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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【おまけ】天使と悪魔の後日譚
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Ep-15 天使と悪魔の共同作戦

「いよいよ、本格稼働だな」

「あぁ。……ルシエル、準備はいいか?」

「もちろん! ハーヴェンと一緒なら、どんな事だって乗り越えてみせる」


 お揃いの白銀の腕輪をどこか誇らしげに掲げる、調和の大天使・ルシエル。彼女の細い腕で燦然と輝いているのは、アケーディアの発案で開発された魔法道具・メモリーリアライズのプロトタイプだ。

 「誰でも、深魔に対処できるように」。深刻化する新種の魔物の出現に抵抗するため、生み出された魔法道具は3つの機能を搭載している、神界・魔界両陣営の提携の末に出来上がった自信作。誰よりも悪魔の心象改善に尽くしてきたルシエルが、天使と悪魔の共同作戦を誇らしく思うのも無理はない。

 しかし一方で……ハーヴェンは嬉しいような、ちょっぴり恥ずかしいような気分で頭を掻いている。出会った当初は、信頼のシの字もなかった彼女がそんな事を言うようになるなんて。……時代は変わったものである。


「……! これが、噂のDIVE現象か……」

「あぁ。この先は深魔の深層心理に繋がっている。一応、稼働試験は相当に実施したが……本番稼働は今回が初めてだ」


 ハーヴェンが妙な愉悦に浸っているのを他所に、ルシエルが腕輪の魔法回路を起動させると……彼らの目の前に現れたのは、黒く渦巻く「深魔」の心の入り口。拘束魔法に捕らえられた深魔の腹部から渦巻くそれは、底無しを思わせる漆黒を帯びている。


 Dark Impulse within Vicious Eddy……黒い衝動を生む、悪意の渦。メモリーリアライズでの発現を確認されて以来、今では略称で「DIVE現象」と呼ばれている。魔法道具の構成として、ダークラビリンスをベースにしているため……複雑さに程度はあれど、中はちょっとした迷宮になっているのが常だ。


「生身のままでの潜入になるが、向こうは精神世界……こちらの物理的法則とは、異なる法則が適用されている可能性がある。だから……飛び込んだ先がどんな法則で縛られているのか、早急に把握することが攻略の鍵だ。そして、元凶らしき記憶を見つけたら、腕輪に仕込まれている消去機能でピンポイントに抹消する」

「了解。魔法道具になっていれば、消去に関しては心配しなくてよさそうだな。……物理的法則が変わっていても、効果を発揮してくれそうだし」


 飛び込んだ先で魔法がいつも通り使えるとは、限らない。その点、魔法道具は材料の調達や構築が難しい反面、性能面では優秀である。仕込まれている魔法効果は原動力さえあれば、誰が使っても一律効果を発揮する。その上で転移魔法もしっかりと搭載しているため、場合によっては緊急脱出も可能だ。しかし……。


「……同じ対象に対して、DIVE現象を複数回発生させる事はできない。この現象はどうも、魂に対してそれなりの負荷が掛かるものみたいでな。つまりは……元凶の抹消に失敗し、脱出を選んだ場合は強制的に鎮めるより他になくなる」

「そうか。要は、緊急脱出は最終手段だって事、覚えておくよ。そうならないためにも、頑張らなきゃな」

「うん、そうだな」


 互いに頷き合い、どちらからともなく互いの手を取る。彼の大きな手をなぞるように、キュッと握りしめれば。確かに返ってくる反応に、ルシエルはいつだって勇気をもらえる気分になる。


 その出会いは気まぐれで、偶然で、どこまでも想定外だったのかも知れない。だけれども。互いに惹かれ合い、互いに同じ時間を分かち合い、愛でてきた現実はどんなことがあろうとも絶対に色褪せない。

 だからこそ……どんな困難にも、立ち向かえる。どんな苦難だって、乗り越えていける。今まさに轟々と口を開けている、悍ましい恐怖だって……毅然と克服してみせる。


(調和の大天使の名にかけて……いや。ハーヴェンの嫁の座にかけて。……全部全部、乗り越えて進んでやる。だから……待っていろ、ヴェグタムル)


 暗澹と広がる漆黒の先に、元凶を生み出しているらしい相手を想像し……ルシエルは自らを奮い立てる。


 ここからもまさに、正念場。それでも……どんな事が待ち受けていようとも、ルシエルには彼がついている。1人ではできなかったことも、彼となら成し遂げられる。確固たる根拠も理屈もなくたって。できると言い切る自信が、今のルシエルにはあった。

 それは信念という名の、1つの信頼の形。「一緒なら、どんな事だって乗り越えてみせる」と啖呵を切ったのは、決して嘘じゃない。大好きなハーヴェンがいて、大切な仲間達がいて……守るべき相手がいる。愛すべき世界のためなら、どんなに傷つこうとも。……最後まで、生きることを諦めないでいられる。


 それはかつては落ちこぼれだった天使が、ようやく見つけた絆であり、愛であり……掛け替えのない、キラキラと輝く日常。彼女を取り巻く世界が、何の変哲もなく続いて行けるのなら。それこそが、彼女が願う世界の在り方であり、彼女が望む日常の在り方なのだった。


(だから……私は負けないし、諦めない。どんな事があっても、大事な日常を守るんだから)


 ルシエルとハーヴェンの「新しい任務」は今、始まったばかり。彼女の大好きな世界を壊そうとする新しい災いは、しぶとくそこかしこで芽吹こうとするに違いない。そんな芽を摘み取ながら、元凶へ辿り着くこと。それが大天使・ルシエルとそのパートナー・ハーヴェンに与えられた……世界の命運を賭けた使命だった。

【作者より】


後日譚の「おまけ」は続編の導入部分として加えていますが、「俺たちの戦いはこれからだ!」感が満載で、不完全燃焼な感も否めません。

しかしながらこれ以上続けてしまうと、2000話とかになりそうですので(汗)。

主人公を変更する目的もあり、なんとな〜く続きそうな雰囲気を醸し出しつつ、幕としたいと思います。


丸4年間かかってしまいましたが、個人的には執筆自体が楽しかったので、完走できてしまいました。

長らくお付き合いただきまして、誠にありがとうございました。


※なお、最後の最後にダンナーズからご挨拶があるようで……。

 もしよろしければ、彼らのボヤキも聞いていただけると幸いです。

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