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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第21章】鋼鉄女神が夢見る先に
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21−12 ベルゼブブの指輪

 あらかた片付いた……のか? ルシエルと一緒に奮戦すること、多分小一時間くらい。竜族の皆さんの助力のおかげか、向こう側の戦力が大分手薄になってきたように思える。デカディウスをスクラップにし、ついでに周囲のラディウス天使達も微塵切りにしたところで……いよいよ、プランシーを探そうということになったのだけど。


「……ルシエル、気づいていたか?」


 しかし、それ以上に……今は左薬指の違和感が気になって仕方ない。トクントクンと脈打つような温もりに、何かに必死に耐えているような逼迫感。もしかして、この指輪の反応も「お揃い」なのかと思い、ルシエルに尋ねてみれば……


「あぁ、気づいていた。……この指輪、何かに反応しているよな?」

「やっぱり。……ルシエルの指輪も熱くなっているんだな?」


 俺の問いに、肩上でコクコクとルシエルが頷く。そうして、左薬指をマジマジと見つめたかと思えば……ルシエルが勢いよく指輪を引き抜こうとする。すると、次の瞬間……!


「それを すてるなんて とんでもない!」

「……はい?」


 うん? 微妙に呪いのセリフが変わっているような? 一応は外せない設定は変わっていないっぽいけど……。


「いや、ただ外そうとしただけで、別に捨てるつもりはないのだが……?」


 妙に間の抜けた指輪の反応に、ゲンナリと肩を落とすルシエル。指輪自体は相変わらず、色は真っ赤だけど……おや? よく見れば、内側から仄かに光っているような気がするぞ?


「なぁ、ルシエル。これ……ちょっぴり、光ってない?」

「えっ? 本当だ。言われてみれば、確かに……」


 俺の指は黒い毛で覆われているせいか、ルシエルの指先よりも余計に輝きが強く見える。その様子に……ハタと何かに気づいたらしい。ルシエルが思い出したように、ゴソゴソとポーチから精霊帳を取り出して、サーチ鏡を指輪に翳す。


「ルシエル?」

「……これ、機神族化し始めているな……」

「えぇッ⁉︎」

「示されたデータがコンラッドが離れた時と、よく似ている」


 ルシエルが示す内容を俺もどれどれと、視線だけで確認すれば。確かに、そこには珍妙な鑑定結果が踊っていた。


【ベルゼブブの指輪(精霊名調査中)、魔力レベル未特定。登録者:未特定】


 しかし、精霊名が「ベルゼブブの指輪」って。もうちょい、気の利いた精霊名はなかったんだろうか。こうなると、神界のネーミングセンスも微妙な気がする。


「だけど、それって結構不味くないか? このまま外せない指輪が精霊化するとなると、指先に敵が居座ることになるんだよな?」

「いや、どうだろうな? ……この魔力の感じだと、指輪側に敵意はないように思える」

「お?」

「むしろ、私達を守ってくれているというか……」


 ルシエルは俺には感じられない「魔力の雰囲気」を機敏に読み取っているらしい。あっ、そう言えば。ルシファーも言っていたっけ。「大天使クラスになれば、相手の魔力感知はできて当然の芸当だ」……って。きっと、ルシエルも大天使ならではの「当然の芸当」ができるようになっているんだろう。おぉ……俺の嫁さん、超頼もしい!


「もしかして……この指輪、グラディウスの悪影響を肩代わりしてくれているのか?」

「肩代わり……って、ことは何か? これがあれば、もうちょい深い所にも潜れるかも知れないのか?」


 俺の疑問にやっぱりコクコクと頷くと……今度は、例の大天使用のパネルを取り出すルシエル。そうして、彼女が画面を何度かスライドさせると、ニョキっとパネルから白いアンテナらしきものが生えてきた。


「うおっ⁉︎ ルシエル、それ……何だ?」

「あぁ、これか? 大天使用のデバイスには、簡易的な魔法道具の鑑定ツールが搭載されていてな。この突起物をかざす事で、対象の魔法道具に害がないかをある程度、見極めることができるんだ。ルシフェル様はもっと大掛かりな装置を発動できるのだけど……指輪相手であれば、このくらいで十分だろう」


 相変わらず、天使様側の道具はハイテクだなぁ。だけど……そのアンテナ、2本ある必要はあるんだろうか? そんでもって、そんなに長い必要もあるのか? なんとなくだけど……。


(動きまで、ベルゼブブの触覚に似ている気がする……)


 戦場のど真ん中で、「そんな事」を悠長に気にしている暇もない。場違いなのも、分かっている。本当に分かっている。だけど、この動きはどうしても生理的……と言うよりは、本能的にゾワゾワするんだ。


「……ルシエル、それが便利グッズなのは分かったから……触覚はそろそろ引っ込めてくれないかな」

「えっ? どうしてだ?」

「何となくだが、ベルゼブブを思い出しちまってな。ついでに、あの部屋を……」

「わ、分かった! すぐに引っ込めるから、それ以上はいいぞ! と言うか……私まで、気色悪くなってきたじゃないか!」

「あっ、うん。ゴメン」


 ネーミングセンスは共有できなくても、この得体の知れないゾワゾワ感は共有できるっぽい。慌てて触覚を引っ込めさせると、そのままパネルにスラスラと指先を踊らせるルシエル。


「とりあえず、これでよし……と」

「うん? 何がだ?」

「もしかしたら指輪さえあれば、グラディウスの悪影響を緩和できるかも知れないと伝えてみたんだ。ほら、私達以外にも2組ほど同じように指輪を身に着けているペアがいただろう?」

「あっ、そういう事か」


 しかし、マモンとリッテルの組み合わせはともかく……ベルゼブブとルシファーのご夫妻はその後、どうなんだろう? この場合に重要なのは夫婦仲の良さではないと思うが、指輪自体がシンクロ率に影響する魔法道具だった以上……ほぼニアイコールっぽい仲の良さを気にするのは、当たり前の思考回路というもので。


(しかも、ベルゼブブはどこに行ったんだろうな? そう言えば、いつの間にか見かけなくなった気がするが……)


 まぁ、今は誰よりもしぶとく生き延びそうな親玉を気にする必要はないか。とにかく、目の前の暴走霊樹を止めるために、プランシーを探すのが最優先。何より、ルシエルやルシファーがいる以前に、指輪の所有者にはマモンも含まれている。……これだけのメンバーが揃えば、大抵の相手には問題なく対抗できそうな気がするが。この際、ベルゼブブ抜きでも何とかなりそう……か?

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