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一方、咲を亡き者にしようと日々頭を悩ませる明日香。
彼女も、別のルートで咲が最近バイトを始めたことを知った。
別のルートと言っても、休み時間に寝ようと机に突っ伏していたら、近くで「3組の"あの可愛い子"が一國堂でバイトしてるらしい」と話している思春期男子たちの会話が耳に入ってきただけである。
ともあれ、それを聞いた明日香がしめしめと左の口角を吊り上げたことは言うまでもない。
その週の土曜日に狙いを定め、明日香は一國堂にやって来た。
混雑を避けるために昼直前の時間帯にやって来て、混雑し始めてきたらそのどさくさに紛れて始末する、という計画だ。
そして、昼直前に来る段階までは上手く行っていた。
だがまだ咲の姿は見えない。
明『どうやって殺そうか…。過失を装ってラーメンぶっかける? …火傷はするだろうけど死にはしないか…。箸を刺すとか。…ダメだ、割りばしだここ…。』
メニューを見ながら、メニューではなく始末の方法をぶつぶつと模索する。
一瞬つまようじが目に入って「これなら」が頭をよぎったが、すぐその殺傷力の低さに気付いて思考を戻した。
明『凶器から私に結びつかないように、凶器は現地調達しようと思ったけど、これじゃあなぁ…。』
明日香は無意識にコショウ瓶を指でつまんで持ち上げ、目の前でそれを軽く振って眺めていた。
明日香が大好きな、しかし今は決して望まない声が耳に入ったのはその時である。
慎「おお~、何か新鮮だな。」
明「!?」
声の方を素早く振り向くと、ようやくこの店の制服を着た咲を見つけたのと同時に、その目の前に3人、見知った顔も発見した。
明『し、慎一くん!? …と、あの2人も確か3組で、慎一くんと仲良かったはずの…。』
勇「すげ~、ホントにちゃんと店員さんだ。」
慎「な。」
木「何でも似合うね~、いいな~。」
咲「い、いや…、そんな…。」
慎一たちと話す咲が、照れながらも少し嬉しそうなのが、明日香の癇に障った。が、どうすることもできない。
明『まさか慎一くんたちも来るなんて……。』
あすかはめのまえがまっしろになり、その日咲を殺すのを早々に諦めていた。




