7-4-2
明日香が怪しむより前に、1人が口を開いた。
?「何だよいきなり大声出して…。怖ぇよ。」
明「あ…あんたら、だ…誰よ……!?」
?「は? 今更「誰?」じゃねえだろ。1年の時からクラス一緒だったのによ。」
喋り続ける片方の男子の顔をよく見ると、確かに見覚えがある。
黙り続けるもう片方も同様だった。
しかし、1年の時から慎一だけを見てきた明日香は、慎一以外の男子の名前をほとんど覚えていない。
明「ああ…、名前なんだっけ…?」
実「俺は三島 実。」
守「僕は八島 守です…。」
ずっと黙っていた守は、何故か少したどたどしかった。
明「何の用? 私忙しいんだけど。」
実「噂の転校生を撲殺するのにか?」
実は意地悪に笑いながら言うが、それで全部見られていたことを知った明日香は、恥ずかしさ(焦りではない)で真っ赤になって言葉を失った。
明「ぅ…うっさいな! 関係ないでしょ!!!」
どうにかそれだけひねり出すと、パッと振り返ってさっさと歩き出した。
実「あ、おい、待てよ。」
明「何よ!?」
怒鳴りながら振り返るが、それでおじけづくのは守の方だけだ。
実「こいつがお前に話したいことがあるんだと。」
と、守を指差す。
守は恥ずかしそうに明日香を見た。
しかし、明日香はじれったくて更にイライラを募らせる。
明「何? 言いたいことあんなら早く言いなさい。」
守「あ、…あの…実は……」
明「実は?」
いちいち急かすような明日香の言い方が、かえって守の背中を押した。
守「ぼ…僕! 明日香さんのことが好きなんだ!!」
守は思い切り目を閉じ、恥ずかしいのを押し殺して想いを明日香にぶつけた。
しかし、しばらく待っても何の返事もないので、守は恐る恐る目を開ける。
さっきと何も変わらぬ姿勢で、表情の不機嫌さだけが増した明日香がそこにいた。




