22−48 きっちり頑張りましょうね〜
今度はナニ? ナニが起こっているのかな? ゴゴゴゴゴ……と、いかにもな効果音を響かせて、死神霊樹が不吉な感じで唸っている。ナニアレ、超怖い。
(あっ、どうやら……魔法の再接続、成功したみたいだね。これで一安心……って訳でもないか……)
ルシフェル様から聞いた話によると。ベルゼブブがちゃっかり仕込んでいた魔法道具を使って、切り離されちゃった制御魔法をもう1回くっつけようとしていたらしい。その話のスジからしても……鎖が再構築されたのは、ベルゼブブの作戦が成功したと考えて良さそうだ。だとすれば、このままゴリ押せば何とかなると、思っていたけれど……。
(……グラディウスは本当に諦めが悪いみたいだなぁ……。まだ、飛び立とうとするか……)
またもや鎖で雁字搦めされたグラディウスだったけど。まるで拘束に対抗するかのように、向こう側の霊樹が鎧を着込み始めたじゃないか。しかも、ピッカピカで眩しいヤツ。何と言うか……ゴリゴリにめっちゃ強そう。
「よく分からないけど……もしかして、今度こそグラディウスご本人様が突撃してくる感じかな、あれは……」
ちょっと、冗談じゃないよ? 霊樹そのものと戦うだなんて、ボク、聞いてないんですけど?
それでなくても、さっきもアッサリと鎖ごと足を切り捨ててきたし。今回も根っこだけ落っことして、本体は無事でした〜……なんて、展開もあり得る。どうしようかな。こっちはもう、魔力ギリギリなんだけど……。
「大丈夫なの。ドラグニールも戦える準備ができたの!」
「そうなの? ドラグニールって、戦えるの? と言うか、そもそもエルノアちゃんがここにいるって事は……」
「うん! みんなのお陰で、ドラグニールとユグドラシルちゃんの連結が完了したの。それで、ね。……爺やが頑張ってくれるって!」
「爺や……?」
エルノアちゃんが見つめる方を、ボクもどれどれと見上げてみれば。しっかりと同化したらしいドラグニールとユグドラシルが、1本の大樹として鎮座している。だけど、よくよく観察すると……どことなく、それ自体が竜族っぽく見えてきた。もしかして、エルノアちゃんの言う「爺や」って……。
「この感じは……長老様⁉︎」
「長老様……! 長老様、お帰りになったのですね!」
「長老様ぁぁぁ!」
ギノ君や地属性の竜族さん達が、歓喜の声を上げては、感動の涙を流し始めているけれど……「長老様」のキーワードに、竜族じゃなくともボクだってウルっと来ちゃうよ。
彼らの言う「長老様」は2本の霊樹を結ぶため、自らを犠牲にしてルートエレメントアップを発動した偉大な竜族。無事に融合したドラグニールとユグドラシルだった大樹は、そんな長老様の名残と思える姿も踏襲していて……天辺部分はどことなくドラゴンっぽい顔がついている。……言葉こそ、ないみたいだけど。グラディウスを睨みつける視線からは、並々ならぬ決意が溢れている気がする。
「……爺や、行くよ。ここからが私達の最終決戦なの。みんなも、もうちょっとだから頑張って!」
「もちろんです、竜女帝様!」
「こうなったら、とことんやってやりましょう!」
「うんっ!」
片や、しっかりとお役目を果たしたエルノアちゃんも、頼もしい限り。霊樹同士の連結だなんて大役を果たしたのだから、本人は相当に疲れているだろに。微塵も疲れた様子も見せずに竜族達を鼓舞しては、忽ち体勢も気概も立て直すのだから、見事なもんだ。
「それじゃ、ボク達も頑張らなきゃ。総員、防御体制を整えてちょうだい! ここが正念場だからね、気合い入れ直して行くよ!」
「はいっ!」
「承知しました、ミシェル様!」
ここぞとばかりに、大天使っぽく振る舞ってみれば。いつもは「気怠〜い」雰囲気な転生部門のみんなも、ついて来てくれるつもりみたいで、いつになくピシッとした返事が返ってくる。……いつもこうだといいんだけどね。まぁ、ボク自身もいつもピシッとしている訳じゃないし、この辺は仕方ないか……。
「それと……魔獣族や妖精族のみんなも、ヨロシク。巻き込んでしまって悪いのだけど、君達の力も必要なんだ」
「言われずとも、分かっている。巻き込まれたくなかったら、オーディエルの呼びかけには応じん」
「あ、それもそうか。だったら……」
「フン。心配せずとも、魔獣族は総力を上げて加勢するぞ。あの忌々しい女神とやらを叩き落とさん限り、我らの未来も危ういからな」
ごっつい見た目に反して、とっても冷静なお言葉をくれちゃう魔獣王・ダイアントスさんの意見に、周りの魔獣族達もウンウンと素直に頷いている。この様子だと……魔獣族のみんなは、ガッチリ協力してくれそうだ。
それでなくても、ダイアントスさん自身はギノ君とも浅からぬご縁がある様子。彼を「竜族の坊主」だなんて呼んで、ちょっと兄貴風を吹かせているけれど……どことなく、親密な感じも見て取れる。それに、実際に彼の翼から放たれる突風はギノ君の炎を大きく、逞しく成長させているのだから……このくらいの先輩風を吹かせられるのも、当然と言えば当然かも。
「もちろん、僕ちゃ……あっ、いや! 余達、妖精族もしかと力を貸してやるぞ! ……ここで乗り遅れるのも、つまらんし」
「フォウル君は相変わらず、締まらない返事をするんだからぁ。ここでビシッと決めないで、どうするの?」
「う、うるさいぞ、大天使! この空気で参戦を拒んだら、我らの面目丸潰れではないか⁉︎」
「かもねー。そんじゃ、僕ちゃんもきっちり頑張りましょうね〜」
「だから! 誰が僕ちゃんだ、誰が!」
いや、だって。今、自分でも言いかけたじゃないの、僕ちゃんって。本当に……フォウル君は体裁を繕うのも、誤魔化すのもヘタなんだから……。
「それはそうと、ミシェル様」
「うん、分かってるよ、ギノ君。今はフォウル君と戯れあっている場合じゃないよね」
心配そうにギノ君が見つめる先では、臨戦態勢に入ったらしいグラディウスがいよいよこちらに向かって突撃してくる。どうも……鎖を振り切るのは諦めたらしい。いや、そうじゃないな、あれは。グラディウスは数えきれない手で、鎖を何度も何度も、断ち切っているけれど……すぐさま鎖が再連結しては、グラディウスを逃すまいと食らい付く。
(……なるほど。あの鎖……再生機能だけじゃなくて、追尾効果まであるみたいだなぁ。……こりゃぁ、相当に構築を作り込んだね、ベルゼブブも)
多分、グラディウス本体に目印を仕込んであるのだろう。その上で、鎖自体も改良したみたいで……今度こそ、何が何でも引き摺り下ろしてやるとばかりに、グラディウスを捉えて離さない。だけど……グラディウスのガッツ(要するに、諦めの悪さ)はそれを上回っているみたい。黒い翼をはためかせ、死神顔で睨みを利かせて。そうして、尚もこっちにやって来ようとする様は……やっぱり、どこまでも不気味でしかない。あんなのが新しい世界の神様だなんて、ボクは死んでもゴメンだね。だから……ここはみんなで力を合わせて、あの死神霊樹を絶対に叩き落としてやらなくちゃ。




