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結局修学旅行前に咲にケガをさせるという目論見は失敗に終わり、明日香たち3人は修学旅行中に咲を仕留める方針を打ち出した。
明「とりあえず、飛行機やバスでの移動中は無理ね。見学とかで一緒になった時か、ホテル内に狙いを定めるわよ。」
朝の空港で、先生のように実と守に指示を出す明日香。
もとから面白がるだけが目的の実はあくびが止まらない。
明「ちょっと、ちゃんと聞いてんの!?」
実「聞いてるよ。」
あくまでやる気なさそうな実にイライラしつつ、先生の号令があったので明日香はプイッと踵を返し、さっさとクラスの場所へ歩いていった。
守「あ、ま、待ってよ!」
慌てて追いかける守を、実はダルそうにその後を追う。
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昼食のときも、アイヌ民俗博物館での時間も、明日香たちは咲を始末する機会に恵まれなかった。
昼食は、単に場所が広く、人も多かったからだが、アイヌ民俗博物館では、1クラスずつ講演→自由見学→移動をローテーションするプログラムだったため、明日香たちが自由見学の時間になった時、咲たちは移動した後だったのである。
その日のチャンスは、無珠山散策の時に訪れた。
全クラスが列をなして歩いていく形であるため、4組は3組の後ろを歩くことになったのだ。
いつでも咲の背後を取れる絶好のチャンスだった。
3人ともなるべく不自然にならないよう、前へ前へと進み、距離を縮める。
何とも幸運なことに、咲たちは最後尾にいた。
しかも、見たところかなり足取りがフラフラで、弱っているらしい。
実「この距離ならすぐ殺せるな。ほら、行けよ。」
明「わ、分かってるわよ! いくら殺りやすいったってバレちゃダメなんだから、慎重に行くの!」
守「じゃあ…とりあえず少しずつダメージを蓄積させるために、石を南さ…南 咲の足にぶつけてみたら?」
明日香は何も言わず、少し考えた後に足元の小石を1つ拾って、咲のふくらはぎめがけてひょいと投げた。
命中し、咲が振り返ってきたので、とっさに3人は目を逸らす。
咲が前を向き直ったのを確認し、実はヒソヒソ声で文句を言った。
実「そんな小っせぇのじゃ意味ねぇよ。」
明「だから、あんまりデカいとバレるでしょ!?」
明日香はすぐに2個目を投げた。
咲はもう振り返ることをしない。
明日香はそれでムキになって、その後もしつこく小石を投げ続けたが、50個ほど投げたところでようやくその意味の無さを悟った。




