいかもしれません。
ただ、これは物語のセットアップをかなり早めるかなとは思います。上記のような流れはもう少し後で(おそらく愛され十ヶ条と併せて)やる予定だったと思いますし、ゆったりとしたストレスフリーな展開が読者に好まれているのは結果が示しています。物語全体のバランスが見えてるのは作者様だけですので、あくまでワンアイディアとして留めていただければと思います。
偽りのアマテラス
①講評をお願いします。
②このテイストで、古代日本神話を下敷きとして神と人のドラマを描いていくつもりですが、合いそうなレーベル、またはここをこうすればこのレーベルに合いそう、などの、賞に出すにあたってのお話がいただければと思います。
・peco先生
①特殊構造の設定導入型。二話目三話目の展開もほぼ完璧で言うことないですね。
②この作品を出すとすれば、ラノベレーベルであれば、おそらく電撃かネット小説大賞ですね。ジャンル的な色のはっきりしているレーベルは厳しい、と思います。
系統的に、ジョジョのスタンドや異能などの現代寄りの構成をしているので、コミック原作系が意外と狙い目な感じがしますね。絵があるとより映えるタイプの作品だと思います。
他は、一般文芸でファンタジー寄りのレーベルなどがあれば、そちらは狙えるかと思います。
客観的に見ると、より玄人寄りの作品に分類されるので、古語的表現の扱いが難しいところです。世界観を表すことに寄与していますし、好きな人は好きな要素ですが、自分で書くのであれば、全てルビを払って『村』などの分かりやすい方向で表記し直す可能性が高いですね。
そうした場合でも、やはり和風というのは扱いが難しいジャンルではありますので、適正レーベルはさほど変わらないかと。
感想:一話目の構造はかなり特殊で、個人的にはそこにワクワクしましたね。ここの視点からシナリオを始めるのかー! 設定がバチバチに物語に落とし込まれていて、感嘆の一言。
からの、二話目三話目ですよ……偽りのアマテラスを一話目と二話目でダブルミーニングして来ましたよ、この作品。
ていうね、もう誰でも分かる部分は良いんですよ! ストーリーの盛り上がりも言うことないです。
そこのストーリーに何でしれっと、古代シュメールから発生した一神教と多神教の概念闘争を正位置と逆位置で重ねて来るんですかね!? なのにちゃんと『偽りのアマテラス』ですよ! どうせクライマックスでまた『偽り』が回収されるんでしょう! 知ってるんだから!←
で、その上に黒幕・玄武聡一郎が第一回でカマした三話構造をしれっと重ねて来やがりましたのですよ! ちょっと作者、説明してくれます!? あなた絶対『下克上あるなら、そっちで行った方が面白いな』で天辺取りに来る構造にしましたね!?
まぁ正直、二話目でシナリオノットフォーミーかな? と思ったのを三話で回収されました。お見事過ぎて声もないですね。激アツです。
投票対象にならなかったのは、単に私の信条故ですね。読者獲得範囲の狭い題材で、ここまでやった作者のワザマエには称賛しかないです。
本当に『硬質な和風ファンタジー』なのに、ちゃんと『エンタメ』なんですよ。試練も熱さも起伏も盛り上がりもきちんとある。三話しかないのに。神を描いた上で、主軸は間違いなく主人公。
しかもちゃんとここで『終わって』もいます。『続く』のに終わってます。そういうところですよ!
という、とても良質な作品でした! 好き!
・井戸正善先生
【はじめに】
とても独特な雰囲気を感じましたが、読みにくさはあまり感じませんでした。
神様大戦争な感じで、これからどんどんバトルが派手になっていくんじゃないだろうかと期待を持たせてくれる内容でした。
時代設定や独特の雰囲気から、読者をある程度絞っているようなイメージはありますが、ちゃんと内容が伝わりさえすれば、読み手を引き付ける魅力があります。
【キャラクター】
途中からヤマヨの役割がかなり明確になりましたが、開始から彼女が失ったものや目的とすることが段階を踏んで明確になり、彼女の意思がきちんとその方向を向いていて、読者が視点を固定しやすいキャラクターになっていると感じました。
彼女に近しい人物がどんどん亡くなってしまいますが、時代性や物語の特性を感じるので問題はないかと思います。彼女の成長と価値観の形成に明確な影響を与えていますし。
内面性のキャラクター造形はかなり完成されると思うのですが、神の表現がちょっとわかりにくいかな、と感じました。
戦っているシーンが特にそうなのですが、規模の大きい「ジョジョのスタンド」みたいなイメージになっているのですが、合っているでしょうか。
人と神がワンセットで戦っているような描写になっているので、戦いの規模とか速度が、もっと壮大でテンポよく表現されていると、神の能力の強力さや人知を超えた力のぶつかり合いの迫力が出て、人々の生活の穏やかさや厳しさとの対比で、より作品の緩急が強くなると思います。
【ストーリー】
文化の始まりを感じさせるような静かなスタートから、村同士の交流、そして神との邂逅に神同士の戦いへと、たった3話でスムーズに来ていますね。かなり巧妙な作りになっていると感じました。
ここから物語は大きく広がるのだろうな、という印象もちゃんとありました。二柱のアマテラスだけでなく、他の神も出てきて、神の力の根源が示されているのも、さらなる神の登場を予感させます。
欲を言えば、第三勢力を予感させる力のある神の存在があると、この先に対する期待感がよりアップしそうです。
☆このテイストで、古代日本神話を下敷きとして神と人のドラマを描いていくつもりですが、合いそうなレーベル、またはここをこうすればこのレーベルに合いそう、などの、賞に出すにあたってのお話がいただければと思います。
読んでいるときの印象は『宇宙皇子』を連想していました。
明確なレーベルについては、そこまで詳しくないので明示できませんが、ある程度年齢が高めの読者を対象とした、一般文芸でも良いのではないでしょうか。ファンタジーではありますが、人類史の一部を垣間見るような楽しさのある作品ですので。
・玄武聡一郎
①講評をお願いします。
まずこの作品が敗者復活を勝ち抜いたことは、作者の手腕はもちろんのこと、コロシアムの読者層の読解力・読み込む力を証明するものであったと強く思いました。
本作はマイナーテンプレ作品(転移・婚約破棄のようなメジャーなテンプレなしで展開される物語)であり、1話目〜3話目にかけて、なにが起こるか全く分かりません。故に前の話を理解していなければ続く話の面白さは微塵もわからず、票が伸びることはなかったでしょう。このタイプの作品を読ませる作品として昇華させた作者様の手腕も素晴らしいですし、(23作品という少なくない作品数がある中で)そこに面白さを見出した読者のみなさまも同様に素晴らしいと感じました。
さて、先にも述べましたが、本作はマイナーテンプレ作品です。婚活魔王や異世界転移デザイナーとは違い、基盤となるテンプレが読者層に浸透していないため、読者を楽しませ続けるにはかなりの高等テクニックが必要となります(神話をマイナーテンプレというのは少し語弊がある気もしますが、他に上手い言い回しが思いつかないのでこのままで)。
そこで本作が巧みに用いているのがタイトルです。偽りのアマテラスにダブルミーニングを持たせることで、読者に伝わりやすい刺激的なエンタメを提供しています。タイトル回収はみんな好きですからね。進撃の巨人とか、葬送のフリーレンとか。
特に2話目の構成が鮮やかでした。本作ではアマテラスは雨纏う母なのだと読者に認識させたのち、本来の天照を出し、対立させる流れはお見事の一言。3話目はスサノオを出し、今後の大きな物語展開を読者に提示しセットアップを完了させた技術も素晴らしいです。
ただ、6000字×3話に収めるためにやや展開をまいた印象を受けました。特にヒミヲとイワト様に関するエピソードはかなり薄く感じます。主人公を含め、各キャラに役割としてのコマ感をどうしても感じてしまうので、もう少し書き増して2話目後半〜3話目前半の絶望感を出して欲しいなと思います。ただ、神視点であえてそういう構成にしてるのであればこのままでもいいかもしれません。ただ、難易度は更に上がると思います。
②このテイストで、古代日本神話を下敷きとして神と人のドラマを描いていくつもりですが、合いそうなレーベル、またはここをこうすればこのレーベルに合いそう、などの、賞に出すにあたってのお話がいただければと思います。
この話を読んだ時にまず浮かんだベンチマークは「空色勾玉」のシリーズでした。あの系統で攻めるのが1番良いと思います。
故にライトノベル的な公募先は候補から外れると思われます。ギリギリ電撃文庫が入るかもしれませんが、昨今の傾向を見てるとちょっとキツイと思います。もしラノベがいいとしたら、もっとスタンドバトルさせないといけないですし、もっとキャラを華やかにしないとですが、それはあんまり作品のカラーに合ってない気がします。
ですので候補としては一般文芸レーベルで幅広いエンタメを受け入れている実績のあるポプラ社や、オレンジ文庫が上がると思います。空色勾玉が徳間書店から出てますので、徳間文庫が開催してる大賞に出すのもありかもしれません(去年まで次世代作家大賞っていうのがあったんですが、今年は音沙汰ありませんね……)
どちらにせよ、ターゲット読者層は小学生〜大人まで幅広く、学校の推薦図書に乗るようなもの。になると思いますので、この辺を意識しつつ構築するのが吉かと思います。神と人とのドラマはもちろんですが、そこに人と人とのドラマが混ざった方がより受けると思います。書籍化待ってます。
異世界転移デザイナーの魔法陣
① 講評
② 今回1位を取りきれなかった要因はどこか。
書籍化を狙うにあたってのアドバイスなどあればぜひ!
・peco先生
①題材の着眼点が素晴らしいですね! 『魔法陣のデザイン』という、現実における専門職とファンタジーの掛け合わせ、そこから発生する問題や展開が、分かりやすいエンタメとして纏まっています。
特に、主人公とヒロイン役の子達が会うところはめちゃくちゃ主人公が人間らしくて良いです。コミカルな印象マシマシなので、凄く好感が持てます。
二話三話も、題材を活かした分かりやすさを維持しつつ、デザイナーらしくちょっと変わった着眼点で展開していて、『これだよ! これこれ!』という気持ちを存分に味合わせていただきました。
謎や引きの転がし方も丁寧でスムーズ、少年漫画に近い世界観の広げ方で上手いなー! と思いました。
②取り切れなかった要因は、『運』です。コロシアムや書き出し祭りなどのトーナメントや投票形式の無差別ジャンルの殴り合いは、対立する作品や掲載順、その時の読者の比重によって結果が全然変わります。
もし本当に『一位を取りに行く』作品を書く場合は、玄武聡一郎、みつい@天狗、井戸先生、小鳩子鈴先生の作品を参考にしましょう。
要はミステリ構造のサスペンス、もしくは人間ドラマ=物語構造の完全一致です。
設定的な面で魅せる作品がミステリ構造、男女向けと分類されるタイプの作品で強いものはヒューマンドラマです。今回の場合、こぶつきの構造が完璧でしたね。
異世界デザイナーは男性向けのファンタジーシナリオでヒューマンドラマとしての目的部分が薄めなので、キャラクター性などの総合値は同じくらいですが、物語とキャラクターの一致性という部分では、『次元の』などの謎に関わる部分の開示が為されていないので多少の乖離があります。
という点で、少々『読者層の広さ』という面で不利な要因はあったとは思いますが、この作品そのものの瑕疵ではないです。男性向け異世界転移ファンタジーとしてはほぼ完璧ですし。
後言及するとすれば、これはあくまでも私自身というよりは『俯瞰で見た場合の一般的な目線』でですが、『先生』というキャラクター性を与えた点とキャラクター造形の乖離自体はあります。
『酒を飲む』『凄む』等の行為は、冒頭の『ちょっとお間抜けだけど頼りになる先生』という『先生像』からは外れますね。そこを個性と取るか、思っていたのと違う、と取るかは読者の感受性によるので。
優勝したこぶつきに関しては、そこの揺れはありませんので、バランス的には個性を早くに出し過ぎた、というところでしょうか。
最初の登場時点で『二日酔い』であったり、強気な人間である、という点を強調していると印象は一致しますが、それが正解かどうかはわかりません。あくまでも『一致性』のみに言及するのであれば、という話です。
感想:主人公がとても好きですね! これは個人的な性癖ですが、この人中身ヤンキーです。歳食って丸くなっただけですね。良いぞもっとやれ!
ヒロイン二人も別々の意味で『良い』性格をしていて、そこも私的には高評価ですね。キャラクター性がハッキリしているほど、私は好きになります。
ここからどうなっていくのか、楽しみですねー♪
・井戸正善先生
【はじめに】
異世界ファンタジーとして、とても安定して読めました。
するする読み進められる内容でしたし、引っかかる様な部分もありませんでしたので、かなり良い感じにまとまっているという印象です。
読後の印象が少し薄いのが気になるところです。以下に詳しく見ていきます。
【キャラクター】
主人公であるヨシアキの能力や強みがはっきりしていて、きちんと活躍の場が表現されている。現地での立ち位置がある程度明確で、その能力をしっかり評価する周囲の人物もいる。
欠点も、読者に嫌悪感を与えるかというとそこまでではない程度だったので、全体的に非常にバランスの良いキャラクターになっていると思います。
ただ、そのバランスの良さが地味さに繋がっているように思います。
ヨシアキは基本的に「良い人」なのですが、その分癖が少ない人物になっているので、能力以外にあまり印象が強くないのが難点です。
その能力についても、派手なものではないので、文章として見せ場を作るのが大変だと思います。今回のようなミステリの謎解き的書き方は、そういう意味でも大正解で、だからこそ評価されたのだと思います。
これが普通のバトルだけだったら、ここまで面白くはならないでしょう。
できれば、ヨシアキの性格なり価値観なり、あるいはその過去に、読者へ強く印象付ける何かがあると、差別化になると思います。変な癖とか。
他作品ですと、例えば能力を使う時にちょっと性格が危険な感じに変わるとか、金に執着するとか、そういうクセですね。
良い人は好印象を与えますが、どうにも好印象って特徴としては弱いのですよね。
【ストーリー】
物語の流れはスムーズで、良い感じにまとまっていると前述していますが、その分意外性には欠けるというのが正直なところです。
本作で言えば、主人公の能力が提示され、その能力が活かせる問題が存在し、見事に解決して、さらに戦いの盛り上がりの予感が生まれる。
3話目までの間の流れをざっくりと書くとこんな感じですが、非常にきれいにまとまっていて、よどみなく読み切れる分、引っかかりが無さすぎる印象があります。
そこで、前項に書いたようなヨシアキの「特徴」が強烈であればあるほど、物語の流れに変化をもたらし、読者の予想を裏切る可能性があがります。
今は先が読めすぎるので、作品全体の印象を特徴づけるためのキャラクター性がガツンと物語を左右するレベルで存在すれば、もっと面白くなりそうです。
☆今回1位を取りきれなかった要因はどこか。書籍化を狙うにあたってのアドバイスなどあれば。
これは完全に個人的な感覚で話すのですが、ここまで書いた通りに「上手に整えられ過ぎている」ことが、むしろ印象の薄さに繋がっているのかな、と思います。
ヨシアキが、読者から見て能力以外で読者の興味を惹ける何かがあると、作品の印象そのものが大きく変わると思います。
難しい課題だとは思いますが、全体の出来が綺麗な分、ここが一番のポイントになるでしょう。
・玄武聡一郎
① 講評
異世界転移ということで読む前はやや身構えましたが、転移してからかなり経った時点から物語がスタートしており、素晴らしいセットアップを決めていたと思います。その中で核となるデザイナー・魔法陣の要素を中心に話を展開させ、主人公の立ち位置、キャラ立て、問題提起が流れるようになされていました。非常に巧みで、無駄がありません。
また、ヒロインのキャラ立ても素晴らしかったです。
「いいの! これで動いたんだから成功なの! あとは先生があたしを褒めるだけなの!!」
このセリフだけでデイジーのキャラを説明できています。ソシャゲのガチャで当たったキャラはみんな一言セリフを言いますが、あのセリフ一つでキャラの性格が想像できますよね。あれに通じる、非常に強い、作品の顔となるキャラであると感じました。
2話目3話目の展開も王道ながらオリジナリティがありました。主人公のスキル説明からの問題解決は説得力がありますし、敵キャラは普通に嫌なやつでボコボコにしたくなりますし、次元時計の件も気になる引きとして機能しています。
伏線らしきものは無限に引いてありますし、それを回収するだけでも10万文字はゆうに超えるでしょう。書籍化まで見据え、非常にタクティクスが練られた堅実な作品であることは間違いありません。
あと、これは個人差があるかもしれませんが、めちゃくちゃ文章が読みやすかったです。主役の年齢が高いのですが、地の文は堅苦しくなく、当たりも柔らかです。この辺りの読みやすさも、この作品が多くの読者に支持された一つの要因であろうと推測します。
② 今回1位を取りきれなかった要因はどこか。
書籍化を狙うにあたってのアドバイスなどあればぜひ!
1位との票差は7票で、これを誤差と捉えるか有意性のある差と捉えるかは人によると思います。
今回は有意性がある、つまり明確になにが差があったという前提で話を進めます。
実は決勝戦に残った4作品は大きく二つに大別できます。一つはWEBテンプレートのある作品。もう一つは、WEBテンプレートのない作品です。前者は優勝した婚活魔王と異世界転移デザイナー、後者は偽りのアマテラスとカンパーニュが該当します。
つまり本作の最大のライバルは婚活魔王だったということです。比べると分かりますが、実は婚活魔王と異世界転移デザイナーの展開(1話目〜3話目の構成)は非常によく似ています。ガワが違うだけで、根幹をなすテンプレはほぼ同じです。ただし、想定読者が違います。婚活魔王は女性向け、異世界転移デザイナーは男性向けです。今回のコロシアムにおける読者層の性別比で女性が多ければ、当然異世界転移デザイナーは不利になります。
ただ、これも作者様の求める回答ではないと思いますので、読者の性別比が1:1であったと仮定します。
その場合、婚活魔王と差がついた理由は2つ考えられます。
1つは登場人物の善悪性です。婚活魔王には悪性の登場人物がいません。全員なんらかの形でいい人です。一方、異世界転移デザイナーではナインヘッドという悪者が出てきます。どっからどう見ても悪者です。そして悪者は制裁されなくてはいけませんが、話の構成状、ナインヘッドはまだちょっと生きています。この次の話で完全に制裁されると思いますが、カタルシスが完了していません。
どちらが良いという話ではなく、どちらが心象的に読後スッキリするかという話です。ナインヘッドが完全にボコボコにされていたら、また少し票の動きは違ったかもしれません。
2つめは、視点の変更です。本作は1話の時点では主人公視点で話が進んでいますが、2話目後半〜はデイジーに視点が移ります。個人的には、ここの視点変更の必然性が薄かったように思えました。
ナインヘッドの制裁パートに入るわけですが、同時に魔法陣が起動しなかったことの説明パートでもあります。説明を入れるのであれば、主人公視点の方が補足の説明を入れやすいですし、もし制裁を鮮やかに描きたいのであれば、ナインヘッド視点という手もあります(ミステリの犯人役視点的な)。もしくは助けられる者の立場、アヤメ視点にする手もあります。どちらにせよ、魔法陣については詳しくない、助手orヒロインであるデイジーに視点を寄せたメリットは少ないように思われました。
視点変更は読者にとっては割と大きな変化ですので、一視点で統一し、心情を深掘りした婚活魔王との差が僅かに開いた可能性は否めません。
とはいえ、これらはあくまで可能性の話に過ぎません。票数が200票、あるいは1000票になれば結果が変わっていたかもしれない。それくらいの接戦であったと思います。
書籍化を目指すに当たっては、もう少し派手な要素シーンを加えると良いかもしれません。18000字ですと、そろそろ2枚目の挿絵が入る頃合いかと思いますので、画映えする派手な展開をひとつ盛り込むのは手かと思います。そうすることで、物語全体もシャープになり、いい感じにドライブすると思います。
そのほか、各先生方に気になった作品についても語っていただきました!
・peco先生
『『あざと可愛い』姫勇者さま!〜元悪役令嬢の彼女が俺の事を好きすぎる!?〜』
というわけで続きです。え? 下克上で決勝二位三位と同票取ったなら、この作品達も二位三位ですよね?(きょとん)
というわけで、姫!!!! 好き!!!! 私は君のようなヒロインが!!!! 大好き!!!! です!!!!!
物語としては、色々二転三転しますが主軸がしっかりしていて、凄くラブコメしていて良いですね。
勇者滅べ。そして幼馴染みに目移りするな主人公も滅……ぶと姫ちゃんが悲しむので許してあげます。(何様)
キャラクターの個性が非常にハッキリしていて、文章も軽妙な物語に合っていて読みやすいですし、ノンストレスです。
でもやっぱり姫ちゃんですよ。貴女の魅力が素晴らしいです。このまま突っ走って欲しい!
『さざなみが呼んでいる』
ザ・ホラー! ですが、私の印象はクトゥルフや不条理系少女向けの印象ですね。
構造的にホラーとミステリーは相似なので、その観点から見ても引きが素晴らしいですね。謎がちゃんと転がっていくのでワクワクしますね!
徐々に怪奇方向に寄っていってますが、まだまだ油断は出来ません。主人公達の目的が『あの人の為』というところまでは明かされていても、その人がどういう状態なのか、何故彼女がアレをもとめるのかは未だ伏せられたまま。
人の業と怪異の両面、どちらも楽しめそうで大変素晴らしい! 明かされる真相にどんな後味の悪さが眠っているのか、ハッピーエンドは確率低いですが、明かされた時には人と怪異、一体どちらが本当に怖いのか!? 気になりますね! 面白かったです!
『闇色の世界で、禁断の果実をほおばって』
ああああああああああああああああああああ好きぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーーーーーー!!!!
何もかも全てが好き!!!!!!!!!
・井戸正善先生
『さざなみが呼んでいる』
面白いサスペンスホラーでございました。
浴槽に入ることが怖くなる心理描写が一人称ならではのもので、特に良かった部分です。
また、橋本が物語の中心線への入ってくる流れやキャラクター描写も特徴がわかりやすくて物語がスムーズに頭に入ってきて、作品全体の行き先が明確に見えてきたように思います。
物語の構成がきれいだと思いました。
一つだけ「勿体無い」と思ったのが、高瀬の死のインパクトが薄く感じた部分です。
由香は彼女に惹かれる部分がありましたが、転校当日に初対面だった彼女に対する感想はそれだけで、読み手としても具体的に高瀬に対するイメージが固まらないままに死亡退場となってしまいました。
謎めいた部分を強く感じるのはそうなのですが、それ以上に読み手としては「よく知らない人が亡くなられた」程度の印象になってしまったので、遺体の状況のインパクトに比して、由香の視点に立っている読み手としては高瀬の死について強い印象が持てなかったのです。
読み手にも高瀬という美女の爪痕を残して欲しかった部分だけが惜しいと思ったポイントでした。
『はぐれた僕らのカンパーニュ』
全体的に軽妙なミステリとして面白く読めました。
ただ、主人公のはずの桝田よりも南條の方が物語を動かしている印象が強いのはちょっと気になる部分です。もう少し役割を桝田に分けてほしかったです。
この短い3話の間に、物語が二転三転していて飽きない構成になっているのも、キャラクターそれぞれが破綻しかける直前になるまで尖った設定なのも楽しめるポイントでした。
ただ、話の流れが早くて、森が自身のことを白状するのが早すぎるのがちょい引っかかるところではありました。
・玄武聡一郎
その他好きだった作品(コロシアム中に投票した作品)をいくつか挙げます。
はぐれた僕らのカンパーニュは訳ありで辺鄙な部署に飛ばされた登場人物たちが、会社の黒い金をかっぱらおうとするサスペンス風味のヒューマンドラマ。一話で提示された目的が痛快で、軽妙な会話もあいまってオンリーワンの読み味に仕上がっていました。1話目の完成度の高さはかなりのもので、圧倒的な票数を獲得したのも頷けます。ただ怒涛の冒頭から変わって2話以降、ターゲット読者層をどこに置いているのかが不明瞭になった点が気になりました。横領問題をメインに置くのであればディテールに甘く、すべてが都合よく進んでしまっている印象です。いっぽうヒューマンドラマとして描くには、登場人物の追加が早く、深堀りが足りなかったように思います。メインとなる軸を明確にし、そこを起点に話を展開することで、より魅力的な作品に仕上がるのではないかと思います。
さざなみが呼んでいるはホラーミステリー。読者と同じ常識を携えた主人公が当たり前の狂気が渦巻く街で起こる事件で巻き込まれていく。王道ながら、確かな筆力で描かれた「自分だけが知らない」ことを軸に置いたホラーは見事なものでした。二話目のラストは普通に泣きそうになりました。読んだのが昼間で良かった。なんなら職場でよかった。恐怖心を煽る文章力と、堂々とした、それでいて繊細なホラー展開からは確かな筆力を感じました。ただ、全体的に王道な展開ゆえに本作独自の真新しさ・フックが足りなかった印象は受けました。Anotherやサマータイムレンダ、ひぐらしのなく頃になどがベンチマークにできると思います。フックとなる強い設定が一つ噛めば、たぶん群を抜いて完成度の高い作品になったと思います。
龍火絶消りゅうかぜっしょうは巨大な龍の存在する架空の世界を描いたファンタジー。本作にはまずあらすじから心を持っていかれました。「8月――龍は燃える」こんなに心躍る見出しはありません。サンタも人魚もお菓子の家もない、けれど龍は存在するという出だしから、巨大な龍へ乗り込む冒頭はまさにアニメか映画のワンシーンのようで、心が沸き立ちました。龍が存在する世界情勢についても納得のいくものであり、とにかく世界観が唯一無二で光っていたと思います。一方キャラ周りの描写は一歩引いている印象がありました。それが淡々とした本作の魅力を作り出している一方で、魅力的な世界観を俯瞰で眺めているような疎外感も感じました。もう少しキャラに対して読者がフォーカスしていけるよう、描写に厚みを持たせても良かったかもしれませんね。とても推していました。
人外ちゃんは命知らずの少年に離れてほしいようですは新青春系ラブコメ。設定にはやや既視感を覚えるものの、Twitter漫画的な展開が取り入れられており、古臭さを感じずフレッシュな感覚で読むことができました。本作はなによりヒロインのかわいさが魅力的で、描写のひとつひとつにときめきました。ぜひ絵付きで見たいところです。主人公のぶっ飛んだ感じもいい具合に描けていましたし、本作のコンセプトにも合致していたと思います。個人的にはかなり推していましたし、もう少し票が入ってもおかしくないと思っていた一作ですが……おそらく展開的な起伏がなかったために埋もれてしまったのかなという印象です。例えばもう1人人外の女の子を出して主人公に接触させ、ヒロインの嫉妬感情を引き出すなどの展開が2話目、3話目にあるとまた結果が違ったかもしれませんね。
他にもたくさん書きたい作品はあるのですが、すみません、タイムオーバーのようです……。
ここには書ききれませんでしたが、コロシアムに参加された作品は、どれも素晴らしい仕上がりのものばかりでした。読ませていただき、本当にありがとうございました。
以上になります!
peco先生、井戸正善先生、本当にありがとうございました!




