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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第18章】取り合うその手に花束を
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18−44 不機嫌アンド地雷付き

「ごめんね、ハーヴェン。私はちょっと、ゲルニカ様と一緒に長老様に会いに行くから、その」

「おぅ。エルノアとギノの事と……うん。ピキちゃんの確保も任せておけ」

「うん、よろしくね。それと、竜女帝様の所には一緒に来てもらいたいんだ。だから、少し待っててくれる?」

「はいよ。この屋敷で待ってれば、いいんだな?」


 まずはヴァンダートで使われた、固有魔法の正体を探りに。長老様探訪の足掛かりを確保しようと、ゲルニカのお屋敷にお邪魔しているが……。事情を話した途端、相変わらず空気を読むアンテナも敏感なゲルニカが、白の樹海へのエスコートを買って出てくれる。そうして、ルシエルは彼と一緒に長老様に会いに行くことになったんだけど。


「テュカチア。私はマスターと一緒に出かけてくるから、すまないが、お客様のおもてなしと留守番を頼むよ」

「えぇ、もちろんですわ。任せて下さいまし」

「それと……くれぐれも、昨日みたいな無茶はしないように」

「まぁ! あれのどこが無茶なのですか? 母親代理として、当然の事をしたまでです!」


 相変わらず、ゲルニカは奥さんには滅法弱いみたいだな……。昨日、何かをやらかした様子の奥さんを諌めると見せかけて、押し切られているのだから、立場も相当に弱いと見える。


「……そ、そうか……。あぁ、いずれにしても、ハーヴェン殿」

「うん? ……なんか、妙に不穏な予感がするけど。何かな?」

「アハハ……そう、だよね。その……すまない。留守番ついでで、とっても申し訳ないのだけど……よければ、ギノ君の話も聞いてもらえると助かるよ。ギノ君、ちょっと困っているみたいだったから」

「おぅ……?」


 ギノの話を聞くのは一向に構わないし、エルノアやギノの様子を見るために、俺はお迎えがあるまではモフモフズと待機するつもりだったけど。何やら、奥さんの「無茶」に関連があるのか……ギノの身に、かなりの災難が降りかかったらしい。嫁さんとゲルニカを見送っても、妙に釈然としない。


(これは、とりあえず……ギノの様子を見てから、考えればいいか?)


 お茶を用意しますわ……と奥さんに言われて、いつもの応接間に移動するけれど。ゲルニカの不安な前置きに首を傾げていると、そのギノが向こうからやってくるじゃないの。……う〜ん。ここまで待ちきれない様子を見る限り、結構な緊急事態なのか、これは。


「ハーヴェンさん……!」

「お、おぅ? どうしたよ、ギノ。まずは脱皮達成おめでとう、と言いたいところだが。お前、それどころじゃなさそうだな……」


 見た目年齢・12〜3歳位だと思っていたギノが、今や立派に16歳くらいの青年に見える。しかし、中身はすぐに大人になれるわけではないようで、再会した瞬間に、何故か涙目で歓迎されているんだけど。……えっと。一体、この子に何があったのだろう?


「坊っちゃん、どうしたでヤンす? 折角、脱皮できたのに、なんで泣いているんでヤンすか?」

「う、うん……ごめんよ、コンタロー。その。僕……この先、竜族としてきちんと生きていけるのか、不安になってて……」

「いや、坊っちゃんはもう、立派な竜族でしょうに。脱皮も乗り越えられたんなら、自信を持っていいと思いますぜ?」

「そうですよ。それに、坊っちゃんはますます大人びて、とても逞しくなりましたね。何も、不安になさることはないのでは?」

「みんな、ありがとう。だけど、僕が不安なのは、自分自身のことじゃなくて……」


 そうして、応接間への移動時間さえ惜しいとでも言うように、トボトボと歩きながらギノが悩み事の中身を教えてくれるが。

 あちゃ〜……。多少、予想していたとは言え……脱皮達成早々に、婿様候補(この場合は獲物か?)認定されちまったのか、うちの坊ちゃんは。


「僕、そんなにすぐにお嫁さんを決められないです……。しかも、昨日はやってきたみんなが、ちょっと騒いだから……母さまのご機嫌も、ものすごく悪くて……」

「……だろうな。奥さんにしたら、エルノアの婿殿候補が他の子に掻っ攫われるかも知れないもんな。そりゃ、ピリピリするのも仕方ないかもなぁ……」


 応接間に到着する頃には、ゲルニカが言っていた「無茶」の中身も、ギノの口からバッチリ公開されるものの。しかし……奥さん、マジで容赦ないな。彼女以上に上手にお茶を淹れろだなんて、なかなかに厳しい条件だぞ、それ。


「ハーヴェンさん……! 僕、どうすればいいんでしょうか? それでなくても、ルノ君も巻き込まれていて……僕がちゃんととしなければ、ルノ君も困ってしまいます……!」


 おぉう……。生まれたばかりのルノ君まで、お婿さんの対象に含まれるのか……。冗談抜きで、竜族のお婿さん争奪戦は熾烈だな。しかも、奥さんの不機嫌アンド地雷付き。ギノもだけど……ゲルニカも相当に苦労しそうだな、こりゃ。


「あい……でしたら、坊ちゃん。坊ちゃんはおいら達と一緒に、帰って来ればいいんじゃないですか?」

「そ、それはそうなのかも知れないけど……でも」

「……兄たん、いなくなる……ルノ、寂しい」


 コンタローの当然と思える提案を、ギノの影から小さな伏兵が却下してくる。ギノを「兄たん」と呼びつつ、ルノ君が不安そうな顔をするもんだから……ギノは帰りたくても、帰ると言えないんだろう。まだまだ舌足らずな様子を見ても、幼いルノ君をお婿さん候補にするには、かなり無理がある気がするが。まぁ、人間界でも生まれたばかりの赤ん坊同士で親が勝手に相手を決める事もあるみたいだし……竜族の男女比を考えれば、これはこれで自然な思考回路なのかも知れないな。

 それにしても、ギノもルノ君もゲルニカから女難の相を受け継いでいるのが、何ともまぁ、不憫で仕方ない。しかし……どうして、ゲルニカさん家の竜族男子はこうも輪をかけて気弱なんだろうな。もうちょい、ビシッと意思表示してもいいじゃなかろうか?

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