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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第22章】最終決戦! 鋼鉄要塞・グラディウス
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22−22 華々しい字面に飛びついてみたけれど

「おかしい……」


 ルシエルと一緒にメガトン天使達相手に、奮闘するものの。ルシエルの言う通り……と言っては、なんだけど。相手は冗談抜きで図体がデカいだけの、微妙な相手だった。見た目こそ、厳ついインパクトも抜群だと思わせておいて……蓋を開けてみれば。力任せに腕を振るうことしか能のない、ガラクタでしかない。


「どうした、ハーヴェン」

「いや……いくら、本命の神様がいないと言っても、ここまで中途半端に手薄にするかな? 守る必要のない場所だったら、兵力を割く必要はないだろうし、かと言って……」

「重要な拠点だったら、もっとマトモな戦力を配置するだろう……か」


 うん、俺もそう思う。そうなれば、ここにこんなにも微妙でありながら、イヤに処分に時間がかかるデカブツを置いた理由も、何となく分かると言うもの。これは、多分……。


「俺達は、まんまと足止めさせられた……いや。罠にハマったと言った方が正しいか……」

「……みたいだな。それに……ハーヴェン、周りを見てみろ」

「あれっ? 扉がなくなっている……?」

「……違う。塞がれたんだ。多分、こいつらが鍵になっていたのだろう。……これだけ視界を塞ぐ巨体を相手にしていたら、イヤでもこいつらに視線を注ぐ羽目になる。しかも、床もこの有様だ。ここは向こう側にしてみたら、重要な場所ではないと言うことだ」


 恐ろしい程に冷静なルシエルが、その場で軽く足を踏み鳴らせば。彼女の足元から、小柄なボディにぴったりサイズのクレーターが出来上がる。


「もしかして、ここの床……脆かったりする……?」


 うん、確実に脆いな。さっきまで飛んでいたから、気づかなかったけど。ド派手なクレーターはメガトン天使の怪力でできたものじゃなかったんだ。


「……だけど、どうして床を脆くする必要があるんだか……」

「いや、これは違うよ、ハーヴェン。……多分なんだけど、ダンタリオンちゃん達が上手くやったんだよ。だから、グラディウス自体が脆くなっているんだと思う」

「へっ? そうなのか……?」


 ダンタリオンの魔法って、確か……。


(プルエレメントアウト、って言ったっけ? ギルテンスターンさんの魔法を上書きするためのものだって、聞いていたけれど……)


 まさか、グラディウスそのものを弱体化させる効果があったなんて。


「ね、ね、ハニーもゾクゾクっと感じるでしょぉん? このビンビンな感じ〜」

「もう少し、言い方はないのかと思うが……魔法介入の有無に関しては、同感だ。それでなくても、プルエレメントアウトはルートエレメントアップの効果を上書きする魔法ではなく、束縛そのものを解除し、霊樹の魔力を正常化……つまり、マナツリー由来の性質に戻すものだと聞き及んでいる」


 マナツリー(要するに今の女神様)仕様にフィックスするのが「正常化」と言えるのかは、疑問が残るけれど。少なくとも、こちら側に都合がいい流れであることは間違いなさそうだ。


「と言っても、閉じ込められたのには変わりないな。……ところで、ルシエル。ロンギヌスを差し込めそうな場所はある?」

「……いいや、見当たらないな。おそらくだが、ロンギヌスを打ち込む場所はここではないのだろう」


 これは完璧にやられた……あぁ、違うな。ロンギヌスの受け口がミカエルさんの玉座にあるなんて、前情報は存在しない。ただ、俺達は明確な手がかりもなく、ヤーティの逃亡ルートを逆行しただけだ。


(とにかく、今は出口を確保する方が先だ。このままじゃ、ロンギヌスの差し込み口を見つける以前の問題だよな……)


 そうして、ミカエリスさん以外の全員で壁に攻撃したり、床を打ち抜いてみたりしたけれど……どうも、空間ごと魔力でシャットアウトされているらしく、内側からは逃げられそうにもない様子。


「……ポインテッドポータルに、マジックディスペルは発動すらしない……か」

「こっちもダメみたいだ。……転移魔法も封じ込められている」

「う〜ん……してやられたねぇ。多分、転移系魔法のキーワードに対して、無効設定されているんじゃないかな〜ん。まぁ、ヤーティちゃんの話でも、ミカエルちゃんを閉じ込めておくための場所だったみたいだし……そっち系の魔法が封じられているのも、当然と言えば、当然かぁ……」


 ゔ……言われてみれば、確かに。玉座だなんて、華々しい字面に飛びついてみたけれど。……実態はそんなに華々しいものじゃなかったんだよな、ミカエルさんも玉座も。

 その上……空間そのものに、自動再生の構築が敷かれているのだろう。崩しても、崩しても……壁も床も、その場で再生されてしまう。転移魔法もダメ、物理攻撃もダメ。ちょっと待て。……これはいよいよ、本格的に詰んでいるぞ……?


「……なるほど。ここは本当に玉座ではあったのだろう」

「えっ?」


 床や壁が自動的に修復されるのを見つめながら、ルシファーが意外なことを言い始める。そして、リヴィエルにちょっとした指示を出すと……さっきまで戦っていた「メガトン天使」の正体を教えてくれるが……。


「先程の機神族はおそらく、こちらかと。……精霊帳に載っていることからしても、グラディウスに乗っ取られたローレライの兵かと……」


【ファランクス、魔力レベル6。機神族、地属性。ローレライの一般的な騎兵。攻撃魔法・補助魔法の行使可能。登録者:ラファエル】


 ……なるほど。彼女達の実力が微妙だと感じたのは、「一般的な」兵士だったからなんだ。


「元来の機神族が屯しているとなると、このエリアはローレライの性質を色濃く残しているようだな。そして、我らを襲ってきたのは……大方、それがグラディウスの魔力を受けて、凶暴化したのであろう。……となると、グラディウスの神とやらにとって、この部分は不要な場所になるかもしれんな」

「えぇ? それって、どゆこと? どゆこと?」


 相変わらずおちゃらけているベルゼブブに対し、お決まりのややこしい顔をして、粛々と持論を展開し始めるルシファー。玉座が残っているのに神様がいないとなれば、グラディウスには別の玉座があるだろうこと、それなのに置き去りにされたように機神族が残されているともなれば、彼女達は純粋に「言うことを聞かなかった」はみ出しものだろうこと。


「ここまで来るのにだって、相当の機神族と手合わせしてきたし……何より、外はグラディウスの兵で溢れかえっている。それなのに、魔力レベルが6もある精霊が残されているともなれば……このエリアはローレライが未だ反抗を諦めていない証拠と考えてよかろう。……そして、この異常な封印はローレライの機能を強制的に停止させるものなのだろう」


 多分、ルシファーの言い分はなんとなく合っている気がする。だが、問題なのは……メガトン天使の正体じゃなくて、だな。


「要するに……俺達は古いローレライごと、切り離されそうになっている……って事か?」

「……ルシフェル様の予想が正しければ、そうなるだろうな。ここで足踏みをしていると、私達も一緒に捨てられる可能性が高いか……?」


 うん、そうだろうな。だけど、ただ「ポ〜イ」って放り出されるだけなら、問題ないんだけど。……閉じ込められている時点で、手段は物理的なものじゃなくて、魔法的なものになる気がする。とっても嫌な予感がするんだけど。


「って、今度は何をしているんだ、ミカエリスさん。こんな時に悠長にメモを取る必要なないだろう? しかも、それ……リヴィエルのパネルじゃないか……」

「いや、そう言うわけではなくて、ですね。脱出手段が見つからないみたいなので、ちょっとボスに救難信号を送ろうと思いまして」

「あっ、なるほど。その手があったか!」


 ミカエリスさんの着眼点に、その場の全員で目を丸くしてしまう。現在、強欲の真祖様はローレライの落とし子目掛けて、絶賛別行動中。しかも、マモン自体はかなりの切れ者な上に、彼の手持ち武器には魔法を無効化する奴が混ざっていた気がするし……難なく、窮地を切り崩してくれそうだ。


「セバスチャン、ナイスです! でしたら、早速……」

「うん、もうメッセージは送ったよ。それで……あっ、すぐに来てくれるって!」


 それにしても……こんな所でも真祖様の巻き込まれ体質が役に立つなんてな。マモンがパネルを持っているのは、そもそも例外中の例外なんだよな……。まぁ、この場合はリッテルが送付先でもいいのかも知れないけど。相手がマモンじゃなければ、ミカエリスさんの救難信号案は生まれなかったかも。


(さっきはこの調子で大丈夫かな、なんて思っていたけど。……大丈夫じゃなかったのは、俺達の方だったみたいだなぁ……)


 しかし、強欲の真祖様に怪盗紳士になり切って頂いたのが、功を奏するなんてな。さっきまでは、彼のはしゃぎっぷりが不安でしかなかったのに。今となっては頼もしく感じるのだから、俺も相当にお調子者かも知れない。

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