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ヤツが来るのを待つ間、咲の頭の中は色んな事が巡っていた。
咲『あの人本当にくるのかな…? ここに隠れてたら見つかんないかもしれない。……でも来た時のために、油断してたらダメだよね! えっと、相手を怒らせない程度に抵抗するような事? う~~~~~~~~~~~ん………難しいなぁ…。』
?「やっと見つけた。」
咲「ちょっと、早いよ。まだ何にも考えてな……え!?」
いつの間にか目をつぶって思案に暮れていた咲の耳に、例の女の声が聞こえた。
目の前には、ライフルを持った先ほどの人物が立っている。
その顔は、カラオケで咲が道を聞いた従業員であった。
咲「え? カラオケにいた人…!?」
?「ああ。表示があるのにトイレの場所を聞くなんて変だなと思い、調べてみたら抹殺命令が下ってる鬼灯族の1人だったってワケさ。」
咲『この人の声…聞けば聞くほど女性なんだけど、顔はいかにも青年…。結局どっちなんだろ? …でも、聞いたら怒られそう。怒らせちゃいけないし、まぁ今はどっちでもいっか。』
女? 男? は、咲が黙って神妙な顔を崩さないので、しびれを切らしてまた口を開いた。
?「観念したようだね。じゃ、大人しいままで死んでもらおうか。」
咲「!! …い、イヤです!」
咲の目には、既に女? 男? の背後に迫る慎一が見えている。
咲『もう少し…!』
?「大丈夫、一瞬で終わる…」
ヤツが銃を構えるのと同時に、慎一が鉄パイプを振り上げた。
そこで、勝ちを確信した咲は、つい慎一を見てしまった。
?「!」
そいつは咲の瞳の不自然な動きを見逃さなかった。
パッと振り返り、振り下ろされる鉄パイプをライフルで受け止め、慎一のがら空きの腹に蹴りを入れた。
慎「がッ……!」
咲「慎一くん!!」
たまらず慎一は腹を押さえてうずくまった。
?「ふぅ、ヒヤッとしたよ…。やるねェ、奇襲とは。」
慎「ぐっ……。」
慎一の中の正義感が、鉄パイプを握る力になっていた。
慎「…んのヤロ―――――――――――――!!!」
下から鉄パイプでアッパーのようにそいつの腹めがけて突きを繰り出す。
しかし、そいつはそれを受け流し、慎一を咲のいる方へ投げ飛ばした。
慎「ぐあっ!」
着地の際全く受け身を取れず、思わず声が出た。
咲がしゃがんで慎一を介抱する。
咲「慎一くん! 大丈夫ですか!?」
慎「うぐっ…クソ……。」
?「………おい。」
不意に女? 男? が、どすの利いた声になった。
咲・慎『…な、何だ……?』
殺気が、先ほどまでの比ではない。
慎『て、抵抗しすぎて怒らせたか? マズいぞ…この距離じゃ、一度構えられたら撃たれる前に止めるのは……』
?「誰が"野郎"だ!!!!!!!」
咲・慎「…………は?」
?「"この野郎"だと? 私の名前は麻池 翔!!! 正真正銘の女だッ!!!!!!!!!」
本気の表情だった。
慎『…いや、名前聞いても微妙だ。ていうか別に男だという確証があったから言った"この野郎"ではないし…。コンプレックスなのか?』
咲『……あ、じゃあスカートはいてたのも別に………。』
その場に、咲の納得、慎一の疑惑、翔の憤怒が交錯していた。




