4-4-2
午後6時。
カラオケも終わり、4人はコロネを出た。
勇「歌った歌ったぁ~! すっきりしたぜ!」
木「やっぱり6時間は長いかなぁ。喉痛くなっちゃった。」
慎「俺はちょうどいいくらいだけどな。」
咲「…私も、にん…流行りの曲覚えて、歌えるようになりたいです。だからまた皆で来ましょうね!」
夕日の中、咲が晴れやかな笑顔でした提案は、他3人の顔も晴れやかなものにした。
慎「そうだな、また来ようぜ。」
勇「当たりめェだろ!」
木「咲ちゃん、月曜日に持ってるCD何枚か貸してあげるよ。」
咲「? しーでぃー?」
木「あ…じゃあポータブルのCDプレイヤーも貸してあげる。どういう物なのかはその時説明するね。」
咲「あ、ありがとうございます。」
とりあえず何か人間の音楽の勉強に役立つものを貸してもらえるらしいのは分かり、月曜日が待ち遠しくなった。
そして、また一歩人間に歩み寄れたのが嬉しくもあって、笑顔が収まらなかった。
それを見る慎一も同じだ。
慎『咲、嬉しそうだな。頬付き族との和解もそう遠い未来のことじゃないのかもな。』
未だに正しい漢字を当てられないまま楽観していた。
慎「じゃあ帰るか。」
勇「そだな。」
4人が帰路に就きかけた時だった。
?「ちょっと待ったァ―――!!!」
慎『……この、いかにも浮いた感じのテンションは、まさか…!』
4人が驚いて振り返ると、何故か自衛隊員のような格好で、大きなライフルを持った人が立っていた。
咲はすぐに危険を察知して慎一の後ろに回り込んだ。
慎『やっぱり、殲滅教会の会員だ! ヤバイ、勇気と木葉は何にも知らないのに…!』
勇「な、何だお前…!?」
早速知られたくないヤツが知ろうとし始める。
しかし、それを止めるのも不自然でできない。
勇気と木葉からすれば、慎一と咲もソイツの素性を知らなくて当然なのである。
?「南 咲以外に用はない。さっさと引き渡してもらおうか。」
逆光で顔が影になっていて見えないが、声からして女であるようだ。
そのせいか、木葉も果敢に挑んだ。
木「な、何言ってるの? 咲ちゃんは友達よ! アンタみたいな危ないヤツに……」
?「それが、危ないのは私じゃなくてむしろ南 咲の方なんだよな~。」
勇「何?」
慎『ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!!』
慎一が焦りまくっていると、いきなり咲が走り出した。
慎「あ、おい!」
勇「慎一、南さんを追え! 何だか分からんが、とにかく今一番危険なのは南さんっぽいからな!」
慎「え…」
木「この人は私たちで足止めするから、早く警察を呼んで!」
?「ガキ2人で私を足止め? ふん、やれるモンならやってみなよ。」
思いの外相手には余裕があるらしい。
慎「…分かった。くれぐれも気を付けろよ!」
勇「ああ。」
慎一は、2人の目を見張る適応力に一応感謝しながら、ひとまず咲を追った。
しかし、もう勇気と木葉に咲のことを隠し通すのはあきらめていた。




