20−66 女神とやらをボコりに行くぞ
「た、大変なの、あなた!」
「あ?」
ルシエルちゃんのエスコートも無事に完了して、屋敷でまったりとコーヒーを堪能していると。神界へお仕事に行っていたはずの嫁さんが、転がるように俺の胸に飛び込んでくる。……息も相当に上がっているが、どうしたんだ?
「大丈夫か、リッテル。とにかく、落ち着いて……」
「ご、ごめんなさい、あなた……。落ち着きたいのは、山々なのだけど……今はそれどころじゃなくて! ついさっき、ヴァンダートが焼き尽くされてしまったの……!」
「はい?」
ヴァンダートが焼き尽くされた? いや……焼かれるも何も、あそこは既に枯れ野原な不毛砂漠(原因は俺です)じゃん。そんな場所を今更、誰が……何の目的で焼き尽くすって言うんだ?
「……ついにローレライが浮上したみたいなの。それでね、グランディアと名乗る女神らしき奴が……ローレライを使って、ヴァンダートを……」
うん、動機がサッパリ分からん。ただ、なんとなくだが……「女神らしき奴」は、手始めにヴァンダートを焼き尽くしてみたんじゃなかろうか。新しく手に入ったおもちゃを試したいのか、力を見せつけたいのか。どっちかは知らんが、どうせ下らない理由だろうと決めつける。
「なんつーか……理由はどうあれ、放っておくのもマズイだろうな。で? その様子だと、本格的にお呼びがかかった感じか?」
「はい……連日で申し訳ないのですけど、あなたの力を借りたいの……」
「ハイハイ、存じてますよ。今更、しおらしく頼まれなくたって、ちゃんと力は貸してやりますから。それじゃ……クラン、ラズ、ゴジ!」
「はっ、はい!」
「パパ、お仕事ですね!」
「そう言うこった。……お前ら、今すぐ強欲の奴らをかき集めてこい。全員で女神とやらをボコりに行くぞ」
ここは総攻撃で殴り込みに限るな。俺の号令に素直に従って、勢いよく散っていくクソガキ共を見送りつつ。ただボコるだけではつまらないと、ローレライの沈静化についても思いを巡らせる。ここは……早速だが、兄貴とポンコツ悪魔第1号にも活躍してもらうとするか。
「……えぇと、リヴィエルにメッセージを送信……と。……これで兄貴達もヴァンダートに来てくれるかな」
しかし、本当に便利だな、このパネル。天使ちゃん相手に連絡が取れるだけでなく、指で直接書き込めるもんだから、手紙を書くのもとってもスムーズ。しかも、インクで手が汚れるなんてこともないし、お届けのためにクソガキを稼働させる必要もないし。便利な上に動きもサクサクしてて、ちょっとクセになりそう。
(多分、リヴィエルならよしなに察して、きちんと話を通してくれると思うし……)
今日のさっきで「魂の怨嗟を探す」なんて、話になっていたけど。この場合、良くも悪くも「探す手間が省けた」とするべきか。いくらヴァンダートが不毛の地と言えど、無人ではないだろう。であれば、新生女神の暴挙でおっ死んだ奴もそれなりにいると考えていい。……魂の怨嗟も大量発生しているだろうことも、十分に予想できる。
「で、リッテル。戦闘に参加するのは、もちろん俺達だけじゃないんだろ?」
「えぇ、もちろんよ。天使長様によれば、ベルゼブブ様の方で他の勢力の皆様にもお声掛け下さっているそうですし……神界側も最大限の攻撃を展開予定よ」
「最大限の攻撃?」
「ローレライが使ったと思われる、兵器はグラディウスと呼ばれているのだけど。その兵器は神具・ロンギヌスをベースにしているかも知れないと、ちょっと前に分かっていたらしくて。それで……向こうの攻撃に対抗できるよう、かつての大天使様3人で複数属性の魔法を連結して発動する準備していたのだそうよ」
そう言や、そんなレポートもあったな。確か……ルシファーが昔々に粛清した始まりの天使を蘇生したとか、しないとか……。
(あっ、これか……ナニナニ? ……神界の人手不足を埋めるために、初代大天使様達の能力を引き継がせたのが、今の始まりの天使ちゃん達……か)
この内容……本人は知ってるのかな。彼女達の復活は戦力増強が主であって、救済措置の方がオマケに思えるんだけど。資料の文面を見る限り、彼女達の意志は介入していないっぽい気がするし。
「……ま、俺が他の奴らのことを考えてやる必要もないか。こっちは全員集まったら、出撃と洒落込むぞ。で……他の奴らとは、現地集合でオーケイ?」
「そうね……この場合はそうなるかしら?」
「そ。そんじゃ……俺もお仕事の準備をしますかね」
そうして気に入らないと思っていながら、何だかんだで拠り所の仮面を装着すれば。不思議と、お仕事モードに気分が切り替わる。だけど……。
「……リッテル。言っとくが、この仮面はコスチュームプレイ用じゃないからな? 遊びで使うわけでもなし、俺がこれを着けただけで、そんなに興奮するなよ……」
「もちろん、そんな場合じゃないのは分かっているのだけど……これを興奮しないのは、どう頑張っても無理よ……! あぁッ! やっぱり、いつ見ても格好いいわ……!」
「……そりゃ、何よりでござんす」
とりあえず落ち着け、リッテル。さっきとは別の意味で。今度は呼吸じゃなくて、鼻息が荒いぞ。
(しっかし……出撃前からこの調子じゃ、前途多難だなぁ、もぅ)
今回も敵さんの不安要素よりも、味方側の不安要素の方が大きいんですけど。リッテルは何だかんだで、安定の迷走具合だし……全員無事で帰ってくるには、俺がしっかりと気を回さないといけない気がする……。あぁ。どうして毎度毎度、こうなるんだろうなぁ……?
次回の本編投稿は年明けを予定しています。
普段の投下ペースであれば、土日(12月31日と1月1日)に投稿するところですが、作者本人が大晦日〜元旦にかけて不在ということもあり、1月4日に改めて投稿とさせいていただきます。
何卒、ご理解賜りますよう、よろしくお願いいたします。




