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8-6

明日香は、さすがに今回ばかりは守を褒めてやる気でいた。



守は咲と一緒に行動しているのが慎一、勇気、木葉の3人であること、そのうち慎一と勇気が小樽での昼食に、1軒のラーメン屋に狙いを定めていること、そのラーメン屋から帰る途中の横道が急な坂道であることまで調べ上げ、「4人がその前を通るタイミングで大量の球を転がし、それで咲を道路に押し流して車にはねさせる」という作戦を提案してきたのだ。


さすがの明日香も感心し、早速実行に移した。



そして不機嫌だった実もクスクス笑っているのは、現実的じゃない作戦を納得の上で実行に移している明日香が滑稽だったのと、2人とも「他3人も一緒に押し流される」という状況にまるで気づいていなかったからである。






そして今、明日香は段ボールで買ったみかんを抱えて坂の上に、実と一緒に立っていた。



守は下でタイミングを見計らい、電話で合図する役だ。




実「お前らバカだな。」


実はバカにした笑いを浮かべながらバカにする。


しかし、この作戦に絶大な信頼を持っている明日香は軽くあしらう余裕を見せた。


明「何言ってんの? 何もしないアンタなんかより守の方がよっぽど有能よ。黙って見てなさい。」




と、明日香の携帯がポケットの中で振動した。



それが合図だ。







明「それ!」







明日香は躊躇なくみかんをぶちまけた。














――――――――――――――――――












実「随分あっさり行ったな。」


明「私だってやるときゃやるのよ。」



明日香に躊躇がなかったのは、「人を殺す」ビジョンが目の前になかったからだった。




2人が喋っている間にも、みかんは勢いを増して坂を転がっていく。


明日香たちが物陰に隠れて見ていると、予想以上に早く4人が現れた。






明「…あれ?」



















4人はみかんに気付くと、慌ててみかんの軌道上から退避してしまった。



















明日香は頭をハンマーでぶっ叩かれたような落胆を覚えた。



しかし、そのまま見続けていると、ようやく道路に転がり出たみかんたちは、そこを通過する車をパニックに陥れ始めたのだ。


明日香もパニックである。




実は大爆笑していた。



しかしそれも明日香には聞こえていなかった。



公共に支障をきたしたことをやっと理解して、明日香の脳裏をみたび何かがよぎった。







明『ヤバい…。これは本格的にヤバい! バレたら怒られるのはもちろん、警察沙汰になって、ニュースで報道されて、うちの高校の名誉を害した悪党としてこれから生きていくことに…。修学旅行も"私のせいで"来年から違う場所でやったり……最悪中止になったり…?』



















明「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」



















明日香は発狂して実の襟首をつかみ、無我夢中でその場を後にした。







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