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11-1

本日、公立赤目高校では年に一度のビッグイベントが開催される。


そう、文化祭である。


赤目祭と称するこの祭りは、毎年そこそこの賑わいを見せ、この日に向けて生徒たちは夏休みを返上し、受験勉強をさえも犠牲にして準備してくるのである。



慎一たち2年3組ももちろん例外ではなかった。



勇「それにしても、今時お化け屋敷なんてベタだよな~。」


勇気がゾンビっぽい衣装を身にまといながら言う。


慎一はそんな勇気を不服そうに見つめた。


慎「勇気はまだいいだろ。いきなり出てきてビックリさせるなんて楽しそうな役でさ。」


勇「お前絶え間なくおいでおいでするだけだもんな。」


慎一の役は、段ボールで作った壁の穴から腕を出して、ただただおいでおいでをし続けるというもの。


暗闇でそれを目にすることになる客からすれば不気味な役回りではあるが、やる方は退屈でしょうがないのである。



木「2人とも~。準備できた~?」


木葉の呼ぶ声で振り向くと、咲と木葉の2人が、丑の刻参りのような白装束に身を包んで立っていた。


しかし明るい時間帯に明るい所で見れば、ただの衣装である。



勇「おお、2人とも似合ってんじゃん。」


木「私はこれに更にかつらをつけるのだ!」


と言って右手に持っていた長髪のかつらをさっとかぶった。


それでもまだ、ただの長髪である。


慎「その状態で、お客さんの後ろから這いずって近づくんだっけ?」


木「そうよ。こんなこと初めてやるから楽しみ♪」


慎「ん? 咲って誘導係じゃなかったか?」


咲「う、うん。そうなんだけど…。」


木「どうせなら誘導からこの格好の方がらしいじゃない。」



咲は恥ずかしそうにうつむいて黙った。


本当は咲はお化けの役をやりたかったのだが、暗闇の中でも咲の金髪は目立ちすぎるからと、真っ先に誘導役に回されてしまったのだ。


それで少しすねていた咲に少しでもお化け気分を味わってもらおうという木葉の計らいであったのだが、咲は人を驚かせたかっただけでお化けになりたかったわけではなかったので、ただの羞恥プレイだった。



と、時計を見た木葉が慌てだした。


木「もうこんな時間! みんな配置についてー!」



木葉の掛け声で、普通にだべっていた他のクラスメイトも動き出した。


勇「よっしゃあ、やるか!」


慎「そだな。」


咲「うぅぅ~~…。」


勇気が気合を入れている横で慎一と咲が辛気臭そうな理由を説明する必要はないだろう。



かくして赤目祭がスタートした。



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