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バス車内。
一行はホテルに向かっていた。
咲は、とうとう寝ることで酔わないようにする技を身につけ、寝ていた。
バスに揺られてはいるが、その寝顔は平穏そのものだ。
慎一もやっと安心して、しかし少し寂しく感じながら咲を見ていた。
窓側の席に座っているため、引き続き夕陽が咲の寝顔を神々しく照らしている。
慎『まぁ、咲が酔って気分悪くなってるよりはいいか。』
西洋画を思わせる美しさに魅了されつつ、自分も寝ようかと慎一が鼻から大きく息を吸い込んだ時、バスが少し急なカーブを曲がった。
遠心力で窓側に体が引っ張られて、全員が踏ん張った時、咲だけは無防備に寝ていた。
そして、そのまま頭を窓に強かに打ち付けた。
ゴンという鈍い音が響いたが、慎一にしか聞こえなかったらしく、他の人たちはそれぞれの話を続けている。
咲は咲で、全くリアクションを起こすことなくすやすや眠り続けていた。
慎『…大丈夫なのか?』
慎一はしばらく様子をうかがったが、咲に異変は見られなかったので、気にせず寝ることにした。
その後、揺れるたびに咲は窓に頭をぶつけ、やはり目覚めないのであった。
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ホテルに着いた。
主要な旅行カバンは大きいので、既にホテルに送られている。
そのため、バスを降りた生徒はすぐにホテルに入っていった。
慎「咲、起きろ、着いたぞ。」
咲「う~~~ん、あと5分…」
慎「あと5分もしたらバス引き揚げちまうよ。ほら。」
慎一が咲を揺すると、ようやく咲はゆっくりと目を開けた。
咲「…ん? あれ、ここは…」
慎「ホテルだよ。早くバス降りるぞ。」
咲「あ、そっか…。…なんか頭痛い…。」
慎『やっぱりか…。』
2人は遅めにバスを降りた。
降りたところですぐ勇気と木葉に合流した。
勇「遅ぇよ、早く行こうぜ!」
慎「ワリィワリィ。」
咲「お待たせしました。」
木「咲ちゃん、酔いの方はどう?」
咲「寝てたので酔いはしなかったんですけど、何か頭が痛いです。」
勇「大丈夫か?」
咲「はい、一応。」
咲は何度も頭をさすりながら、3人についてホテルへ入っていった。




