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エキサイティングなラフティング体験が終了し、上陸直前からサイキックな幻覚が見え始めた咲は、その後着替えに向かうバスの中、ひたすら目をつぶって耐えていた。
窓から射す日差しの熱さとバス車内特有のにおいが、咲の酔いに拍車をかける。
隣に座っている慎一は、もうビニール袋を握りしめる手に汗がにじんでいた。
しかし元々ラフティングで濡れていたので、見た目には分からない。
着替え場所に到着し、着替えも完了すると、一行は昼食に向かった。
移動がいちいちバスであるので、咲は休まる暇がない。
慎『咲、可哀想に…。でも、会員の襲撃がなかっただけマシかもな。次のトコもクラスごとに場所が違うはずだから安心だ。』
慎一は、ともかくクラス内には会員がいないことを確信し、一旦安堵のため息をついた。
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昼食のメニューはカレーだった。
場内に点々と配置された丸テーブルの1つに4人並んで腰掛け、しばらくすると湯気を立てたカレーが、食欲をそそる香りと共に運ばれてきた。
慎「おぉ、カレーだ! 美味そうだな、咲!」
元気づけるためのテンション高めの呼びかけが、隣の空席をスルーして飛んでいく。
慎「あれ、咲?」
パッと後ろを振り返ると、咲が保健の先生に連れられて何処かへ行ってしまった。
木「咲ちゃん、また具合悪くなっちゃったの?」
勇「せっかくの修学旅行なのに、なんか残念だな。」
慎一は黙って、連れられていく咲の背中を見ていた。
担「カレー食べ放題だからな、いっぱい食えよ~!」
慎・勇「マジで!!??」
ひどいとはいえ、所詮酔っているだけの咲への心配は、思春期男子の食欲の前にひざまずくしかなかった。
俄然張りきった慎一と勇気はあっという間に1杯目を食べ終わり、おかわりの列に駆け付けた。
木「2人とも…。」
木葉は少し呆れながら、皿をもってゆっくりと席を立った。




