4-5
4-5
慎「咲! おい、待てって!!」
慎一は、ろくに運動していないせいでヒョロヒョロの足を何とか動かし、ようやく咲に追いついた。
慎「ハァ、ハァ…、咲速ぇよ……。」
咲「す、すいません…。でも状況が状況だったんで…。」
慎「それはそうか…。ところでここ何処だ?」
咲「え?」
2人は逃げるのに夢中で、全然見覚えのない場所に来てしまっていた。
咲「どうしよう…、これじゃ帰れない…。」
慎「……とにかく隠れよう。まずはアイツをまかないと話になんねぇし。」
言いながら見回すと、近くに建設現場のようなものがある。
形成された骨組みに「横山建設(株)」と書かれたパネルが壁のように貼られていて中が見えない。
入口らしきところには「関係者以外立入禁止」と書かれているが、音がしないので、工事は今やっていないはず。
そう判断し、慎一は咲の手を引っ張ってその中へ入っていった。
―――――――――――
慎一は中に入るや、落ちていた手頃な鉄パイプを手に取った。
慎「咲。今からヤツが来た時に撃退するための作戦を伝える。」
咲「は、はい!」
咲は条件反射的にビシッと気を付けをした。
慎「咲は一番目につくそこに立ってろ。」
そう言って、慎一は入口の反対側の壁を指差した。
咲「え? すぐに見つかるじゃ…」
慎「大丈夫だ。ヤツの狙いはお前1人。俺らのことは別にどうでもいいんだ。だからお前が1人でいれば、必ず油断して隙が生まれる。そこを、陰に隠れていた俺がコイツでぶっ叩く。」
咲「な、なるほど…。」
慎「ただし、ヤツは銃を持ってた。だからお前は、なるべく怒らせない程度に抵抗するような事を言って、時間を稼いでくれ。…まぁ、こんな街中でそう簡単には撃たねぇだろうが、近づいてる間にバレないよう、お前に注意を引きつけておく必要がある。」
咲「分かりました!」
咲は慎一に頼もしさを感じながら、条件反射的にビシッと敬礼をした。
慎一は「ん?」と思ったが、時間もないのでそれには触れず、入り口横のドラム缶の後ろに身を潜めた。
そしてしばらくの間、喋らずに敵を待つという地獄の時が流れた。




