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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【おまけ】天使と悪魔の後日譚
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Ep-10 丸ごと君を愛してる

 ずーるずると引き摺られ。俺は今、またもやハーヴェンさん家でご厄介になっています。俺達の帰還後……結局、アーチェッタにも天使様達の本格的な調査が入ることになったようで、マディエルの記録を元に、明日にでも大々的な動きがあるらしい。


「ほい、お疲れ、マモン」

「あっ、サンキュー。こんな遅くにまでお邪魔して、悪いな」

「いや? そんな事ないさ。嫁さん達が帰ってくるまで、ゆっくりしてろよ」

「そんじゃ、お言葉に甘え……たいところだが。いや、やっぱり申し訳ない気がする。図々しく、寝室まで借りちまって……」

「アハハ。それこそ、気にすんなって」


 ウチのクソガキ共はなーんにもしていないのに、疲れたとか吐かしてくれまして。全員揃いも揃って、ハーヴェンさんの家のベッドでスヤァと惰眠を貪っている。


(それはそうと……リッテル、遅いな)


 因みに……最凶の嫁さん達は報告とペラルゴの身柄引渡しで、神界にご出勤されている。拷問は排除部隊(オーディエルの部隊)がメイン担当だということもあり、そのままの拷問は諦めた様子。一応は勝手に人間に手を下す事は、ご法度なのだとか。しかし……あの様子だと、状況が許せば勢い余ってやっちまいそうだったなぁ。リッテルとルシエルちゃんに、最低限の冷静さがあって良かったとするべきか。


(しかし、神界に連れて行かれたとなると……ペラルゴさんはもう、助からないだろうなぁ……)


 ハーヴェンが差し出してくれたコーヒーを口に含みつつ、ぼんやりと天使様方の恐ろしさを思い浮かべる。

 神界は魔界と同じく、基本的には死後の世界だ。双方に違う点があるとすれば、神界は天使様のエスコートがない限り、絶対に入れない場所だって事くらい。魔界側は何かの弾みで極悪人が「生きたまま」迷い込んでくることはあるが、神界にうっかり迷い込む罪人はいないだろう。ある意味、生きたまま神界にしょっ引かれるのは、相当にレアな体験だ。


(だとすると……ペラルゴは魔界に堕ちた挙句に、神界に連行された罪人・オブ・罪人ってことか? 魔界と神界の両方に入り込んだ人間なんて、後にも先にも、あいつだけな気がする……)


 ……まぁ、何れにしても命の保証はないがな。ここまで、有り難くない二冠達成もないだろう。

 ハーヴェンによれば、以前のアーチェッタ調査でしょっ引いた教会関係者は「司祭」とやらを除いては、記憶削除の上で無罪放免と相なったそうな。その事を踏まえると、神界側の措置には「本格的な悪い子」でなければ情状酌量の余地はあると考えていい。妙なところが慈悲深いのは、流石は天使様……と言いたいところだが。残る「司祭」は重要なことを知っていそうだということで、拷問の果てにお命頂戴の展開になったとかで……やっぱり、悲惨な末路を迎えている。極悪なだけの人間が生き延びられないのは、神界も魔界も変わりない。


(しかし、ペラルゴも本当に馬鹿なことをしたもんだ。……別に嫁さんじゃなくても、美人はいくらでもいるだろうに)


 もちろん、リッテルが中途半端な美人じゃないのは、分かりきったこと。俺にとって自慢の嫁さんであることには変わりないし、並んで歩けばちょっぴり鼻高々で気分もいい。リッテルは隣にいるだけで「絵になる女」なのも、間違いないと思う。


(ま……俺が気に入っているのは、リッテルの外観だけじゃないけどな)


 ワガママだけど、なんだかんだで俺のことを分かってくれているところとか。散々振り回されているけれど、きちんと俺を立てるべき要所は抑えているところとか。細かいことを挙げればキリがない程に、彼女の「お気に入りポイント」が溢れてくる。

 丸ごと君を愛してる……なんて、小っ恥ずかしい事は口が裂けても言えないが。冗談抜きで永遠の愛を誓っちゃった以上、そのくらいの気概がないと天使様の旦那は務まらない。実際に……ハーヴェンはルシエルちゃんが好きで好きで、仕方ないみたいだし。自分の嫁こそが1番だと思い込むくらいが、丁度いい気がする。


(って、そうじゃなくて。……内心で惚気ている場合じゃないだろうに)


 ちょいと話がズレてしまったが。そうそう。突き詰めて考えてみれば、美人なのはリッテルだけじゃないんだよ。神界の面々を見渡してみれば、ゴロゴロいるわいるわ、翼を生やした別嬪さん達が。ルシファーを筆頭に、オーディエルにラミュエルだってかなりの美人だと思うし、ちょっくら遊びに来た皆様もまぁまぁ、お綺麗でいらっしゃる。尚、チンチクリン……いや、ミシェルが美人に該当するのか、俺は知らん。

 若干、変なのも混ざっているけれど。こうして知り合いの顔をパッと思い浮かべるだけでも、いくらでも美人なお知り合いが浮かんでくる。それに、魔界にだってサキュバス達を始めとした、色欲の皆さんは基本的に美男美女揃いだし。……何も、美人なだけでいいんだったら、リッテルに固執する必要はないと思うんだ。


(しかし……いや、待てよ? そう言われて、俺は他の相手でいいと割り切れるのか……?)


 あれ? やっぱり、割り切れないぞ? 俺はリッテルじゃないと、どーしても嫌なんですけど。


「どうした、マモン。いつも以上にややこしい顔をして」

「いや、ペラルゴさんも馬鹿なことをしたなー……って思うついでに、奴がリッテルにこだわる理由を考えててさ。世間様には美人はいくらでもいるだろ? だったら、リッテルじゃなくてもいいんじゃないか……って、思ったんだけど。でも、かく言う俺はやっぱり、嫁さんじゃないとイヤなワケで……」

「なんだ、そんな事」

「なんだ……って、そう軽々しく言うなよ……。俺的には、とっても重要な事なんだけど」

「あぁ、ゴメン。別に、俺はマモンの悩みを軽んじているわけじゃないよ? ただ、そんなの当たり前だろうと思っただけで」


 当たり前……なのか? 何が、どう……当たり前なんだ?

 やっぱり分かりませんと、首を傾げていると。ハーヴェンがお代わりのコーヒーを注いでくれつつ、話を続ける。


「例えば、だけど。仮にルシエルにとって、俺よりも遥かに格好良くて、俺よりも遥かに料理上手で、俺より何もかもが上回っている相手がいたとしても……俺は、ルシエルがそいつの所に絶対に行かない自信がある」

「そりゃ、そうだろうよ……。お前にガッツリ胃袋掴まれて、後戻りできないレベルで暴食色に染まってるんだから」

「ハハ、そうかもな〜」


 彼らの間に割って入ろうとする奴がいくら料理上手でも、ハーヴェンのお料理に慣れ親しんだルシエルちゃんがシェフを鞍替えするのは……うん、ないだろうな。それでなくても、人間界じゃ「狙った相手を落とすには、胃袋を掴め」とかって言われているみたいだし。まぁ、この格言(なのか?)はアスモデウスの受け売りだけど。少なくとも、ルシエルちゃんはガッツリ該当している気がする。


「ま、それはさておき。色んなものを一緒に見て、色んなものを一緒に体験して、色んな時間を一緒に過ごして。些細な日常も含めて、思い出を共有できる相手は後にも先にもルシエルだけだと思うし、ルシエルも同じように考えてくれていると思う。もう互いに離れられなくなっちゃった、ベストパートナーって感じかな?」

「ベストパートナー……か。うん、そっか。そういう事なのかもな」


 ペラルゴは多分、リッテルの全てを1%も理解していない。奴が目を奪われているのはリッテルの見た目だけで、本質を知ろうとしているようには見えなかった。嫁さんは見た目だけの女じゃない。……そんなんじゃ、ロマンチックで極限にアグレッシブなリッテルの全部を受け止めるのは、無理だろうな。これを受け止めるのは、愛を誓っちゃったらしい旦那の特権だ。


「しかし……マモンって、本当に色々と馬鹿正直に悩むタチなんだな。そんなに悩みっぱなしで、大丈夫なのか?」

「うっせぇ。仕方ねーだろ、こういう性格なんだから。俺は昔から、ナイーブなの」

「へいへい。ナイーブね、ナイーブ」


 いつの間にか、俺の性格を熟知してしまったハーヴェンにまでからかわれ。悪魔にはちょいと難しい「愛」の概念を考えるついでに、悔しさ満点で過ごす夜更け過ぎ。くそぅ……暴食のナンバー2相手に、変な隙を見せちまった。強欲の真祖、一生の不覚なり。

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