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12-3

いつになくたどたどしい咲に案内されて、3人は禁煙席に着いた。



早速メニューを開く。


勇「ここのランチいいな。ラーメンとご飯と日替わり一品と、餃子か唐揚げだってよ。」


慎「ホントだ。安いし。俺醤油の餃子セットでいいや。」


勇「俺担々麺の唐揚げセットにしよ。」


木「私そんな食べれないしな~。普通に醤油ラーメンでいいよ。」


腹が空いているとスムーズに注文も決まり、慎一がテーブルの呼び出しボタンを押した。



やってきたのは咲だ。


注文入力用のハンディを開き、緊張気味に口を開く。


咲「お、お伺いします。」


慎「えっとね、俺醤油ラーメンの餃子セット。」


咲「セットで…え~~…これだ。はい。」


ピッ、ピッとハンディが恐る恐る押される音を聞きながら、次は勇気が言った。


勇「俺は担々麺の唐揚げセットね。」


咲「唐揚げセット…ですね。」


反芻しながら入力キーを探し、見つけたところでようやく断定の助動詞をくっつけた。


木「私は醤油ラーメン単品で。」


咲「醤油の単品をおひとつ。」


これだけは手慣れた様子でピッピと入力を終えた。



咲「以上でよろすぃ……よろしいですか?」


慎「うん。」


咲「確認さすていただきます。え~と、醤油の餃子セットがおひとつ、担々麺のぎょ…違う、唐揚げセットがおひとつで、醤油の単品がおひとつ、以上で?」


いちいち危なっかしく読み上げ、終わると既にホッとしたような顔を上げ、慎一たちを見た。



勇「おっけー。」


咲「かしこまりました!」


そこでやっと自然に笑った咲は、最後に一つピッと押してからハンディをポケットにしまい、戻っていった。



勇「すげえ緊張してたな。今日初めてってワケでもないのに。」


慎「頑張ってんな~。」


木「注文確定してないのにホッとしてたから、ここで注文変えたら面白いかなって思ったけど、可哀想だからやめといた。」


慎「何その意外な一面…。」




しばらく3人で他愛もない話や、他愛もないテストの話などしていると、程なくして注文したものが運ばれてきた。



運んできたのは咲と、もう1人男の店員である。




店「お待たせしました。こちら、担々麺と唐揚げのセットですね。」


勇「あ、俺です。」


勇気が軽く手を挙げると、店員は勇気の前にお盆を置き、木葉にも同様にしてラーメンを配膳した。


そこで店員は早々に引き上げ、次に咲が来た。


咲「醤油ラーメンと餃子のセットです。」


慎「はい。」


慎一も条件反射で軽く手を挙げるが、それより前に咲はお盆を慎一の前に置く体勢であった。



咲がそれを慎一の目の前に置いてから、咲は慎一に声をかけた。


咲「実はバイトの先輩たちにもう知られてるんですよ、私と慎一くんの関係。」


慎「ん? そうなの?」


咲「だからさっきの人―――宮西さんっていうんですけど、あの人も私に気遣って、慎一くんの注文運ばせてくれたんです。」


慎「ああ、そうなんだ。」


勇「どうりではけるの速かった。紳士やな~。」


木「イケメンだったしね。」



談笑も束の間、そろそろ混む時間帯でお客さんが増えてきて、咲は呼ばれた。



咲「じゃあ、ゆっくりしてください。」


慎「おう、頑張れよ。」



咲はわずかばかりの笑顔でその場を後にし、来たばかりのお客さんの案内を始めた。



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