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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第22章】最終決戦! 鋼鉄要塞・グラディウス
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22−78 代わりにチョキチョキしちゃいます!

「これ、どういう状況……って、確認している暇もねーみたいだな?」

「あぁ。意外としぶとくてな、あれ」


 俺の旗色が悪いのを察知してくれた……という訳ではないのだろうけど。最低限のやり取りでさえ、しっかりと戦況を把握したらしい。そうして見慣れつつある気品溢れる出立ち(多分、リッテルの趣味)でやってきたマモンは、キッチリとグラディウス相手でさえもダメージを与えるのだから、頼もしい限りだ。


(でも……これで終わりにはならなさそうなんだよなぁ……)


 彼が切り裂いてくれた側から、諦めも悪いらしい白い尖兵が再集結し始めていて。そんな様子を睥睨しながら、フゥとため息をつきつつ……マモンが右手の刀にお伺いを立てる。


「相当にしつけーな、ありゃ。しかも、霊樹由来ときたもんだ……で、カリホちゃん。まだ行けるか?」

(当たり前だ! この程度の霊樹など、一刀両断に伏してくれようぞ! 言われずとも、力を見せてくれる!)

「おぉ、おぉ、いつもながらに頼もしいこってな。そんじゃ……いっちょ、行きますか!」

(フン!)


 側から見れば一人芝居にも見える、マモンと刀のやり取りだけど。しかし、そう言えば……陸奥刈穂って、ティデルが持っていた奴だよな? あんなにも悪魔を毛嫌いしていたはずの陸奥刈穂(カリホちゃんと呼ばれているっぽい)が、しっかりとマモンに使われているんだが。恐れ多い噂の妖刀も、使い手が魔界の剣豪だったら文句もないって事なんだろうか。


「って……うおっ⁉︎ ちょ、ちょっと待て! マモン、どこまで攻撃する気だよ⁉︎」


 俺がマモンと陸奥刈穂の関係性に、ちょっぴり思いを馳せていると。景色ごと切り裂かれたかと錯覚してしまうほどに、目に入る全ての根っこが綺麗に横一線に切断されていた。


「あ? もちろん……根っこを全部、伐採する気だけど? 何か問題が?」

「い、いや……問題はないんだけど」


 そんなこと、できるのか? 縦横無尽かつ、エンドレスで生えてくる根っこ相手に……?

 だが、俺の疑念さえも切り捨ててやりましょうとばかりに、再度鞘に収めたカリホちゃんをマモンが抜刀するや否や。またもや、強烈な斬撃が俺の視界中を蹂躙していく。しかも次に繰り出されたるは、捻り技でもあるらしい。初手のいわゆる「居合切り」の後に続くのは、目にも止まらぬスピードの追撃の嵐。……完全に腕の動きが見えないのも、大概だけど。乱れ斬りと見せかけて、しっかりと根本を狙っているのだから、技の精度も規格外だ。


「……す、凄いな、あれ……」

(ふふん! そこな悪魔。よく見ておじゃれ。あれは虎乱刀という技じゃてな! 初手から連続で追撃を放つことにより、しっかりとトドメを刺す凄技ぞ!)

「そ、そうなんだ……」


 しかも、技名もしっかりあるんだ。よく分からないけれど……青鞘のお供の解説からするに、マモンが繰り出しているのは、相当難易度の技っぽい。実際……「同じようにやってみろ!」と言われても、俺には絶対に真似できない自信がある。


「うふふ、流石は私の旦那様です。戦う姿も、とっても素敵!」

「あっ。リッテルも来てくれたんだ?」

「もちろんです! それでなくても、主人はバーサークモード明けですもの! 何かあったら、私が全力でサポートしませんと!」

「バーサークモード……明け?」


 ちょい待ち。それ……大丈夫なのか? 真祖のバーサークモードがちょっと特殊だとは、どこぞの小説にも解説があったけど。確か、真祖のバーサークモードは記憶の代わりに魔力を大量消費するとか、なんとか……。


「ハーヴェン様はそのお姿でも、困った顔をされるんですね……。でも、大丈夫です! 主人には特製のお薬もありますし、最終手段ですけど……雷鳴ちゃんも付いてますし! 今の主人は魔力もガッポリ残っていますよ」

「そうか……いや、だったらいいんだけど……」


 マモン、冗談抜きで恐ろしいな。この連戦続きで魔力もしっかり温存できているなんて、魔力不足を気にしなきゃいけない俺とは、段違いだ。しかも、特製のお薬……か。多分、霊樹の落とし子絡みの一品だとは思うが。実用レベルに作り込んでいる時点で、色々と研究したんだろうなぁ。


「それはさておき……ハーヴェン様はルシエル様の所へ行ってあげて下さい。ここは1つ、私が代わりにチョキチョキしちゃいます!」

「えっ? だけど……これ、かなり扱いづらいぞ?」

「ふふ、これで私もお庭のお手入れはお手伝いをしてますから、枝切り鋏も使い慣れているのです。バッチリ、使いこなしちゃいます! それに……私達は体の傷は癒せても、ルシエル様の心の拠り所は用意できません。ネッド様がいるから、傷の回復は大丈夫でしょうけれど……やっぱり、お目覚めの抱っこは旦那様じゃないと!」


 お目覚めの抱っこって、なんだろう……は、さておき。ちょっぴり得意げな顔をしているリッテルに、折角だからとアリエルの鋏を手渡す。発言の方向性はともかく、ここは素直にリッテルを頼った方がいいだろう。それにしても……。


(少し前までは、ルシエルとあんなにギスギスしていたけど……)


 リッテルの細やかな配慮と、ちょっぴりファニーな頼もしさには、頭が下がる思いだ。かつてはちょっと迷惑な存在だったのに。この劇的な変化はきっと、旦那様の影響が大きいんだろうな。精神的にも、存在感的にも、いい意味で。


「では、こちらはしばらく拝借しますね」

「うん、よろしく頼むよ。……俺はお言葉に甘えて、ルシエルの側に付いている事にする」

「えぇ。是非にそうして差し上げて下さい」


 いくらグラディウスの魔の手から、ルシエルを守り抜かなければいけないとは言え。彼女の側から離れるのは、心配で仕方なかった。ネッドが付いていてくれていると言っても、ルシエルがすぐに目覚める様子はない。


(そう、だよな……。俺は目印にならないと)


 ルシエルが「帰ってきた」時には、全身全霊をかけて受け止めてやらなければならないし、お目覚めの抱っこも望むトコロだ。

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