表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/144

11-2

教室は真っ暗になり、手係の慎一は例の壁の向こうに設置してある即席の高台に登った。


手は歩いている人に引っかからないよう、高めの位置から出すようにしてあり、本当にただのオブジェクトなのである。


しかし、これに気を取られているときに反対方向から勇気が飛び出すので、慎一も客も気を抜くことはできない。



慎『…最初の客が入ってきたな。』


入口で懐中電灯を渡される手はずの客たちが、最初のビックリポイントで悲鳴を上げていた。


慎『そろそろ……。』


慎一はもう疲れて来た腕で必死においでおいでをしながら、なけなしのリアクションを待つ。





「うわぁ、ビックリした!」


「手だww」


「あれ家で出たら怖えな。」


勇「ウガアアアア――――――――!!!」


「「ウギャアアッ!!!」」






慎『大成功…。』



慎一は、この役も悪くないなと思い出した。





しかし、そう長続きもしなかった。


3組目が通り過ぎる頃には、腕の疲労も手伝って、客のリアクションに感動することなどできなくなっていたのだ。



慎『早く代わりてぇ~~~…。』



慎一は交代の人を呼び寄せるかのようにただおいでおいでを繰り返していた。














――――――――――――――――――――――――












昼休憩になった。


真っ暗だった教室もさすがに電気がつけられ、そこで午前の部だった人たちは弁当を食べる。



慎「つかれた…。もう、すっごい地味~~~~な疲れが溜まりに溜まった…。一生分の何かを呼び寄せたような気がする…。」


勇「お疲れッ!」


木「皆お疲れさま~♪」


慎一の所に勇気と木葉が、何とも生き生きした表情でやってきた。


勇「いやあ~、いいね! 最高だったわ!」


木「ホント、笑いこらえるのに必死だったもん。」


楽しそうに話す2人を、慎一はうらめしやと言わんばかり、恨めしげに見つめる。


勇「慎一も、おいでおいでお疲れさん。」


慎「あぁ。」


それ以上何を言うのももはや面倒くさかった。



と、そこへ咲も戻ってきた。


顔が真っ赤になって、湯気が出ている。



木「咲ちゃん、お疲れ様。」


慎「…緊張した?」


咲はドンヨリした顔で重たげに頷いた。


咲「すっごい……恥ずかしかった………。」


勇「お、お疲れ。」


ちょうどその時、もう1人の誘導係の子が顔を出した。


「咲ちゃんすごい人気だったよ~! 何か咲ちゃんのために何回も来てる人もいたみたいだったし。」


咲「!?」


慎『気付いてなかったのか…。』「まあまあ、午後からは俺らシフト入ってないんだから、今度は客側で色々見て回ろうぜ。」


咲「そ、そうですね。」


咲の表情が少し明るくなる。



しかし、勇気は、


勇「悪いんだけど、俺と木葉はちょっと見たいもんがあってさ。」


ときまり悪そうに言った。


慎「見たいもの?」


木「バンド演奏よ。うちの学校は毎年レベル高いじゃない? 去年も見たけどすごかったし。」


咲『ばんど…?』


慎「なるほどな。咲、どうする?」


咲「あ、えっと、私は他のクラスのお店がどんな風なのか見てみたいんですけど…。」


勇「じゃあ午後からは別行動だな。」


慎「そだな。」


咲『ばんどって何なんだろう…。漢字が全然思い浮かばない。』



方針が決まる頃には、全員弁当を食べ終わっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ