4-2-2
その後、シューズの貸し出しの際もサイズがどうのとかで手間取ったが、無事ゲームがスタートした。
勇「よっしゃ、まずは俺からだ!」
勇気が意気込んで15ポンドのボールを構える。
咲「な、何が始まるんですか?」
慎「まぁ見た方が早いな。」
咲の目の前で、勇気は華麗なフォームで投球した。
球は真っ直ぐにピンの中心を突き抜け、無難にストライク。
と同時に頭上のモニターがお祭り騒ぎに。
咲「!?!?」
勇「うしッ!」
戸惑う咲に構わず、ガッツポーズを携えた勇気が帰ってきた。
木葉は小さく拍手して勇気を迎えた。
木「さすが勇気。」
勇「チョロいチョロい。」
咲『何がチョロいの…?』
咲の頭上で増殖するハテナに慎一が気付いた。
慎「まぁつまり、あのボールを転がして、あそこに並んでる10本のピンをなるべく多く倒せばいいんだ。チャンスは2回だが、今の勇気みたく、1回目で全部倒したらストライクといって、2回目はない。」
咲「へぇ~~、面白そうですね!」
咲はつい体が動くほどウキウキし出した。
慎「じゃあ次は俺だから。」
そう言って席を立ち、軽々とスペアをたたき出した。
咲「うわあ、慎一くんすご~い!!」
咲のオーバーすぎて恥ずかしくなる歓声が、慎一のモチベーションを一気に引き上げたのは言うまでもない。
ドヤ顔を制御できぬまま席に戻る。
勇「なかなかやるな。」
慎「基本的に大得意なスポーツはないが、ボウリングは俺もちょっとイケるクチでね。」
木「2人ともすごいなぁ。あ、次私だ。」
木葉は女の子らしい優しい投げ方で、7本のピンを倒した。
勇「おっけおっけ!」
慎「結構倒したね。」
木「今日ちょっと調子良いかも♪」
3人のノリに全くついていけていない咲の番が来た。
慎「咲、頑張れ!」
咲「は、はい!」
木「しっかり!」
勇「焦んなくていいぞ!」
ほとんど何かの部活かのような応援の中、咲は5ポンドの球を、見よう見まねで投げた。
球は真っ直ぐに左のガターラインへと吸い込まれていく。
咲「あれ?」
一瞬何が起きたか分からなかった。
そしてようやく"失敗確定ゾーン"の存在を悟り、それで変に意識して入った無駄な力が、2球目を右のガターラインへといざなった。
3人は1球目から既にフォローの言葉をあれこれ投げかけていたが、咲が涙目で帰って来た時には無理な慰めをやめ、"何事も経験"とうそぶいた。
咲『経験かぁ…。』
咲は、これから2ゲーム分も残っている"経験"を目の前にして、さっきまでの高揚した心をへし折られたのを感じた。




