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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第20章】霊樹の思惑
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20−30 新開発の魔法

 ルルシアナの内情に思いを馳せるのも、そこそこに。見れば、ものの見事に結託したダンタリオンとアケーディアが早速、新作魔法の打ち合わせをしている。


(しかし……こうも、簡単に紋を刻めるとなると、少し警戒しておいた方がいいか……?)


 きっと、兄貴の紋章の効果だろう……あんなに喚いていた「出来損ない」が生贄にされる運命とも知らず、きちんと大人しく待機している。もちろん、俺にも出来損ない相手に紋章を刻む事くらいはできるだろう。器のメカニズムを考えれば、魔力因子が少ない奴であれば、俺もそこまで消耗せずに済むに違いない。


(もちろん、あの様子だと……俺が心配するような事にはならないと思うが……)


 しかしながら、それとは別枠でアケーディアがどの程度の相手にまで「無条件で」紋章を刻めるのか、は確かめておいた方が良さそうだ。手段がエンブレムフォースである以上、領分持ちの悪魔には効果はないと思うんだけど……これまでの実例からするに、天使ちゃん相手には効き目がありそうだし、注意しておくに越したこともない。


「あの、ボス……これから、何が始まろうとしているんですか?」


 俺が真祖ならではの悩み(配下のはっちゃけ具合も含む)に頭を痛めていると。おずおずと、これまた不安そうなミカエリスが話しかけてくる。まぁ、そうだよな。あれじゃ、不安にならない方がおかしいよな。


「これから始まるのは、楽しい楽しい魔法実験……ってトコロか。ルシエルちゃんから、ダンタリオンに魔法絡みのお願い事があってさ。自分の趣味ドストライクの依頼だったのが、そもそもいけなかったんだけど。……その上、あいつは何を勘違いしたのか、“大天使様は人を見る目がある!”とか言ってて。……今までにないくらい、超絶に張り切ってるんだよ」

「そ、そうだったんですか……。と、言うことは……リヴィエルももしかして、魔法の中身を知っていたりするの?」

「えぇ、もちろん知っていますよ。ローレライを正常化するために、竜族の固有魔法・ルートエレメントアップを解除するための手段を探して欲しい、という内容だったかと」


 天使ちゃん達は相変わらず、密な情報連携を欠かしていないらしい。リヴィエルの的確な回答といい、リッテル経由の情報が筒抜けだったことといい。彼女達の情報網は、ちょっとやそっとの密度じゃないだろう。


(しかも、最近は階級に関係なく情報が降りてくるようになった……だったっけ)


 そんな事を言いながらリッテルが喜んでいたのを、場違いにも思い出して苦笑いしちまうけど。今は嫁さんのことを考えるよりも、世紀の大実験を見守る方が先だ。


「ボス……あの魔法、本当に大丈夫なんですか? 妙に物騒な内容が含まれている気がしますけど」

「……俺には大丈夫かどうかは、よく分からん。ただ、この辺は元の魔法をベースに組み替えた概念っぽくてな。……お前が心配するのも無理はないけど、生贄のターゲットはある程度特定できるように組み込んでいるみたいだし、万が一があっても、ダンタリオンがくたばるだけで済む」

「えぇッ⁉︎ それはそれで、一大事じゃないですか……!」

「それは仕方ないだろ。概念上、元は術者を巻き込む魔法だったんだから。今はその場にいる“一番弱いヤツ”をターゲットにするように組んでいるみたいだが、失敗した場合は元の設定がしゃしゃり出てくるだろうな。ま、そんなに心配しなくてもいいんでない? あの様子じゃ、ダンタリオン先生は今日も自信満々みたいだから。失敗する可能性は低いんだろう」

「そ、そうですか……」


 それこそ、あいつとの腐れ縁は2000年くらい続いているからな。ダンタリオンのご機嫌の麗しさや、調子の良し悪しくらいはなんとなく、分かるってもんで。

 今のあいつは絶好調も、絶好調。興奮ついでに、ヨルム語の発音が妙に気取っているのも、ノリにノッている証拠だろう。しかし……そこまでわざとらしく、巻き舌で発音しなくてもいいと思うけど。


「アケーディア様、そちらの準備はできていますか? そろそろ、行きますよ!」

「もちろん、大丈夫ですよ。さて……ホラ、行きなさい! ここで生贄になるのが、あなたの使命です!」


 ……なんだろうな。兄貴は誰かを足蹴にするのが、趣味なのか? いくら相手が厄介者とは言え……理不尽な使命を与えた上に、暴力まで振るわなくても良くない?


(ちょっと可哀想になってきたな……)


 俺がただ何となく、とっ捕まえてきただけの「出来損ない」だけど。魂が乗っている事には変わりないもんだから……妙に後味が悪いな、コレは。


「不浄なる大地に根を這わせ、未来の絶望を摘み取らん。贄が血肉を食せ、贄が魂魄を貪れ。大いなる父へ、その吐息で厳格たる自由を与えん……プルエレメントアウト!」


 俺が些細な気まずさを感じているなんて、誰にも悟られないまま。いよいよ、新開発の魔法が発動される。

 プルエレメントアウト……なるほど、「引っこ抜く」か。ダンタリオンにしては、随分と分かり易い名前を付けた……あぁ、いや。これは元の魔法を意識しての命名なんだろう。

 そうして魔法が発動されたと同時に、小さめの魔法陣が生贄の足元に展開される。その後、すかさず小さな輪から光の線が1本伸びたかと思うと、今度は大きな魔法陣がすっぽりとオトメさん(切り株)を囲み始めた。


(……なんか、不穏な気配だな。……このまま続けていて、大丈夫なんだろうか?)


 だけど……当たって欲しくない予想っていうのは、無情なくらいに当たるものらしい。俺が異変に気付いたタイミングとほぼ同時に、ダンタリオンが困惑の声を上げ始めた。


「むむ? まさか……!」

「どうしました、ダンタリオン」

「……生贄の質量が足りないようです。なるほど……きちんと正常化まで持っていくには、それなりの魔力が必要なのですね」


 ちょっと、待て。それって……もしかして、かなりの緊急事態でないの? この状況で生贄が足りないってことは、つまり……。


「ダンタリオン! 魔法をトットと解除しろ! このまま発動してたら、お前が食われちまうぞ!」

「分かっていますよ! それがスムーズにできたら、苦労はありません! えぇと……!」


 くそッ! こんな大事な場面でポカミスしてんじゃねーし! さっきまでの自信はどこに行ったよ⁉︎


「チィっ……! こうなったら、仕方ねぇ! 風切り! カリホちゃん!」

(分かっておる! あれの根元もスッパリいくしかなかろう!)

(お呼びでおじゃるか、主様! ははぁ……これは、相当に緊急事態でおじゃるな!)

「そういうコト。……風切りで魔法を食いつつ、カリホちゃんであいつを根っこからぶった斬るぞ。頼むぞ、2人共!」

(無論じゃ、主様。麻呂を存分に振るうておじゃれ!)

(ふん……小生も構わんぞ。好きなだけ、使えばよかろう!)

(我は……うぅむ、もうちょっと大人しくしていようかの。ほほ……放置プレイも堪らんの)


 放置プレイを口上にした、十六夜の聞き分けの良さにちょいと感謝しつつ。とにかく、ダンタリオンが食われたら大変だと、奴の前に躍り出る。

 ……結局、俺は何も分かっていなかったみたいだ。ダンタリオンの調子の良し悪しと、魔法の出来の良し悪しは関係ないって事に気付かないなんて、間抜けにも程がある。

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