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11-6

明「はぁ、結局咲は殺せなかったし、慎一くんにも会えないし、最悪…。」



明日香は守を保健室まで運んだあと、1人でクラス企画を回る気にもなれず、体育館でバンド演奏を何とはなしに見ていた。


しかし、それが終わってからはいよいよすることがなく、1人中庭でジュースを飲み、終了まで時間を潰した。


募りに募ったみじめな気持ちに、時々うっすらと瞳を涙が覆った。



終了の放送で虚無感と安堵を半分ずつ抱きながら教室に戻る足取りは、決して軽いものではなかった。


明『終わっちゃった…。高校の文化祭はあと1回か…。』



肺にため息しかない状態でクラスに戻り、何の余韻も感じないまま片付けに加わる。


と、そんなどん底の明日香はとどめの一撃を目の当たりにした。




明『…こ、これ……!』




それは最終コーナーの所に貼ってあり、まだはがされていないS賞受賞者の記念撮影の1枚だった。



明日香の恋慕する慎一と、明日香が殺意を抱く咲が、ピッタリ寄り添って、それもいい笑顔で写っている1枚があったのだ。





明日香は思わず、近くにいた子に聞いた。



明「な、何コレ!?」


「へ? 何って…記念撮影じゃん。S賞取ったお客さんの。」


明『あ、そうだよ、知ってるよ。変なこと聞いちゃった…。』「あ、じゃ、じゃなくてその…ど、どうするのコレ?」


明日香は慌てておかしな質問をごまかす。


「あ、処分? まぁ、燃えるゴミだよね。段ボールからはがして。段ボールは別だからね。」


明「…分かった。任せといて。」


「? うん、ありがと。」



「燃えるゴミ」というワードに、これほどの反応を示すことは、人生でもう二度とないだろう。


そう自覚するほど、明日香は残酷な気分になっていた。



外側に貼ってある写真から、慎一と咲の写真に向かって1枚ずつ、ゆっくりとはがしては燃えるゴミ袋に入れていく。






明『…咲。いつかは私がアンタのとこに…。』






明日香は最後の1枚をはがすと、グシャグシャに丸めて燃えるゴミ袋の奥深くに突っ込んだ。




第11話 完


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