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12-5

慎「ごちそうさん。美味かったな。」


勇「ああ、量も多いし、安いし、気に入った!」


木「咲ちゃんもいるしね。」



3人は料理を食べ終え、席を立った。


ゆっくりと喋りながら食べていたので、昼の混雑も既に終わり、店内は落ち着いた静けさを取り戻している。


つまり暇ができた咲がレジのところで余裕で待っていられた。




慎一たちがレジまで来ると、咲が両手を差し出しながら言った。


咲「伝票お預かりします。」


慎一はその手に伝票を渡し、3人は財布を用意する。



ピッピッと、ハンディよりも慣れない手つきで打ち込み、値段が表示された。


咲はどこか誇らしげにそれを読み上げた。


咲「2200円です。」


慎「あ、1人ずつ会計ってできる?」


この一言で、誇らしげだった笑顔が一瞬で消えた。


咲「ひ、1人ずつ…?」


慎一も地雷を踏んだことに気付き、慌てた。


慎「あ、無理ならいいよ、別に…」


女「お1人ずつのお会計ですか?」


と、横から女の店員が咲の助けに入った。


小さい声で「ここをこうやって…」などと言いながら、女はさっさと1人ずつ会計できる状態にした。


咲がお礼を言うと、女は笑って引き上げていった。



咲は向き直り、また危なっかしい手つきでレジを打ち込みながら言う。


咲「えっと、慎一くんは……800円ですね。」


慎一が1000円札を出すと、「1000円からお預かりします」と典型的な敬語の誤用と共に1000円札をしまい、200円取りだして慎一に渡した。


咲「200円のお返しです。」


小銭を手渡す時、少し咲の手が慎一の手に触れた。



なるべく触れて気まずくならないよう遠慮がちな距離だったが、触れた時の咲の体温は慎一にしっかりと感じられた。


それで案の定少し気恥ずかしくなった慎一はさっさと勇気のために横にどいた。















――――――――――――――――――――――













会計を終えると、3人は咲に頑張れと言ってから店を出た。




慎「意外と板についてて安心した。」


勇「そうか? 結構危なっかしかったぞ。見ててハラハラしたもん。」


木「そんなの慣れよ、慣れ。次来た時にはベテランになってるわよ、きっと。」


慎「その絶大な信頼もどっから来るんだよ。」


談笑していると、勇気が突然話題を変えた。


勇「そういえば、このあと木葉ん家行って、俺らだけ勉強会やらね? 南さん用のはまた後日やるとしてさ。」


木「ダ~メ~よ。咲ちゃん置いて私たちだけなんて。」


勇「じゃあ、もう俺だけでも勉強教えてくれ! 頼む! 数学詰んでるんだ!」


慎「そこまで食い下がるとかえってすがすがしいな。」


慎一はあきれ笑いを浮かべる。


木葉は静かに勇気の左肩に手を置いた。


勇「?」


そして柔らかな笑顔を浮かべ、囁くように言った。


木「来週、皆で、ね。」



明らかにガックリきている勇気を見て、慎一は思わず噴き出した。



勇「笑うな! 何でお前今回そんなに余裕なんだよ!!」


慎「いやぁ、人に教えるってのは自分にも勉強になるんだな~ってな。」


勇「はぁ!?」



慎一は、普段から咲に、ほとんどの授業後に質問されて答えていたので、今回はそれほど不安が無かった。


勇気の焦燥は決定的になり、余裕のある2人だけが笑っていた。



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