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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第22章】最終決戦! 鋼鉄要塞・グラディウス
1022/1100

22−23 無条件で甘い

(……すぐに行くと、言ったはいいが。これ、どうすっかなぁ……)


 状況はよく分からんけれども。ミカエリスから「閉じ込められたから、助けてくれ」とメッセージを受け取ったもんだから、こうして可及的速やかに現地急行しましたよ、っと。しかし……どうも空間ごとジャミングされているのか、ミカエリス達がいる場所にどうしても辿り着けない。廊下伝いに辿ったところで、グルグルグルグル……結局は入り口らしきものも見つけられず、同じ場所に行き着く堂々巡り。


「こりゃぁ、相当入念に封印されてるなー……」

「あなた、風切りちゃんでも切り裂けないの?」

「いや、タダの封印術であれば風切りの性能は通るよ? けど、問題はそこじゃなくてな。目的地がうまく隠されていて、本丸……要するに、封印術そのものに辿り着けないんだよ。ジャミングってのは、厳密には呪詛の類だからな。……いくら風切りでも、周辺を囲っている妨害効果を突破できないんだよ」

「そういう事……」


 あぁ……やっぱりラディを解放するの、早まったかなぁ。壁を探っていた仕草といい、目的地が決まっていたような逃げっぷりといい。様子を見ていた限り、あいつはグラディウスの「隠れ通路」らしきものを知っていた様子。ここの抜け道や、解除方法の情報も持っていた可能性が高い。


「あっ、そうだ。もしかして……これ、使えるかも知れないか……?」


 そんなことを考えつつも、そのラディの落とし物もしっかりと回収していたことにも気づく。見てくれはタダの金属片とは言え、形も形だし……あまり、気分がいいもんじゃないが。勢いで切り落とした腕を、何かに使えるかもと……知れっと拾っておいたんだよな。


「これをこうして……おっ! 出た出た」


 右手にラディのおてて、左手には天使ちゃん秘蔵のパネル。そうして、パネルの画面を指でスライドすると、ヒョコッと触覚チックな探知器が出てきた。忙しなく先端を動かしては、何かを探るような仕草がちょいとキモいけど。働きっぷりは期待できそうだと、ラディの腕を触覚に預けてみる。


「そんじゃ、いっちょ解析よろしく〜」

「そう言えば、あなたのパネルは大天使様用のデバイスでしたっけ。それ、魔法道具の鑑定ツールよね?」

「うん、そうらしい。……ラディの腕が魔法道具に該当するのかは、分からんけど。それっぽい情報が探れれば、打開策が見つかるかも」


 こんな状況でワクワクするのは違うだろうと、もちろん自覚はしている。だけど、天使ちゃん達のパネルは俺の好奇心や知識欲を程よく満たしてくれるギミックに溢れていて、新しい機能を試すたびにトキメキが止まらない……はずだったんだ。


(あっ、これ……多分、機神語だよな……?)


 ……パネルに表示された文字列に、トキメキどころかクラクラと目眩を覚える。解析結果が素早く出されたのはいいけれど、生憎と機神語はからっきしなんだよ。ダンタリオンであれば、ちょっとはイケるんだろうけど。今から呼んでくるのでは遅すぎるし……何より手間的にも、あいつの性格的にも、超絶に面倒臭い。


(うげぇ! 全っ然、分からねぇ……! えぇと、辞書機能とか、ないのか⁉︎)


 ゔっ……流石の天使ちゃんパネルにも、辞書や翻訳機能までは搭載されていないっぽい。そうして、ワクワクやトキメキがシュルシュルと萎びていくのを感じながら、どうしたもんかと悩んでいると。隣から、リッテルが意外な知識を披露し始めた。


「えぇと……あら、そうなの? どうやら、グラディウスには定間隔で壁に脱出ダクトが隠されているみたいよ? それで、魔力を供給する通信経路が張り巡らされていて……」

「リッテル、お前……機神語が分かるのか⁉︎」

「えぇ。ほんの少しなら、解読できるわ。神界のシステムを支えているプログラミング言語と、機神語のアルゴリズムには多少の互換性があるの。それで、実は……システムに細工するために、プログラムの勉強をしたことがあったのよ」

「……」


 それって、多分……俺達が初めて出会った時のアレだよな? 確か、仕事を取り上げられた腹いせに……ってアラマシだったかと思う。

 リッテル自身もイタズラ目的で習得した語学が、こんな所で役に立つと思っていなかったのだろう。だけど、彼女にしてみればどうも不本意らしくて……不意打ちの活躍にウキウキを萎れさせたかと思えば、またあの「自嘲気味の悲しい笑顔」をして見せる。でも、さ。頼むから、俺の隣でそうも寂しそうな顔をしないでくれないかな……。


「……だったら、今度はリッテルに言葉を教わろうかな。そうすれば、このパネルももっと有効活用できそうだし」

「えっ?」

「俺は欲張りなの。知らない事は、もっともっと知りたくなる性分でな。新しい言葉も、そう。新しいお前も、そう。こんな近くに、俺の知識不足と好奇心を埋めてくれる相手がいるんだから……色々と教えてもらわなきゃ、損だろ」


 そんな事を言ってみると、嬉しそうにちょっぴり頬を染めて、嫁さんの頬に笑顔が戻る。……相変わらず、俺はリッテルには無条件で甘いんだと自覚してしまうけれど。それでも、嫁さんを甘やかすのは旦那の特権というもので。


(……やっぱ、嫁さんの笑顔は守るに限るな)


 どっかの守刀が言っていた事を、内心でなぞりながら。再びやる気を取り戻した、嫁さんがフムフムと残り部分の解読を試みる。そして、ラディの腕には新しく情報を取得する機能があるとかで……彼女が壁にピトッと金属片の手のひらをくっつけると。繋いだままの触覚を通して、パネルに新しい情報が次々に流れ込んでくる。


「すごい情報量だな、これは……って、おっ! この図面……もしかして、お城の地図か⁉︎」

「そうみたいね。きっと、この図面に皆さんの脱出経路も書かれていると思うわ……」


 そうして更にフンフン言いながら、図面に書き込まれている文字列に目を走らせるリッテル。だけど……図面には相当によくない事も書いてあったのか、折角取り戻した笑顔を急激に曇らせ始めた。


「ど、どした、リッテル?」

「これは大変……! 大変よ、あなた! ど、どうしましょう……!」


 そして、この鬼気迫る慌てようだもん。さっきまでの甘〜い気分も……一瞬で木っ端微塵に吹っ飛んだんですけど。


「えっと、何が⁇」

「どうやら、グラディウスはこのエリアを切り離そうとしているみたいなの!」

「……えっ?」


 すみません、リッテルさん。俺には何が何だか、サッパリです。つまり……それって、どーゆー事なのでしょうか?

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