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6-5

バスが停まっている駐車場の近くにある土産物屋の前を通った時、木葉が口を開いた。


木「あ、私アイス食べたいな。他に食べたい人いる?」


見ると、確かに店先でソフトクリームを売っているらしい。



勇「俺は良いや。」


慎「俺も別に…。咲は?」


咲「私、アイスって聞いたことはあるし、見たこともあるんですけど、何か外見が怪しくて食べたことなかったんです…。美味しいんですか?」


木「美味しいよ。一緒に食べようよ!」


咲「じゃあいただきます。」



"女性にとってのデザートとは、山に登った者たちが叫ぶ「ヤッホー」のようなものである"とは、古代ローマの女流詩人、サッフォーの言葉だっただろうか。


咲も女の嗅覚でそれをスウィーツであると嗅ぎ取ったらしく、木葉と一緒にミルクアイスを買った。



木「ん~~、美味し~♪」


咲『何か器が冷たい…。なめて食べるの?』


コーンを器と勘違いしながら、木葉にならって恐る恐る舌を近づける。



そしてちょっと触れた瞬間、すぐに舌を引っ込めた。


咲「!? 冷たっ!」


木「でしょ? 美味しい?」


木葉が嬉しそうに聞いてきたが、咲は冷たさに驚きすぎて味が分からなかったので、慌ててもう一口、今度は少し多めに食べた。




咲「…ん、美味しいです。すごい何か、牛乳の味がして。」


木「さすが北海道だよね。」


咲『あ、北海道は牛乳も美味しいんだ…。海のものだけじゃなくて。』



また1つ勉強になった咲をよそに、慎一と勇気はその土産物屋の奥へ入っていった。











―――――――――――――――――――










もう買うつもりのないお土産を適当に見て回りながら、2人は話をした。



慎「何だかんだあったけど、やっぱ楽しかったな。」


勇「ああ。咲ちゃんはちょっと乗り物に弱かったみたいだけど、結局楽しめたみたいだし。」


慎「うん。」


勇「会員は警戒しなくていいのかよ?」


慎「…なんか、さっきのみかんといい、微妙なことしかしてこねぇじゃん? 実は大したヤツじゃないんじゃないかって、ちょっと気ぃ抜けちまった。」


勇「まぁな。一応木葉もいるし、大丈夫か。」


2人の会話が途切れかけた時、外から咲の声が聞こえてきた。





咲「え!? これ食べれるんですか!!? へ~~、すご~い!! エコですね~!!」





2人は思わず噴き出した。



慎「コーンだな。」


勇「コーンだ。」


慎「初めて食べるっつってたしな。」


勇「笑える。」


慎「あんまり笑ってやるなよ。」


勇「お前もな。」


慎「はは。」




慎一の苦笑が止まるとすぐ、勇気が会話を継いだ。


勇「…慎一、彼女できて良かったな。」


慎「な、何だよ急に。」


勇「何か分かんねぇけど、無性に嬉しくてさ。」



2人は一度も目を合わせなかったが、互いに笑っているのは分かった。



慎一も、もはや咲が純粋な人間でないことなど全く気にしていなかった。




慎「……俺らもアイス食わね?」


勇「そだな。」




2人はゆっくりと咲たちのところに向かった。




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