4-1
テストが終わった。
テストが返されれば、教室が阿鼻叫喚となるのは皆さんご存じのとおりである。
勇「くぁあ~~~~~~~~~~、ヤッベ~~~~~~~~~~~~~~!」
勇気は奇声を発しながら、答案を慎一の机に叩き付けた。
慎「……いつも通りだな。」
それぞれ赤点ギリギリか、良くて50点台の、お世辞にも良いとは言えない点数が赤で記されている。
勇「いや、でも全教科単元の最初の方だぜ? 今のうちからこんなんじゃヤベェよ。」
慎「そういう分析はできるんだ…。」
勇「そういうお前は?」
慎「まぁいつも通りだよ。」
慎一のテストは40点台から80点台まで、幅広いラインナップだった。
とはいえ、ほとんど自力で勉強したので疲労と解放感はいつもの比ではない。
勉強会で勉強できなかったせいで、ゴールデンウィークも結局返上したのである。
しかし、むしろ心配していたのは自分の成績ではなく、咲の成績だった。
咲に……もとい、先にテストを返された木葉がやって来た。
勇「先生、どうでしたか?」
木「何それ。私はちょっと調子悪かったかも。」
照れ笑いをしながら答案を広げる。
勇「どれどれ…。」
慎「満点が3つに、95点以上が5つに、90点以上が1つか…。」
勇「調子悪くてコレかよ…。」
木「だって今回の数Ⅰ+Aの時、私ちょっと風邪気味で本気出せなくて……。後で改めてやってみたけど、絶対今回のは満点いけたなぁ。」
その数Ⅰ+Aは98点である。
間違えているのは記述問題の必要事項書き損じによる減点。
勇「確かに。」
慎「得意なハズの世界史さえも負けた…。さすがだなァ。」
と、そこへようやく咲が帰ってきた。
ひどくしょぼくれた顔をしているのは予想の範囲内である。
慎『来たな、赤点最有力候補…!』「ど…どうだった?」
咲「うぅ………。」
一層辛気臭い顔をしながら答案を広げた。
慎一だけ妙に緊張しながら点数を確認する。
慎「……おぉ、おぉ…おぉ!」
結果は予想以上だった。
どれもこれも赤点は回避している。
方程式を知らず、アルファベットを知らず、漢字も全然知らなかった咲が。
勇「おー、赤点は免れたじゃん。」
木「おめでとう、咲ちゃん!」
咲「え…? コレで良かったんですか?」
慎「全然オッケーだって! 赤点って言って、30点より低い点取らなきゃ合格みたいなモンなんだから!」
咲「へえ~~~~~~。」
この点数がホントはマズいということは分かっているらしいが、思いがけず褒めちぎられたので少しずつ表情が明るくなってきた。
慎『…ん? 教科によっては勇気と大して変わんねぇな。……勇気、咲と互角じゃマズいだろ…。』
こうして4人は無事(?)Ⅰ期考査を乗り切った。




