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慎一は咲の暴走を食い止めるため、咲に耳打ちをした。
慎「咲、それは血じゃない! トゥメイトウジュースだ! 飲んでみろ! 全然違うから!!」
咲は無言で頷き、一口飲んだ。
咲「……………。」
慎一が固唾を飲んで見守るのを、勇気と木葉は怪訝そうな目で見つめている。
と、咲の目はうっとりしたものから、パッと驚きのものに変わった。
咲「あれ? トマトの味がする。美味しい。」
慎「だろだろ!? あぁ~良かった…。」
勇「…いや、だから、トマトジュースだし。何言ってんだよ、さっきから。」
慎「え? いや、何でもない何でもない!」
慎一が懸命にその場をやり過ごしている横で、咲はトマトジュースを美味しそうに飲んでいた。
どうやら気に入ったらしい。
禁断症状一歩手前の状況も脱したようだ。
慎「よし、咲! 俺らもやるぞ!」
咲「はい。」
2人の質問攻めが来る前に勉強を始めれば、しばらくは時間を稼げるだろうという算段だ。
実際、勇気と木葉は何か変だという顔のまま、自分たちも勉強を始めた。
とりあえずは難を逃れたか……。
慎一の安心は、全く安易なものであると言わざるを得なかった。




