表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/144

3-4-2

慎『な…何だ…? 何だこの2人の目は!?』



勇気と木葉は、まるで観察するように慎一を睨む。




慎『何か変だよこの2人…。何をそんなに…あ、まさか、俺にここでフォローさせて咲との仲を近づけようとしてる…のか?』



とてもそんな友好的な眼差しには思えなかったが、それ以外に答えが見当たらなかった。


慎『…やってやる! その割には目線が鋭利だけど、やってやる!!』



慎一は腹をくくった。




慎「咲!」


咲「はい!?」


2人してひっくり返る寸前のトーンだった。


慎「さっきの歌思い出せ! A、B、C、D、E、F、G、H、I、フン、K、L、M、N、はい!」


少々高すぎる慎一のテンションに戸惑いながら、咲は復唱した。


咲「え、A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K…あ。」



咲の脳内に、アハ体験的な電流がほとばしった。



咲「ジェー! ジェーです、これ!」


慎「そう、ジェーだよ、よくやった!」



咲は嬉しそうに、慎一はどや顔で、それぞれ勇気と木葉の反応をうかがった。








2人は見つめ合い、何か気に食わない表情のまま首をかしげていた。









咲『あれ、違った? でも慎一くんはそうだって…。』


慎『あれ、ダメ? 最大限のフォローしたんだけど、まだ足りないのか? 分からん…。恋愛のベテランの物申すところが分からん! ハードル高ぇな~!!!』



慎一が1人で悶えている横で、咲は仕方なくその先のアルファベットをまた覚え始めていた。






――――――――






午後3時。



この気まずい空気が慎一を痛め続け、そろそろ限界だった。






咲は何とか全てのアルファベットを覚え切り、今度は木葉に主要な英単語の読み方を教えてもらっていた。



「take」を「ティーエーケーイー」と読まないと知って愕然としながらも、まずは1つ1つ覚えていって感覚をつかんだ方が早いということで、律儀にまた頭につめこんでいく。



木「ほら、take、make、cakeとかは、形が似ていて、読み方も似てるでしょ?」


咲「あ、確かに…。テイク、メイク、ケイク、ですからね。」


木「英語は、世界でも有数の綴りと読み方がほとんど一致しない言語だから、こんな風に感覚をつかむ方が早いのよ。」


咲「なるほど…。そういえば、さっきからずっと気になってたんですけど、同じ文字でも形が違うときありますよね。」


木「あ、大文字と小文字ね。基本的に文章の最初にくる単語の1文字目は、分かりやすいように大文字で書くの。"I"はいつでも大文字だけどね。」


咲「はぁ………。」



さっきに比べれば表情が柔らかくなり、咲に教えるために口数も増えた木葉と会話することで、咲の緊張も少し和らいでいた。





しかし、その横で慎一は息も絶え絶えになっている。








ふと時計を見た木葉が、「あっ」と小さく声を上げた。




木「お菓子用意してたんだった! 今持ってくるね。」


そう言うと、木葉はそそくさと部屋を出て行った。




いつもなら陽気な勇気が何か言って茶化すのに、全くピクリとも動じずに、英単語を眺める咲を見ている。



咲はそれに気づいていないが、逆に見られていない慎一がごっつい圧迫感を感じていた。





慎『うぅ、くそ、吐き気が…。…とりあえず菓子だ! 菓子食って落ち着こう!』



慎一がため息で吐き気を排出しようとした時だ。



木「はぁい、今朝焼いたクッキーだよ♪」


慎一が望みを託したクッキーが、木葉のご機嫌な声と良い匂いと共に到着した。


慎「おお、美味そう。」


勇「さすが木葉。」


木「えへへ。」






一瞬場の空気が丸くなった。







慎「咲、お前も…」


パッと咲の方を向いた慎一は、せっかく丸くなった空気の中で背筋が凍った。









咲が、今朝トマトジュースを持ってこられた時と同等か、それ以上に恍惚とした表情になっていたのだ。









慎「さ、咲…!?」


咲「し…慎一く……」



息が荒く、いかにも苦しそうな表情は、普通に具合が悪いのかとも思われた。


ただし、よだれが垂れていたので結局食欲らしかった。



勉強勉強でストレスがたまりまくり、それが禁断症状を誘発させたらしい。





慎『マジかよ、いきなり過ぎんだろ!! ど、どうやってごまかせば…。』



クッキーで一服する間もなく、第3ラウンドが始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ