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4-6-2

慎一は反射的に目をつぶっていた。



パンッと小さい発射音が響く。





慎一はその瞬間、胸に微妙な痛みを覚えた。





慎『ああ…、マジで死ぬ時ってあんまり痛くねえんだな…。』



何故か途切れない意識に、慎一が恐る恐る目を開けると、目の前で翔が慌てふためいている。



慎『ん…?』







翔「間違えた、これエアガンじゃん。」


咲・慎『!?』



慎一が自分の胸に手を当てると、確かに痛みはないし、血で濡れたような感触もない。




さっきの微妙な痛みは、服越しに当たったBB弾だった。




翔「クソ…、覚えてろよ!」


翔は慌ててというよりは、むしろとんでもない失敗をしたという恥辱に苛まれながら去っていった。



慎『……助かった…のか?』


咲「慎一くん、大丈夫ですか…?」


慎「うん、平気。エアガンで撃たれただけだし。」



2人の間に性質の分からない沈黙が数秒流れたあと、慎一が口を開いた。




慎「………じゃ、行こっか。」


咲「…はい。」


2人は小首を傾げながらその場を後にした。






―――――――――――――――






その後、無事元の場所に帰り着いた咲と慎一は、コロネ近くの公園のベンチで寝ていた勇気と木葉を見つけ、起こした。



勇・木「う~…ん。」


慎「勇気、蓮樹さん、大丈夫か?」


勇「あ? ああ…。俺ら何でこんなトコで寝てんだ?」


木「分かんない…。」


慎『記憶が飛んでる? まさか、あの女が自分のことを忘れさせるために何かしたのか? ならむしろ好都合……』


咲「こうこうこういうことがあったんですよ。」



咲は慎一が止める間もない早口で事のいきさつを語った。



勇「あ、そうだ! 変なヤツが南さんを狙って現れて…!」


木「私も思い出したわ! 私たちが足止めしようとしたけど、あっという間に変な薬で気絶させられちゃったんだった!」


2人はトントン拍子で全てを思い出した。


慎「オイ~~~~~~~~~~~~!!! 何で思い出させちゃうんだよ! 咲の正体も明かさなきゃならなくなるんだぞ!」


咲「あ………。」



慎一の怒号ももう手遅れだった。


勇「南さんの正体? さっきの変なヤツといい、何か隠してるだろ?」


木「話してよ。私たちも当事者なんだから。」



2人に詰め寄られ、多少覚悟していたとはいえ、慎一は諦めて全てを打ち明けることにした。






―――――――――――――――






慎「―――ということなんだ。」


2人は、咲が最初に打ち明けた時の慎一のようなポカン顔になった。


勇「は? つまり、…南さんは人間じゃねえの?」


木「人を食べる部族? それを殲滅するための財団法人? さっきのヤツもその会員だった??」



なかなか整理に困っているが、慎一も咲も全てを話した。



どんな風に軽蔑されるのかを想像しただけで、咲は泣きそうになった。


せっかく友達になれたのに、自分の正体が知れたことで距離を置かれるかもしれない恐怖。


慎一も半ば同じような気持ちで2人の結論を待った。





木「……つまり、南さんやその家族の命を狙うヤツらがいるってことなのね。」


慎「ああ、そうなるな…。」



2人の慎一たちに対する視線が冷たい。



慎「で、でも聞いてくれ! 咲は決して悪いヤツじゃ…」


勇「何で隠してたんだよ。」











咲・慎「…え?」












木「そうよ! 私たち友達でしょ? まぁ、いきなりそんな風に言われても信じれなかったかもしれないけど、でも言ってくれればよかったじゃない!」




本気で怒っていた。




咲「こ…、怖くないんですか?」


勇「そりゃあ人を食べるってのは怖い習性かもしれんけど、それでも人間と仲良くしたいって言ってるのを皆殺そうとする協会連中の方がよっぽど怖えーわ。」




慎一も咲も、この2人の適応力に驚かされるばかりだった。



ただ変なヤツが襲ってきたというだけでここまで信じられるものなのか。




勇「水臭ぇよなあ。友達なのに、信用されてねぇみてえじゃん。」


慎「あ、いや、そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、やっぱ命の危険もあるし……」


勇「それが水臭ぇっつってんの。そんな危険なこと、お前1人で抱え込むんじゃねえよ。」



慎一は何も言えなかった。




確かに、信用できていなかったのかもしれない。



それが分かると、あとは申し訳なさしか感じなかった。



木「相談してほしかったな。友達として。」


慎「……ワリィ。」


咲「ごめんなさい…。」



不意に勇気がパンと手をたたいた。


咲と慎一が驚いてうつむき加減だった顔を上げると、もう勇気も木葉も笑っていた。



勇「さて、こうなったからには、ますますこれからも皆で遊ぶしかねぇな!」


咲・慎「え?」


木「そうね。いざって時は大勢いた方が心強いし。皆で咲ちゃんを悪いヤツから守ろう!」


咲「ゆ…勇気さん…、木葉さん…。」



咲は、軽蔑されて流す予定だった涙をここで溢れさせた。


あまりにいきなりだったので、木葉は慌てた。


木「な、泣いちゃダメだよ、咲ちゃん。」



勇「友達なんだから、助け合うのは当然だろ。」


勇気は慎一の目を見て言った。



慎「……ありがとな。」



慎一も少し涙腺が緩くなっていた。




第4話 完


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